コラム

は満寿司 (東京神田) 村木健真|手の国ニッポン

2013.08.31
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手の国ニッポン

◆取材・文:大高 正以知 01_tanbou_factry01   手づくり、手空き、手間賃、手形、手付け、手仕舞い──。 もちろん英語や独語にもないわけではないが、とくに日本語には、労働や経済取引に関係する用語に、〝手〟の付く熟語が多く見られる。土を耕したり、木の実を取ったり、貝を剥いて食べるしか生きる術のなかった古代日本人にとって、唯一のビジネスツールが手だったことと、おそらく無関係ではあるまい。石川啄木が、 「はたらけど はたらけど猶(なお) わが生活(くらし) 楽にならざり ぢつと手を見る」(歌集・一握の砂) と詠んだのも、日本人ならではの感性と言える。これが(敢えてどことは言わないが)よその国なら、「ぢつと通帳を見る」  となるに違いない。 そこで今月の探訪は、江戸の文化が生んだニッポンの伝統的オリジナル手仕事、寿司職に注目してみた。    

手は口ほどにモノを言う

ご案内の通り、今や先進国は言うに及ばず、新興国でも寿司屋の看板を掲げるレストランが少なくない。しかし日本人が経営するのは、そのうちの10%にも満たないという。そのためだろう、日本の伝統的な寿司ネタや調理法から大きく逸脱した寿司紛いの料理を、ぬけぬけと寿司と称して提供しているケースが、アメリカを中心に世界各国で見られる。いきおい本物の寿司を見たことも食べたこともない外国人は、それを寿司だと勘違いする。 そこでもうだいぶ前の話だが、これではいけないと日本の農水省が、〝日本食を名乗る創作和風料理〟と〝伝統的日本食=寿司〟を区別する制度を設けようと検討を始めている。しかしこれに反発したのが各国の大マスコミだ。一斉に「スシポリス反対」の声を上げたのだ。   冗談じゃない。ポリスでもアーミーでも構わないが、シャリのひと粒ひと粒にまで神経を尖らせ、指先の温度や圧にも繊細な注意を払って握る寿司は、日本の紛れもない文化である。国の文化を守って何が悪いのか。あれもこれもゴチャ混ぜにし、煮たり焼いたりしてボールに放り込むだけのカタカナ料理と、一緒にされては困るってもんだ。   1937(昭和12)年創業の老舗江戸前寿司店、「は満寿司」(東京神田)の二代目オーナー、村木健真さんに話を聞いた。 「江戸前寿司というのは、せっかちで気が短いくせに食感とか食味にうるさい江戸の下町っ子のために生まれた、ある意味で大衆料理なんです。大衆料理だから安くは出すんですが、かといってノロノロ出したり雑に握って出したら、何を言われるか分かりません(笑い)。そんな下町っ子の気質をよく知っているのが、ボクら江戸前寿司職人の手じゃないですかね。理屈じゃなく、そこは修行と経験です。どんな能書きを言ったり看板を掲げても、この職人の手には敵いませんよ」 ベラボーめ!これでちったぁ懲りたかい! 01_tanbou_factry02 プリント 【取材協力】は満寿司(はまずし) 東京都千代田区鍛冶2-12-10 TEL03-3254-0362  

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