「飼い主さんが自分のペットを健康にできるようにしたい」という理念を掲げているSUNNYS合同会社(以下、SUNNYS)。ペットとは人の言葉を交わせない中、「なんでだろう」「何をしてあげられるんだろう」と悩みや疑問を抱えている飼い主は少なくないだろう。

そこで、飼い主が自らペットのより良い暮らしや健康を選択していくための治療を提供しているのがSUNNYSなのだ。

この事業の背景にある、代表の櫻井辰徳氏の幼少期の経験や思い、これまでの試行錯誤と望む世界への展望を伺った。

根本から病気を治す獣医師に。人間への興味から導かれた治療法

心を癒し、生活をより豊かなものにしてくれるペット。飼い主たちにとって、彼らは家族の一員やパートナーとして、とても大切な存在だろう。SUNNYSは、そんなペットと飼い主の健康と幸せを追求している会社だ。

同社は動物医療施設「サニーズアニマルクリニック」を運営しており、これまで累計5,000組以上のペットと飼い主に向き合ってきた。そして、独自のオンライン教育プラットフォーム「サニーズアニマルアカデミー」を開校し、全国から飼い主がペットの健康を自ら管理できるためのサポートも展開している。

サニーズアニマルクリニックは、一般的な動物病院とはそもそもが異なる。従来の症状対処型の治療ではなく、予防、治療、ファミリーカウンセリングを三位一体で提供し、人や動物の生活習慣を見直す専門の動物病院なのだ。

ファミリーカウンセリングにおいては、食事、睡眠、運動、コミュニケーション等のカウンセリングからコーチングやビジネスコンサルまで、飼い主が必要とすることや、そのきっかけを提供する。

例えば、ペットの健康不良には特定の食材や散歩時間、飼い主とその家族との不和などさまざまなものが関係する。それを認識しないまま治療を続けていても、症状は改善しても治ることはない。「対症療法的な治療によって一瞬は良くなったとしても、それは24時間365日あるうちの一瞬。ペットが暮らす環境やその飼い主自身が変わらないと意味がない」と櫻井氏は語る。

ペットの病気の治療や予防のため、飼い主の意識や生活から根本的な治療を行い、病気と“付き合う”のではなく、病気を“治す”のがサニーズアニマルクリニックの治療法である。

今でこそ獣医師としてペットと飼い主に向き合っている櫻井氏だが、もともと獣医学に興味があったわけではなく、人間に興味があったのだとか。幼少期の虐待によって孤独を抱えていた中、自然や動物との触れ合いによって救われてきたのだという。しかし、その自然や動物たちが生きる環境が人間たちの手によって失われていく様子を見て「人間は悪だ」と思い込むようになった。

「地球を救いたい」。そんな思いを持つようになり、そのために人間がどうあるべきなのか、どうしたら人間が成長するのか、本人以外の人間は何を提供できるのかとずっと考え続けてきたという。

そんな時に出会ったのが「地球のお医者さん」と打ち出していた獣医大学だった。そのままその大学へ進学し、動物医療を学ぶことに。その中で薬の副作用に苦しむペットたちを目の当たりにし、従来の薬に頼らない治療法を模索し始めた。

「その当時、従来のものとは異なる治療法の仮説が自分の中にあったんです。でも、勤務していた動物病院ではそれを形にすることができなかった。動物業界でできないなら、と他の業界でその治療法のヒントを探し始めました。赤ちゃんからおじいちゃんおばあちゃんまで全ての世代を知ろうと考え、教育、美容、飲食、介護などの業界に入り込みました。その経験を経て分かったのが、『人間は、人間との接し方を学んでいない』ということでした」(櫻井氏)

その気づきをもとに、治療法の理論を固めていった。その後、動物病院に就職。多くの飼い主にその理論を試してもらいながら改善を重ね、出来上がったのが現在の「根本治療」なのだ。

地球は豊かな学びとつながりをくれる“先生”

SUNNSは2021年に、自然の中で動物と人とが一緒に過ごせる空間「サニーズビレッジ」を茨城県で設立した。この場所を選んだのにも、幼少期の経験が関係している。幼い頃はいじめにあっていたために友達がおらず、自然の中で石や木と話していたのだという。その当時、櫻井氏にとっては自然が先生であり、大切なことを沢山学んできたと語る。

「石って、角が丸まっているものほど、他の石との接点は一個なんですよ。本来はこの石のように一つの接点でつながれるのに、多くの人はいろいろな接点を求めようとします。趣味が一緒、服装のセンスが合う、同じ食べ物が好き…。“点”ではなく“面”を求めているんですね。それに気づいた時、必要以上に求めなくていいんだと学びました。また、石には何一つとして同じものがない。そこからは、自分は自分でいいとも学びましたね。自然はこうして『世の中ってこういうもんだよ』と教えてくれる先生なんです」(櫻井氏)

そんな幼少期から今までずっと自然から学び続けている櫻井氏は、より多くの飼い主やペットに良い環境を提供するためには、人と集まってつながりを育んだり、自然と触れ合ったりできる場所が必要だと考えた。そこでサニーズビレッジの構想と場所選びが始まったのだ。そして、場所を決める際には「スタッフに地球を入れようと考えた」のだという。

「私にとってそうであったように、地球は先生であり、学びと体験を提供してくれる。地球はスタッフとして常に良い影響を与えてくれる、質の高いスタッフなのではないかと考えました。だから、より広大な土地を探し、たどり着いたのがここなんです」(櫻井氏)

命と向き合い、大切にできるように

ー事業を通じて、どのような社会を目指していますか?

