平成の世が終わる今こそ、倫理(公益)資本主義への転換を

 

現政権肝いりで女性の社会進出を促進するための女性活躍推進法ができて3年以上経つが、女性の活躍する時代になったとはまだまだ言い難い。2018年12月18日、世界経済フォーラム(WEF)が発表したジェンダーギャップ指数によると、日本は149か国中110位で、G7の中では昨年に引き続き最下位となった。

理由としては男女の収入の格差や管理職のポジションにつく人数の差が大きいことや、女性の国会議員が少ないことがあげられるという。(※1)

しかし、そんな現状を打破するがごとく、「これからは女性総活躍の時代だ」と息巻くのがいたばし倫理法人会だ。彼らの目指す理想の社会とはいったいどういうものなのか。

 

行き過ぎた株主資本主義への反省

世界経済の中心地であるアメリカでは、ROE(株主資本利益率)やROI(投資効率)といった経済指標で評価することが過度に重視されてきた。かつ、中長期的ではなく、短期的に莫大な利益を得ることを良しとする「株主資本主義」ともいうべき考え方が当たり前になった。

しかし、株主資本主義にもとづくコーポレートガバナンスが行われた結果、企業経営者と株主が潤う一方、大規模なリストラが起きて街には失業者があふれ、所得格差も拡大している。そのような行き過ぎた株主資本主義によって引き起こされたのが、2008年に起きたリーマンショックだ。

 

日本でも、2018年9月の中間決算で上場企業が2年連続で過去最高益を更新し(※2)、同年12月には「いざなぎ景気」超えも認定された。しかし、その一方で実質の経済成長率は1%程度(※3)、中小・零細企業の賃金上昇率1.4%程度であり(※4)、大半の労働者には好景気の実感はないだろう。

現在、再び世界的な金融危機が起こることが予想されている今、リーマンショックから我々が学ぶべきことは何なのか。東京都倫理法人会キャリア(歴代会長)会長の鈴木靜雄氏(株式会社リブラン 相談役)はこう語る。

 

倫理(公益)資本主義への転換が急務

東京都倫理法人会 キャリア会長 いたばし倫理法人会 直前会長 鈴木靜雄

「平成が終わろうとする今、日本において、行き過ぎた株主資本主義の教訓を生かし、倫理経営・倫理経済・倫理(公益)資本主義へ舵を切る企業・団体が増加しています。

倫理(公益)資本主義とは、かつての日本で商人たちの間で大事にされていた『三方よし』の考え方に近いものです。

つまり、株主だけでなく、経営者・従業員やその家族・顧客など、会社に関わるすべての人に利益をもたらすことこそ、倫理(公益)資本主義の目指すところなのです。

 

たとえば、日本青年会議所は2017年より公益資本主義推進キャンペーンを全国規模で展開しています。また、公益資本主義の提唱者であるアライアンス・フォーラム財団の代表理事 原丈人氏は、公益資本主義への転換を安倍総理に提言しました。

それを受けて、安倍総理自ら公益資本主義への転換を示唆し、岸田政調会長を筆頭に公益資本主義勉強会を立ち上げました。その後、大元である倫理研究所の丸山理事長を招いて勉強会を開くなどの動きを見せ始めています。

 

官民挙げて公益資本主義への転換を図ろうとしているこの好機に、全国各地の倫理法人会が黙って指をくわえて見ているはずがありません。

2018年に30周年を迎えたいたばし倫理法人会では、毎週土曜日の7:00から経営者を対象にしたモーニングセミナーを開催し、倫理経営構築を目指し勉強を続けています。さらに、2018年1月29日からは約半年間かけて公益(倫理)資本主義への転換を啓蒙する活動を国内外で展開してきました」

同会では、今後もより一層啓もう活動に力を入れていくに違いない。

 

女性が公益資本主義の立役者に

鈴木氏が直前会長を務めるいたばし倫理法人会では、「これからの時代は女性の活躍が大いに求められている」と考えている。第4次産業革命によりAIやIoTなどの先進的な技術のみならず、ICTの技術が発達してきた。その結果、だれもがやる気次第で時間や場所を選ばず、自由に働くことができるようになった。

同会によれば、ICTの発達で組織の在り方や仕事の仕方自体がドラスティックに変わりつつあるという。

 

「このような時代に合った組織変革を進めるにあたって最も効果的な方法は、女性視点からビジネスを大胆に再構築することだ」と同会宮崎武彦会長は意気込む。

 

いたばし倫理法人会 会長 宮崎武彦

今までの日本では男性が中心の均質的な社会・文化が築かれてきた。しかし今、時代の求めるキーワードは「多様性」だ。多様性が求められている現代では、マイノリティと呼ばれる人たちがしだいに声を上げ始めていることが象徴するように、価値観も多様化を見せ始めている。

そのような多様な価値観を持つ人たちが互いに共存共栄するには、どのようなものごとも柔軟に受け止める包容力が必要不可欠だ。

女性には、その柔軟性や包容力があるといたばし倫理法人会は考えている。そこで、2018年から女性による女性のためのイベントを展開しつつある。

では、具体的にどのような計画が持ち上がっているのだろうか。

 

 

東京都倫理法人会所属の女性幹部による交流会を開催

東京都倫理法人会では、女性活躍推進を本格的に開始するにあたり、キックオフとして2018年3月に第1回首都圏方面女性会長&女性委員会交流会を開いた。これは、首都圏にある倫理法人会の女性会長や女性委員長、副委員長、各都県の女性役員を対象とするイベントである。

