◆文:島田光太郎(株式会社プルータスM&Aアドバイザリー )

 

事業承継問題というと、長年(時には数世代にわたって)経営していたオーナー社長が後継者難で子供に後を継がせることができず廃業の危機に直面するといったことが一番に思い出されるだろう。しかし、事業承継問題はこのようなオーナー企業に限った話ではなく、IPOを目指しているベンチャー企業でも直面する問題である。

 

最近では、ニュースや新聞等でベンチャー企業が大企業に買収される所謂M&Aイグジットを目にする機会が少しずつ増えてきた。昨年の代表的な事例としては、KDDIによるソラコムの買収(譲渡価額200億円)やDMM.comによる即査定・現金化アプリCASHを運営するBANKの買収(70億円)、エイチームによるIncrementsの買収(14.5億円)などが挙げられる。また、2018年に入ってからは、イグジットというよりは救済の性質が強い事案ではあるがマネックスグループによるコインチェックの買収(36億円)などが記憶に新しい。

弊社、プルータスM&Aアドバイザリーがフィナンシャル・アドバイザーを務めた大和ハウス工業によるロイヤルゲートの買収もその一例であり、今後オールドエコノミー企業などによるベンチャー企業の買収案件が急速に増加することが予想される。

 

日本におけるベンチャー企業の多くは、IPO(新規株式公開)を公言し、ベンチャーキャピタルから資金調達をするケースが多く、IPOを前提に経営していることからも、イグジットを果たしたベンチャー企業の約4割がIPOであると言われている。一方でアメリカにおいては、イグジットを果たしたベンチャー企業の約8割から約9割がM&Aによるものと言われており、そもそもM&Aによるイグジットを前提に起業を繰り返すシリアルアントレプレナーなどの存在もよく知られている。

もちろん、アメリカではIPOのハードルが高く、一方で日本はそのハードルが低いこと(東証マザーズの最低時価総額が10億円以上)やその他色々な理由はあるものの、その比率の差は歴然たるものである。また、日本においてはベンチャー企業を取り巻くエコシステムが確立されておらず、起業家より投資家(ベンチャーキャピタル等)のほうが優位な立場にあることもM&Aによるイグジットが進まない原因のひとつであると言われている。

 

新しいビジネスモデル、ソリューション、技術やプロダクトを生み出したベンチャー企業が、単独でビジネスとして確立することは並大抵のことではない。実際に創業後3年以内の廃業率は70%以上と言われており、ますます競争が激化する日本において、生き残ることは非常に大変なことである。

しかし、単独では収益化が難しいベンチャー企業においても、同業種など一定のシナジーが期待できるオールドエコノミー企業などと組むことにより、単独で事業展開をする時間軸を超えて早期に収益化を達成することは十分可能である。

 

日本におけるオールドエコノミー企業を取り巻く市場環境は、ほとんどの場合において成熟しており、既存領域だけでの成長には限界を感じている場合が多い。従って、これまで通りの事業運営では株主の期待に応えて利益を上げ続けていくことは難しく、今後は、ベンチャー企業が持っている技術、ソリューション、プロダクト、新しいビジネスモデルを積極的に取り込み、既存領域でのイノベーションや新たな領域での成長が必要不可欠となるだろう。オールドエコノミー企業にとっては、ベンチャー企業の買収を通じて、既存事業の差別化や新しい収益事業の確立、デジタル人財の確保などを実現できるチャンスである。また、ベンチャー企業にとっては、資金力・販売網・信用力などのオールドエコノミー企業が持つ資産を活用し、クライアントの拡大や技術開発の促進、コストダウンなどを活用し、早期に収益化を達成することが期待できる。

 

オールドエコノミー企業を含む上場会社のほとんどがM&Aを今後の事業計画において検討している今日において、ベンチャー企業の起業家にとって、M&Aによるイグジットは非常に身近なものになりつつある。M&Aイグジットは、ベンチャー企業にとって第二創業であり、新たな企業傘下で早期に事業拡大することにより、結果としてIPOの近道となる可能性もあり得るのではないだろうか。IPOをせずに、非上場のまま自社のみで経営を続け社会に価値を提供すること自体は、非常に素晴らしいことではあるが、今後はぜひM&Aによって他の企業と手を組む選択肢を積極的に検討していただきたいと考えている。

 

プルータスM&Aアドバイザリーにおいては、ベンチャー企業とオールドエコノミー企業を含む上場会社の橋渡しとなるべく、ベンチャー企業のM&Aイグジットを中心としたM&Aアドバイザリー業務を積極的に行っている。弊社は、様々な有価証券の第三者評価を専門とするプルータス・コンサルティングを母体としており、プルータス・コンサルティングでは、これまでIPOを果たした数多くベンチャー企業に対して、インセンティブとしてのストックオプションを含む資本政策のコンサルティングを行ってきた。

一方でオールドエコノミー企業に対しては、M&Aやファイナンス時に必要となるバリュエーション(企業価値評価)を数多く提供してきた実績がある。ベンチャー企業の起業家と投資家、そしてオールドエコノミー企業それぞれの考え方を理解する弊社だからこそできるベンチャー企業のM&Aイグジットを今後もサポートし、日本経済の活性化に少しでも貢献できればと思う。

 

島田光太郎

1985年生まれ。順天堂大学を卒業後、2009年に新卒で楽天株式会社に入社。

楽天市場出店企業のEC戦略立案から実行までのコンサルティング業務に従事。

その後、あずさ監査法人(KPMG)にてニューヨーク証券取引所に上場している米国会計基準適用会社の会計監査業務に従事した後、株式会社プルータス・コンサルティングに入社し、株式会社プルータスM&Aアドバイザリー設立に参画。米国公認会計士(ワシントン州)。

 

株式会社プルータスM&Aアドバイザリー 

東京都千代田区霞が関3-2-5 霞が関ビルディング30階

電話:03-3591-8123

http://www.plutuscon.jp/

プルータスM&Aアドバイザリーは、公認会計士を中心とする資本政策に熟知したメンバーにより構成された、仲介業務は一切行わず、アドバイザリー業務に特化したサービスを提供する会社です。メンバーの大部分は、資本政策やバリュエーション業務の専門機関である株式会社プルータス・コンサルティングの出身者です。我々は、プルータス・コンサルティングで培った会社の「価値」を見極める目をもって、クライアントが満足する「価格」にてM&Aや親族外承継ができるように、最大限のアドバイスを提供することをお約束いたします。