フィールドプロテクト
画像提供:フィールドプロテクト

埼玉県狭山市に本社を置くフィールドプロテクトは、創業46期目を迎える老舗企業です。当初はし尿処理や浄化槽の維持管理から事業をスタートしたが、時代の変化に合わせて一般廃棄物の収集やビルメンテナンスへと事業転換を図ってきました。同社は現在、環境サポート事業を主軸としながら、健康サポートや教育サポート事業にも展開、地域循環型社会の実現に向けた取り組みを進めています。そして今、独自開発のルート案内システム「ルートル」を軸に、業界のDX化に挑戦しています。

3代目が受け継ぐ、地域に根差した環境事業

フィールドプロテクトは、大澤氏の祖父が狭山の地で創業した企業です。当初はし尿処理と浄化槽の維持管理を主な事業としていましたが、下水道整備の進展に伴い、行政の支援を受けながら一般廃棄物の収集やビルメンテナンスへと事業転換を図ってきました。

「祖父は、パチンコ店経営など様々な事業に挑戦し、時には失敗も経験しながら、最終的にこの地で環境事業を始めました」と大澤氏は語ります。「当時は、各家庭から出る生活排水を収集し、それを農家に提供。農家はそれを肥料として活用し、栄養価の高い野菜を育てる。そうした地域の中での循環の仕組みを作っていました」

突然の事業承継と向き合った苦難の時期

大澤氏自身は、元々野球一筋の人生を歩んでいました。高校時代に甲子園出場を経験し、明治大学でも野球部に所属。その後、社会人野球の東芝府中でプレーした経歴を持っています。中学校の教員を目指していた時期もあったが、父親が経営するフィールドプロジェクトが事業転換期を迎えていたこと、そして大規模な施設管理業務を受注したことをきっかけに、家業に入ることを決意しました。

入社後は営業担当、専務を経て、2016年4月、有限会社から株式会社への移行と同時に代表取締役社長に就任。しかし、その直後に父が突然の心筋梗塞で他界。「父の存在があったから機能していた部分が多かった」と振り返ります。若手幹部の一斉退職なども経験し、経営の難しさに直面しました。苦しい時期を経験するも、海外でのさまざまな体験を通じてモノの見方や考え方が変わり、自社や自身を見つめ直す機会を得たといいます。

大澤氏は当初、地域にこだわる必要はないと考えていたが、事業展開を通じて地域密着の重要性を認識するようになりました。健康サポート事業では、通所型介護施設を3店舗展開していましたが、事業の効率化を図るために1店舗に集約。ビルメンテナンス事業からは撤退するなど、事業の選択と集中を進めてきました。

新規事業への挑戦も積極的に行ってきたが、祖父の挑戦の歴史を振り返る中で、同社が地域社会において循環型社会を構築する役割を担っていることに気づき、現在の事業の方向性を確立してきました。

デジタル化で解決する人材課題

フィールドプロテクト

そのような中で生まれたのが、一般廃棄物収集業務の効率化と品質向上を実現する「ルート案内システム」です。

開発のきっかけは、深刻化する人材問題でした。

「以前は採用しても3年、5年と継続して働いてくれる方が多かったのですが、近年は2ヶ月程度で辞めてしまうケースが増えています。2ヶ月かけて教育しても辞めてしまうと、そのコストは馬鹿になりません」と大澤氏は説明します。

この課題に対し、同社は「覚えなくてもできる」仕組みを目指してシステム開発を開始。インドのエンジニア学生と日本企業をマッチングさせる会社との出会いを機に、コロナ禍でインドのエンジニアと、約2-3年にわたりリモートワークで開発を進めました。

「普段使い慣れているGoogleマップを使って直感的に操作できるものを作りたい」という思いからスタートしましたが、開発過程では言語の壁や技術的なコミュニケーションの課題に直面。社内の英語対応可能な人材や外部のシステム会社を介して進めましたが、思い描いていた成果を得ることができませんでした。

「振り返ってみると、私自身がもっと開発に関わるべきでした」と大澤氏は反省を込めて語ります。「システム的な思考は誰でもできると思っていましたが、実際にはそうではないということに気づきました」

この経験を踏まえ、思想的な部分でも方向性を共有できるパートナーとして、メディアラボ社へと開発を移管。より実践的で使いやすいシステムの構築を目指すこととなりました。

業界全体のDX推進へ

フィールドプロテクト

現在、新たにリリースを控えるルート案内システム「ルートル」は、単なるルート案内ツール以上の価値を持っています。

– ミスや見落としの防止
– 現場での急な収集依頼への対応
– 写真撮影機能による管理者との円滑なコミュニケーション
– 収集時刻の記録による業務の透明性確保

その展開は自社利用に留まらず、「一般廃棄物の収集許可を持つ事業者や、行政との連携も視野に入れています」と大澤氏は語ります。

このシステムは現在、一般廃棄物収集に特化して開発されていますが、介護施設の送迎など、類似の課題を持つ他業界への展開も検討されています。「1日8便、週単位では相当数のルートがある介護送迎でも、同様の課題があります」と大澤氏は指摘します。

特に注目すべきは、行政との連携による可能性です。「行政にも管理画面を持ってもらうことで、収集時間の正確な把握や、市民からのクレーム対応の効率化が可能になります」と大澤氏は説明します。

将来的には、タクシーアプリのように市民向けにも開放し、収集車両の位置情報をリアルタイムで確認できるようにすることで、ごみ出し時間の最適化など、市民サービスの向上にも繋げていく構想があります。

このように、単なる業務効率化ツールを超えて、業界全体の在り方を変える可能性を秘めたこの取り組みは、今後の展開が注目されます。

この業界も確実にDX化の波が来ています。でも、現場で本当に使えるものでなければ意味がない。我々は現場を持つ企業だからこそ、業界特有の課題を理解し、実践的なソリューションを提供できると考えています。

フィールドプロテクトは、環境・健康・教育の3本柱で事業を展開しながら、テクノロジーを活用した新たな価値創造に挑戦を続けています。

ルートルの料金プランと活用方法

■料金プラン
– 5(アカウント)台まで:月額30,000円
– 追加1台あたり:月額3,000円
「ルートル」は、一般廃棄物収集業務において以下のような活用が考えられます。
– ルート最適化:収集ルートを効率的に計画し、移動時間や燃料コストの削減を図ります。
– リアルタイム追跡:収集車両の現在地を把握し、業務の進捗管理や緊急対応を容易にします。
– データ分析:収集データを蓄積・分析し、業務改善やサービス向上のための意思決定に役立てます。
これらの機能により、廃棄物収集業務の効率化とサービス品質の向上が期待できます。
詳細な情報や導入に関するご質問は、公式サイトの問い合わせフォームをご利用ください。
サービスサイト:https://fproutor.studio.site/

【会社概要】
– 社名:株式会社フィールドプロテクト
– 代表:大澤 希
– 事業内容:
・環境サポート:廃棄物処理のワンストップソリューション
・健康サポート:運動特化型の通所型介護サービス「ジョイリハ」
・教育サポート:シュタイナー教育「エデュフィールドそらいろこども園」
– Webサイト:https://fieldprotect.co.jp/