 

東京都倫理法人会が首都圏の各都県の会長に声をかけ、講師やアーティストを含め首都圏各地から50名近くの女性幹部が集結した。

 

この交流会の開催にあたり、陰で尽力したのが、米元正子 キャリア会長代行である。

 

東京都倫理法人会キャリア会 会長代行 米元正子

米元氏は、波乱万丈な人生を歩む中で、問題や苦難が立ちはだかったときには自ら倫理指導を受け、向き合うことで乗り越えてきた。そのため、人生の要所要所で倫理指導を受けることの大切さは身をもって実感している。

その体験を生かし、現在では化粧品会社の社長業をつとめる傍ら、倫理経営インストラクターとして首都圏をはじめ全国各地の倫理法人会で倫理の大切さを説く講演活動を精力的に行っている。

「倫理を学ぶことによって、人は誰でも幸せになることができる」と語る米元氏。

 

「経営者であれば、社員やその家族、顧客や取引先などのステークホルダーである身近な人たちを大切にすることです。その延長線上に自身や社会の幸福が位置づけられます。ところが、多くの人が身近な人ほど関係をないがしろにしがちです」

 

米元氏がよく講演で話すテーマがある。自身も昔、倫理法人会の普及に全身全霊で取り組んでいた頃、自宅の階段から落ちて片腕を骨折したことがあったそうだ。こんなときにどうしてと思い、本部へ相談したら、『自分の片腕となる方を大事にしていますか?』と指導されて、はたと気づいたそうだ。心のどこかで仲間を責める気持ちがあったことに。

以来、寝る前に一人ひとりの名前を呼んで感謝をするようになったそうだ。その結果、軌跡が起きた。42社だった会員数が半年で100社にまで拡大。“準”が付いていた法人会の“準”がとれたそうだ。

現在米元氏は、東京都5000社達成委員会の副委員長としての役割も担う。東京都倫理法人会では女性会員30%以上、3年後には東京都倫理御婦人会の会員5000社以上必達を目指している。

 

女性総活躍社会の実現へ向けた取り組み

いたばし倫理法人会 副会長 岡田茂子

また、いたばし倫理法人会にも中心的な役割を果たしている女性がいる。同会副会長の岡田茂子氏だ。

岡田氏は、平成9年に同会に入会し、倫理歴が20年以上にもなるベテランだ。

岡田氏はおよそ10年前、「音楽をより身近に!カジュアルに!」をテーマに、「板橋音楽鑑賞会」を自ら立ち上げた。これは、若手演奏家へ披露の場を提供するとともに地元の板橋区民にリーズナブルな値段で本格的な音楽を楽しんでもらうことをコンセプトにした音楽会だ。

今ではすっかりおなじみになり、地元の住民にも好評だ。

 

「音楽に気軽に触れてもらうことを通じて、一人ひとりの日常が心豊かなものになってほしい。そういった想いを込めて開催しています」(岡田氏)

 

いたばし倫理法人会では、平成30年から平成31年8月にかけて、岡田氏が中心となり「女性総活躍シリーズ」と称した数々のイベントを仕掛ける予定だ。

現在、岡田氏を筆頭とするいたばし顧問団女性リーダーが、国内外で活躍し、社会をリードする女性講師を招いて順次イベントを展開しており、どれも大変な盛り上がりを見せている。こうしたイベントの狙いとは、女性の団結力を高めることで、女性のパワーを1+1を5にも10にもできる相乗効果を生むことだ。

 

時代は見えないものに価値、女性の感性で日本・世界創生へ

人口減少待ったなしの日本において、かつてのような「男は仕事、女は家庭」というような考えでは、もう社会が立ち行かなくなっている。男性中心の社会を変えるのは、これまで表になかなか出てこれなかった女性たちだ。女性は一生のうちに娘・妻・母親・オフィスワーカーと状況に応じて役割を変えながら生きていく。だからこそ、多様な人材を巻き込みながら柔軟に世の中を変えていけるパワーを持っている。

今後は、いかに女性の社会進出を促進し、活躍させることができるかが日本創生の要と言えるのではないだろうか。

 

設立30周年を迎えるいたばし倫理法人会が今期掲げるテーマは、「次代は見えない物に価値、女性の感性で日本創生を」だ。価値観だけでなく、働き方も多様化する昨今では、女性の感性を生かした柔軟な働き方も求められている。

平成の時代が終わりを告げ、新時代の幕開けとなる今、いたばし倫理法人会発の女性総活躍社会の実現を期待したい。

 

今後のイベント情報

いたばし倫理法人会

事務局TEL:03-5244-4197

URL:https://www.tokyo-rinri.net/tankai/?id=1464921549-809713

 

【参考文献】

(※1)世界経済フォーラム「2018年ジェンダーギャップ・レポート発表」

<https://weforum.ent.box.com/s/dvpfv65jcw536m2z0zdswndzda38amkw>

(※2)Sankei Biz「2年連続最高益更新ペース 上場企業646社の9月中間」

<https://www.sankeibiz.jp/business/news/181106/bsg1811060500005-n1.htm>

(※3)朝日新聞デジタル「景気拡大長さ「いざなぎ」超え 実感ある?成長率1%台」

<https://www.asahi.com/articles/ASLDD63M2LDDULFA041.html>

(※4)同「中小企業の賃金上昇率は1.4%」

,<https://www.asahi.com/articles/DA3S13579462.html>