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銀行の事業承継対策の裏側②

〜資産管理会社設立 メリットvsデメリット〜

◆文:冨田和成(株式会社ZUU 代表取締役社長)

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前回は、「銀行の事業承継対策提案の裏側~資産管理会社の提案を受けたことはありませんか?~」と題して、銀行の事業承継提案の裏側について解説しました。事業承継が多くの中小企業にとって深刻な課題になりつつある昨今、銀行は融資とセットで資産管理会社の設立を積極的に提案している実態があるということを理解して頂けたのではないでしょうか。

 

それでは、果たして資産管理会社を設立することは事業承継にとってメリットの方が大きいのでしょうか? それともデメリットの方が大きいのでしょうか? 今回はメリットとデメリットを簡潔に整理してみたいと思います。

まずはメリットについて見てみましょう。これらの点は、銀行の担当者がアピールするポイントだと思いますので、話を聞いたことがある方も多いかもしれません。

 

【メリット①】事業会社株式の分散防止

オーナーが経営する事業会社の大株主が個人の場合、相続が発生する毎に大株主が分散していきます。そこを資産管理会社にオーナー一族の株式を集約することで、事業会社の株式の分散防止に繋がり、経営の安定に寄与するという利点があります。

 

 

【メリット②】配当や株式評価に対する税効果

資産管理会社が事業会社から受け取る配当金の課税は、100%又は50%の「益金不参入」扱いになります。個人が受け取る配当金は未上場企業であれば総合課税となることを考えると、特にその他の収入が多い大株主にとっては税制メリットは少なくありません。もうひとつ、資産管理会社の株式の評価計算において、事業会社の株式の含み益の42%相当額を控除することが可能になります。つまり、株式の相続税評価額の抑制にも繋がります。

 

 

【メリット③】オーナー一族への所得分散

資産管理会社から、オーナー家族に給与を支給することで所得を分散することが可能になり、相続税の支払い資金の確保に繋がります。また、資産管理会社から後継者に給与を支給することで、後継者の株式買い取り資金の確保にも繋がり、後継者の資金負担を減らすことが可能になります。

 

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以上、大きな3つのメリットについて簡単に解説しました。それでは、ここからは銀行の立場ではあまり強調したくないデメリットを見ていきましょう。

 

【デメリット❶】資産管理会社株式の換金性

実は、資産管理会社株式は、事業会社の株式に比べて換金性が低くなるのです。したがって、事業承継や相続時に、当該株式の移転が発生する場合、相続税・贈与税等の納税資金の準備が課題になります。

 

 

【デメリット❷】株主の分散や経営権の分散

事業会社自体の株主の分散を防止できる一方で、資産管理会社の株主が相続発生とともに分散していきます。その結果、株主間での資産管理会社の運営方針の対立が起きやすくなったり、運営に関心の無い株主が増加して行く危険性が高くなるのです。

 

 

【デメリット❸】資産管理会社の株価評価

資産管理会社は「株式保有特定会社」に該当する可能性が高く、一般の評価会社に対して株式の相続税評価額が高くなりがちです。このような場合において、合理的な事業計画に基づいて資産管理会社の資産構成をどのように見直すかが論点として想定されます。上場会社の場合、上場会社株式を売却し資産管理会社の株式比率の引き下げを行うことは流動性の観点から難しくはないのですが、未上場企業の場合は容易ではありません。

 

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以上、大きな3つのデメリットについて解説しました。

上記は資産管理会社設立後の論点ですが、設立時にも幾つか課題があります。例えば、オーナーの株式を資産管理会社に移動する際に、オーナーは株式の利益分に対して20%の譲渡益税を払う必要があります。そうすると、利益分だけで数億円規模となるオーナーが少なくありません。納税資金が重く圧し掛かるわけです。さらに、資産管理会社には設立時に資金がないわけですから、資金調達をする必要があり、そこに金利負担が発生することも考慮する必要があります(ただし現物出資での設立の場合は資金が不要)。

 前回も述べましたが、銀行の提案が悪いといっているわけではないのです。ただ、こういったメリットとデメリットの両方を十分に比較・検討しないと、手間だけかけて対策をしたけど、結局意味がなかったというお粗末な結果になることもあるかもしれません。それどころか対策をしたことが裏目に出るというケースさえあり得るわけです。このようなことを、頭の片隅に置きながら、銀行の提案を聞いてみると、担当者の言葉の裏側にある、少し違った結論が見えてくるかもしれません。

次回は、その他の事業承継対策についてお話していきたいと思います。

 

②【金融アドバイザーから一言】

「メリットとデメリットを十分に比較検討した上で、銀行の提案を聞いてみましょう」

ZUU

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【プロフィール】

冨田和成(とみた・かずまさ)…株式会社ZUU 代表取締役社長兼CEO。大学在学中にソーシャルマーケティングにて起業。2006年に一橋大学を卒業後、野村證券株式会社に入社。支店営業にて同年代のトップセールスや会社史上最年少記録を樹立し、最年少で本社の超富裕層向けプライベートバンク部門に異動。その後シンガポールへの駐在とビジネススクールへの留学やタイへの駐在を経て、本店ウェルスマネジメント部で金融資産10億円以上の企業オーナー等への事業承継や資産運用・管理などのコンサルティングを担当。2013年3月に野村證券を退職し、2013年4月株式会社ZUUを設立、現在に至る。

【お問い合わせ先】 株式会社ZUU

info@zuuonline.com

 

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