オビ 企業物語1 (2)

47都道府県事業スタートカンファレンス始動! コワーキングスペースでの出会いが生み出す可能性

◆取材:加藤俊

オビ スペシャルエディション

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山口豪志さんの語る地域活性の起爆剤

クックパッドやクラウドソーシングのランサーズをスケールさせた男として、ITベンチャー界隈で「成長請負人」として名高い山口豪志さん。小誌でもおなじみの彼はいま、全国に点在するコワーキングスペースの活性化をミッションとすべく奮闘している。

 

 

コワーキングスペースのほとんどが、上手く機能しているとはいえない

フリーランスやスタートアップ界隈ではコワーキングスペースの活用が当たり前になって久しい。2000年代に入ってから生まれた新しいワークプレイスとして事務所・会議室などを共用するという在り方が注目されるようになり、フリーランスの受け皿として認知されるようになったが、一方で瞬く間に閉鎖してしまうスペースもあったりする。各スペースの収益という点に目を向けると、いがいと運営がヤバいんでないの、というところが多いらしい。

その理由は明白、と山口さんは語るが、まずはなぜコワーキングスペースがこれほどまで増えているかに触れておきたい。

 

いわゆる貸会議室とは異なり、大きな、開かれた空間が用意されていることがほとんどのスペースだが、フリーランスの場合、在宅でも仕事をすることはできるが、そこにどうしてもつきまとう孤立感や対人交流の欠落などを解消でき効率的に仕事を進められるとあって、ノマドワーカーといったスタイルの隆盛とも相まったことからおのずと利用者は増えていった。

現在、コワーキングスペースは世界中の都市に広がっており、世界で約6000、日本には約350ほどあるといわれている(出典:コワーキングスペースの様態 :2015年 国内施設に関する記述統計分析)。

 

「利用しているコワーカーはほとんどが20代から30代になります。フリーランスは勿論、クリエイターや、どこかの会社で社員をしながら副業を持っている人なども広く利用しています。従来はこういう人たちはなかなか表に出てこないで仕事をしていたので、同業者の横の繋がりが希薄でした。そんな彼らの受け皿となって利用がすすみました」とは山口さんの弁。ただ、日本の市場の現状はこのままいくと芳しくない、という。

 

「現状、日本のコワーキングスペースのほとんどは上手く機能しているとはいえません。コワーキングの成功は、スペースに集まる人々がコミュニティを形成することにあります。

つまり、元々表立っては存在していなかった地域や人の間にある繋がりが、コワーキングスペースに集まり、触れ合うことで『見える化』され、コミュニティが生まれることで初めて意味を持ち始めるのです。必然的にコミュニティを活性化させるためには、ある程度のコワーカーの流動性が求められるのですが、新規利用者の獲得にどのスペースも苦労している現状があります」

 

 

既存のネットワークを「見える化」し、そこに武器を提供する

このコワーカーの流動性と「見える化」されることで大きな効果を生み出しているコミュニティが、小田原にあるという。山居是文さんが運営している旧三福というコワーキングスペースがそれだ。山居さんは元々デザイナー。中華料理店だった空き物件を改装してコワーキングスペースを作ったという。

小田原は東京から電車で約1時間半。新幹線なら30分という距離でありながら、熱海や箱根などの観光地も近く、水産業者などの地場企業も揃っている。この絶妙な環境に、フリーランスの人が居心地の良さを感じて集まってくるのだそうだ。

 

そして、スペースの成功と切っても切り離せないのが、「世話焼き役」の存在だ。コミュニケーション・マネジャーが優秀であるか否かが、明暗を分ける。その点で山居さんは「非常に優秀な方」と山口さんは言う。
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「山居さんが創業支援セミナーをリードして、上場企業の人がメンターとしてセミナーに参加してくれるようにしています。それが地元小田原の有名企業鈴廣さんに繋がったりと、単に起業して間もない人達だけの寄り合いではなくなっている点が強い。いうなれば、多種多様な人材が集まる『生態系』ができているんです。地元企業とのタテの繋がりと、フリーランス同士のヨコの繋がり。それを山居さんが作って、そこに人が集まって来ている。山居さんがいるから小田原で仕事をスタートした、なんて人もいますし。

こういった重層的な人材を引き寄せる磁力を持つか否かが、成功の分かれ道になるのだと思います。また、見える化という点でも、今まで有形無形で存在していた地元のコミュニティが、コワーキングスペースがあることによって異なるコミュニティに属していた人に可視化されることも大きい」

 

 

オビ インタビュー

47都道府県:事業スタートカンファレンス始動!

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現在、山口さんはこうした小田原の事例の横展開を図るべく、全国のスペースを繋げてしまおうという構想を打ち立てている。来年から1年かけて47都道府県のコワーキングスペース行脚を行い、スペースでカンファレンスの開催を行っていくそうだ。起業して間もない人を全国レベルでサポートできる体制を整えていく狙いだという。

 

 

─カンファレンスの目的は?

 

元々ランサーズに在籍していた際に日本各地で様々な交流イベントを開催してきました。その中で、例え10人以下しか集まらないようなイベントでも、そこで知りあった人たちにとっては価値のある出会いだった、ということを感じるようになったんです。出会った者同士で会社を立ち上げました、なんて話を後から聞いたこともありました。

そういう経験から、人の出会いは大事なんだな、ということを実感するようになったんです。やはり、人は仕事を任せる時には相手の顔を見ることが必要なんですよ。そういう点では、今後、会社というワクを離れて、フリーで動き回って自分の得意なジャンルで仕事をする人が多くなってくると、コワーキングスペースは『未来のハローワーク』としての機能も持つようになるのかな、なんて思っています。

 

 

―なぜ、全国を回るのか? 地域活性化の枠組みでスペースをとらえているのか?

