
株式会社トラストワン 代表取締役 森 雄太氏
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生まれたばかりの企業が、何の障害もなく右肩上がりに成長していくことは極めて稀だろう。それは同社も例外ではなく、2011年3月の東日本大震災と福島第一原発の事故によって、思わぬ苦境に立たされる。南相馬市民の し、市内でも元の住居を離れる人が相次いだ結果、福島店の社員のうち「地元に残ったのは4人だけ。私を入れても全部で4~5人でした」というまで減ってしまったのだ。
痛手からの再出発には大きな力が必要。そう考えた森氏が注目したのは、まだまだ昔ながらのやり方が濃く残る業界でIT化を進めること。そうして「家具×IT」のあり方を模索する中で、森氏は2013年に現取締役CFO(最高財務責任者)の但野謙介氏、2017年に現取締役CTO(最高技術責任者)の山下敏義氏という2人の仲間を得る。但野氏は元NHK記者で、独立してコンサルティング会社を運営した後、南相馬市の市議会議員も務めた人物。山下氏は2級建築士資格を取得後、スイスのソフトウェア開発会社で開発を手がけた人物。建築・内装業界の常識に囚われない豊かなバックグラウンドを持つ人材を得て、新しいサービス・自動での見積もり~工事施工までのワンストップサービスWebサイト「ツボタン」が誕生することとなった。
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「ツボタン」の最大の特徴は、「見積もりには時間がかかる」という内装業界の常識をひっくり返したところだろう。
開発のきっかけは「飲食店開業を考えているお客さんの話を聞くと、銀行融資の審査を受けるために、工事の見積もり金額、平面図をすぐに出してほしいという要望がすごく多いんです。でも内装業界は長らく、”不動産の現地調査や聞き取りを行わないと見積もりはできないから”と、1カ月~1カ月半待っていただくのを普通としてきました。それを何とかして簡単に金額がポンと出る仕組みを作れないかと考えたわけです」との、業界の現状に対する疑問だったと森氏は語る。
ツボタンでは、飲食店の内装工事見積もりは「坪単価いくら」との形で話し合うことが多い点に目をつけ、デザイン毎に坪単価をある程度設定してサンプルを多く掲載。利用者が「気に入った店のデザインを選び、坪数をクリックする」だけで、わずか2分で見積もり、そのまま融資審査に提出できる平面図、事業計画書がセットでダウンロード可能で、そのまま融資審査に使うこともできるようになっている。この事業計画書作成について顧客側の評価は高い。飲食店のA社は言う。
「客単価やおおよその来客数は予測が出来たりスタッフの給料等を入力すれば坪数がわかっているツボタン側で光熱費等を自動で入力して5カ年計画を作成してもらい、グラフまでついている事業計画書なのが大変便利でした」。
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同社では目下、内装工事のパーツをユニット化することで現場での加工比率を減らし、施工期間の短縮・コスト削減につなげることをめざして3Dプリンタを使ってユニット化パーツを開発中。「ツボタン」の方も、掲載デザイン数の大幅追加、飲食店に加えて美容院の取り扱い開始などのアップデートが行われており、インドネシアやタイ進出をめざして準備も進めているという。 使える道具や環境の変化が変われば、常識もまた変わっていく。「好きなデザインを選ぶだけで2分で見積もりが出る」「10日間の工期で内装が仕上がる」のが内装業界の常識になる日は、そう遠くないことだろう。
森雄太
1979年(昭和54年)福島県南相馬市出身。
2000年に専門学校を卒業後店舗向け什器制作をしている福島県南相馬市の会社に入社。2007年にその会社が倒産してしまい2007年2月に株式会社トラストワンを設立。トラストワンは什器制作だけではなく店舗内装も請負い現在は意匠設計から施工も請負元請け工事を中心に受注している。
2019年1月より自社のサービスとして【ツボタン】を展開。
2019年4月よりワンストップソリューションでの喫煙ブースの販売を開始。
株式会社トラストワン
東京都千代田区九段北1-14-21 九段アイレックスビル6階
http://yuinet.beans-fukushima.or.jp/2013/03/南相馬市の避難の状況と市内居住の状況 より