人間という切り口で表現するなら「人間がもっとボーダレスに、命を命と見られる社会」です。例えば、ご飯を食べる時に「いただきます」と食べ物に感謝することや、目の前にある食べ物そのものや生産者などの背景を想像して、そこに命が宿っていることが見えるのが当たり前だと思っています。

でも、そう見えないから、ご飯をこぼしたり、残したり、粗末にしたってなんとも思わない。命を命として見られず、命と分離された社会になってきているように感じています。命を命として見ることができ、優しくあれる社会にしたいです。

ーそういう社会を目指していく上で、事業においてどんなこだわりを持っていますか?

「命をちゃんと体験すること」です。飼い主たちはペットをぬいぐるみのように見てしまっていて、“病気にならない動物”を求めているんですよ。下痢をしない、嘔吐しない、痙攣を起こさない、皮膚がかゆくならない子。だから、病気の姿を見ると怖くなってしまって、すぐに動物病院に連れていってしまう。

動物たちは生き物ですから、当然病気になることもあります。大切なのは、その時になぜそうなってしまったかを考えること。動物病院に連れていって薬をもらったらOKではなく、根本にある原因ととことん向き合うことが必要です。だから、私たちがそういう機会を提供できるよう、できる限りなんでもサポートしています。

加えて、飼い主たちは自分のペットのことしか知らず、他の家の育て方を知らないことがほとんどです。だから、飼い主たちが交流し、いろいろな話を共有できる機会を作るようにもしています。その交流を通じて、飼い主もペットも、生きていればいろいろあるのだと実感してもらいたいと思っています。

世界一を目指して。飼い主が主役になれる社会へ

ーより多くの飼い主たちに共感してもらうためにどんなことを大切にしていますか?

私たちはペットと飼い主の幸せの追求を理念として持っています。動物病院といっても、病気を治すだけではなく、命の教育をしたり、それによって世界を幸せにしたりすることを使命だと考えています。それをきちんとブランディングして伝えていくこと。そして、それに共感してもらうために自分自身、そして飼い主さんの魅力を磨くことを大切にしています。

ーこれからの展望を教えてください。

世界一優しい動物病院を作りたいです。そして、すべての人が命を大切にし、優しくなれる世界にしたい。まずは、そのための教育を世界に発信していきたいと思っています。

ただ、一部の人しか受けられない教育では意味がないので、世界の端から端まで教育が行き渡るようなモデルケースを作りたいと考えています。そして、そのためには教育の無償化が必要です。

動物業界における教育の無償化とは、飼い主同士が助け合える社会を作ることだと考えています。例えば、飼い主同士で「最近ご飯何あげてる?」「私はこうしていて、結構いいみたい。今度一緒に作ってみる?」といったやりとりができれば、ご飯ひとつで教えられるじゃないですか。これが無償化に近い形だと思うんですよね。物々交換やコミュニケーションの中で、より質の高い命の接し方を学び合えるような社会を作りたい。

ただ、それができるのはレベルの高い飼い主たちだけです。全ての飼い主がそうなることは難しいでしょう。だから、ある程度のリーダーが必要と考え、そのために今までオンラインサロンを通じて学びの場を提供してきました。そして、7年間続けてきた中で全国にかなりの数のリーダーができてきたんです。今後は彼らを中心にセミナーやオフ会を開いて、他の飼い主たちもどんどん教育する。そして、さらに育った飼い主さんから広がっていく、という構想を描いています。

そして、その先ではみんなが命に優しくなれる社会を実現できる動物病院を増やしていきたいと考えています。具体的には、動物病院を買収してオーナーとして飼い主が入ることで、飼い主自ら治療等を選択できるようにし、飼い主が主役の社会にしたい。というのも、食事や会話、コミュニケーション、運動や専門家選びなど、全てが飼い主さんの選択力だからです。あくまでも治療の主役は飼い主なのです。

そういう動物病院を全国に増やし、モデルケースとして日本から世界へと発信していきたいと考えています。設立した2018年から10年以内に世界一を獲ることを目標としていて、今はそれに向けて次のフェーズに入ったところです。ここからさらに加速し、爆速で進んでいきます。

◎プロフィール
櫻井 辰徳
SUNNYS合同会社 代表

◎会社概要
会社名:SUNNYS合同会社
住所:茨城県石岡市三村3093-3
URL:https://sunnys-academy.com/
※本記事はcokiに掲載しているこちらの記事からの転載です。