 

今まで、特に地方では地場の企業が、各々の役割分担に固まっていました。それぞれのプレイヤーが変わらないことにより、なかなか化学反応が起こらないし、新しいものが生まれにくい。多くの場合、そういう化学反応を引き起こすのは、そこに入ってきた『ヨソ者』です。

しかし、そういう人は商工会などに行きづらいし、情報を受け取りにくい。せっかく想いがあって新たな取り組みをやっているのに、それが燻ってしまっている。ヨソ者を招き入れるスペースという在り方が、地域産業に好影響を与えると思います。

この文脈上で、事業をしたい、と思う人たちが集まる場所になればいいですね。そこに行けば同じようなことを考えている人がいるよ、とか、志を持った人たちを紹介できる場に。そこで『見える化』されたコミュニティの輪が地域の住民や学生・企業・自治体を巻き込んでイノベーションを起こしていけるようになってほしい、と考えています。

 

 

―スペースの問題点は?

 

日本にあるほとんどのコワーキングスペースは上手く機能しているとは言い難い。継続していくための収益面でも、入居者に向けてのサービス提供も、地域や企業とも繋がっていないんですね。特に東京近辺ではスペースの乱立や士業の方々のスペースになっており、本来のコワーキングとしての機能を果たせていません。

しかし、今まで述べてきた通り、むしろ地方都市の活性化という点で、コワーキングスペースは期待できます。面倒見のいいコミュニケーション・マネージャーがいて、そういう人をサポートする地域企業のバックアップがあればイイですし、更にそこでの取り組みが他のコミュニティにまで拡大していくとなおイイですね。そもそも、コワーキングは人の魅力!でやっているんですから。

 

 

―具体的なサポートの内容とは?

 

STAAThttp://staat.jp)というコワーキングスペースオーナー向けの集客支援を行う登録サイトを立ち上げました。スペースオーナーの方がきちんと経営を安定させられるような仕組みづくり支援から、利用者のコワーカーのサポートを行っていく予定です。

 

 

―カンファレンスで何をするのか?

 

参加者が、自分が独立、または複業や社内起業に対して抱えている課題に対してのヒントが得られるような機会となるイベントになっています。自身が独立するとき、事業を興す時に欲しい情報や参加者同士の繋がり、キッカケを創る場になれば。

複業として社外でも活動を考えている会社員の方や、企業内の新規事業担当者の方、事業を新しく興す起業家の方などの参加をお待ちしております。

 

 

別掲◇繋がりをサポートする

このように人の出会いが生む可能性に注目する山口氏だが、彼自身は元々、昆虫学者になりたいという夢を持っていたという。

「小さい頃、昆虫が好きだったので、それを追究したいと思って大学でも昆虫の分類学を学んでいました。しかし、学芸員の実習で行った地元の博物館で自分より遥かに詳しい少年に会った。その時、本当に研究者になるのはこういう人なんだ、だったら自分は、こういう人のサポートをしていきたい、と思ったんです」

他にも、旅行が好きな山口氏は大学4年生の時のアジア縦断旅行を始め、世界中を旅している。その中での出会いなどにも大きな影響を受けたという。

 

「人同士が出会うことで生み出される可能性は多種多様だと思っています。私は【ある成功モデル】を作ってそれを他のエリアへ転用していくようなマネは属人モデル過ぎて難しいと思いますし、それはそれぞれの特徴があってよいと思います。だったら各々の地域の特色やコミュニケーション・マネージャーを見えやすく選びやすくして、各々が上手く運営できるようにしてもらいたいですね。私はそのサポートができれば嬉しいです」

日本ではモノづくりが評価される代わりに、人の繋がりをサポートするような仕事が評価されない傾向があるように思える。だが、山口氏のような可能性を信じる人の尽力があるからこそ新しいモノが生まれてくるのだ、ということを彼の言葉から感じることができた。

 

 ▽イベントの詳細はこちら▽

1月17日(火曜) 水戸

http://everevo.com/event/35543

1月20日(金曜)沖縄

http://everevo.com/event/35810

1月24日(火曜)栃木

http://everevo.com/event/35892

1月25日(水曜)東京

http://everevo.com/event/35695

1月26日(木曜)群馬

http://everevo.com/event/35893

1月27日(金曜)神奈川

http://everevo.com/event/35859

オビ スペシャルエディション

山口豪志(やまぐち・ごうし)さん…2006年から日本最大料理レシピサイト「クックパッド」を運営するクックパッド株式会社にて、広告事業・マーケティング事業の創成期より参加、2009年の同社IPOにトップセールスにて貢献。大手食品・飲料メーカ、流通・商社、広告代理店を担当し、バリューチェーン全体を幅広くカバーした事業創造を行う。

2012年より3人目の社員としてランサーズ株式会社に参画し、ビジネス開発部部長として大手企業との事業提携・協業、広告企画の販売開始などを実行。その後、社長室広報チームリーダーにて、クラウドソーシング業界の普及啓もうに47都道府県フリーランス交流会の実施、中小企業庁主催の各県のセミナー登壇など、実績多数。

 2015年1月デフタパートナーズのアクセラレーターとして、インキュベーション施設である横浜グローバルステーションの管理運営とベンチャー企業向けに育成プログラムを提供するなど、活動領域を拡げる。
2015年5月に株式会社54を創業。

 

株式会社54

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