◆文:佐奈徹也 (税理士法人古田土会計

データで見る中小企業の実態

中小企業庁が発表する統計によると2014年7月時点で、日本の全企業のうちの実に99.7%に相当する380万社が中小企業で、うち小規模事業者数は325万社。大企業の数は1.1万社です。また労働者数を見ると2017年4月時点で、大企業の従業者数は1,433万人に対し、中小企業の従業者数は3,361万人と大企業のおよそ2.3倍です。

古田土経営グループの使命感は、「日本中の中小企業を元気にする」です。これは、中小企業が活性化すれば必然的にそこで働く社員とそのご家族の生活が安定し、日本が活性化する、という思いから来ています。

 

では「活性化」の定義とは何でしょうか。「元気」な会社の定義とは何でしょうか。

様々な指標がありますが絶対に外せない指標の一つは、黒字か赤字かという点だと思います。現在日本の法人の赤字割合は7割とも8割とも言われていますが、上場企業はそのほとんどが当然黒字であることを鑑みると、中小企業の赤字割合がいかに高いかがわかります。

更に具体的にイメージして頂くために、2018年8月現在、古田土経営グループの法人関与数は2000社以上です。そのすべての会社を対象に、賞与の実態調査を実施しています。つまり、税務申告をする際に作成する会計帳簿や給与計算データから、実態の賞与額の平均を算出しています。その集計結果は、実に約25%もの会社が夏季冬季の定期賞与を支給出来ていないというのが実情です。そして賞与を支給している75%の会社の平均支給額は、夏冬ともにおよそ25万円です。

しかし、この数字ですらも古田土経営グループが関与する2000社あまりの集計である以上、世の中の平均よりは高水準であると考えています。その理由は、前述の通り法人の赤字割合は7割とも8割とも言われていますが、私たちが関与する法人のうち、ある条件を満たす会社に限定すると黒字割合は実に80%にもなるからです。

ではその条件とは。

 

中小企業の事業承継を成功させるための唯一無二の道具

それは、自社の「経営計画」を策定しているか否か、です。

私たち古田土経営グループが定義する経営計画とは、銀行に提出するための数字目標のことではありません。事業の未来、働く社員の未来、そして会社の未来を経営者自身が魂を込めて書き上げるものを言います。この経営計画を描いたものをまとめたものが「経営計画書」です。よくルールブック等と解説されることがありますが、全く違います。経営計画書とは、その会社がこうなりたい、という未来そのものが描かれているのです。

 

弊社が定義する経営計画書に記載されるべき項目を目次から一部抜粋しますと、

・使命感、経営理念

・社員の未来像、事業の未来像、組織の未来像

・長期事業構想

・中期事業計画

・短期利益計画、販売計画

等があり、古田土会計グループの経営計画書は総数200頁以上にも及びます。

 

昨今では多くの中小企業で経営者の高齢化と後継者不足が深刻な問題となっています。我々古田土経営グループが考えるこの問題の根本の原因は、経営計画の策定がなされていないことではないかと考えています。

経営計画を策定するということは、会社や働く社員の未来を描くということです。

自社が展開している市況はどのように変化するのか、その対応策は何なのか。または、社員にはどうあって欲しいのか、そのために会社と社員双方が果たすべき役割は何なのか。そして、後継者にはどのような資質が必要で、何を大事にして守って欲しいのか。経営者の頭の中に朧げにあるキーワードを、後に続く者への道標となるように文章で紡いでいく。この作業を経て完成される経営計画書こそが、現状の中小企業を取り巻く事業承継における様々な問題を解決する唯一かつ、効果的な方法であると実感しています。

 

上手くいかない中小企業の事業承継

M&Aの実務経験がある方のお話しを聞くと、別々の会社が一つになってからしばらくの後、経営者同士の意見の食い違いにより結局上手くいかなかった、という事例をよく聞きます。しかし、我々古田土経営グループがお手伝いした会社様は、セルサイド・バイサイド問わず、少なくとも経営者の意見の食い違いによる失敗はありません。

それは、トップ面談の際に必ず自社の経営計画書を相手に見てもらうことで、事業や社内環境のみならず、その経営者の方が大切にしていること、つまり価値観を言葉で共有出来るからです。その段階で価値観が合わない場合には、交渉は先に進むことはありません。

 

また、中小企業の事業承継が進まないもう一つの理由に、財務基盤の脆弱さがあると考えています。過去の過剰な投資による過剰な借入金の返済や、財務戦略が伴わない無計画な増収による、短期的な必要運転資金の増加。または過剰とも思われる節税による内部留保の枯渇等により、財務基盤の脆弱な中小企業の貸借対照表をたくさん見てきました。

しかしこれは、ある種仕方のないことだとも考えています。なぜなら中小企業の経営者とは家業を継ぐか、勤めていた会社のトップセールスマンが独立するか、等によって成ることがほとんどです。大企業の経営者のように、財務戦略も含めた経営を学ばずに経営者になる方がほとんどだからです。

ですから、経営者の方はしっかりと財務を勉強し、たとえ借入金があったとしても、後継者の方が安心して引き継げる財務戦略を立案出来なければならないのです。

 

中小企業こそが事業承継を成功させなければならない

「大企業は納税で国家に貢献し、我々中小企業は雇用の創出により国家に貢献する」というのが弊社代表取締役会長、古田土満の思いです。

自身で設立した会社を後進に譲るのは、創業者にとっては何よりも寂しいことだと思います。親族内にやる気と資質を兼ね備えた後継者がいらっしゃるのであれば、こんなに恵まれたことはありません。しかし、中には親族内、もしくは親族外でも社内でこの2つを合わせ持った人材がいないという会社が多くあるのも実態です。

そんな経営者の方からのご相談件数が急増しているのがM&Aです。事業承継を計画的に進めなかったために、今から後継者を指名し教育する時間が無い、というケースです。

 

会社の経営を数十年経験してこられた経営者でも、事業承継は初めての経験です。もしかすると人生で一番大きな決断になるかもしれません。そんな状況の中、ましてや自分が作って育てた会社を他人に売却するということに、不安や後ろめたさを感じる方もいらっしゃいます。

しかし、例え他人の手に渡ったとしても一番大事なことは、自社の歴史や技術、そして何より働いてくれている社員とそのご家族の雇用を守ることが最重要であると思います。事業承継こそが、経営者の方々にとっての最後の使命なのではないでしょうか。そしてこの経営者に課せられた使命を全うして頂くためにも、いつかは訪れる事業承継について真剣に、そして可能な限り早く向き合って頂きたいと切に願っています。

 

佐奈徹也

昭和53年8月5日生まれ(40歳)

平成16年に現税理士法人古田土会計の前身である古田土公認会計税理士事務所に入所

その後一度休職し実父が経営する法人の仕事に2年間携わり中小企業の経営を学ぶ

中小企業経営者のお困りごと解決のために税務のみならず、保険、信託、投資や事業承継等、幅広い知識を習得し、平成30年4月に社員数200名超の古田土経営グループにおいて最年少で執行役員に抜擢

株式会社古田土経営 /税理士法人古田土会計

https://www.kodato.com/

東京都江戸川区西葛西5-4-6 アールズコート302

TEL.03-3675-4932

社員数:214名

年商:16億8000万円(2017年12月期)