文:増山 弘之

軽井沢リゾートテレワーク協会はリゾート地を活用したテレワークの普及を図るため、 様々な団体とコラボし、イベント「東京フォーラム」を定期的に開催している。2018年度最終回となる今回は、経営者と若手の間の「働き方改革に対する意識のギャップ」がテーマ。本当に若者が欲している働き方改革とは何なのか。経営者から見た働き方改革とは何なのか。経営者側と若手に分かれて議論を行った。

 

会場は、都市の中心地にありながらも軽井沢的空気感漂う、築90年の旧山口萬吉邸「kudan house」を活用、約50名の参加者がリラックスした雰囲気で活発なセッションが行なわれた。

 

今回、ファシリテーターは「絶望の国の幸福な若者たち」など、数々の著書で知られる社会学者、古市憲寿氏。ピョートル・F・グジバチ氏の参戦により、予想通りの白熱した議論になったが、ワイルドな意見も多々あったため、以下問題提起された内容について断片的な紹介でご容赦いただきたい。

 

左 経営者側:箕浦 龍一(総務省行政評価局総務課長)さん、ピョートル・フェリークス・グジバチ(プロノイヤグループ代表取締役)さん、金山 明煥(株式会社東急シェアリング 代表取締役社長)さん、吉川 稔(東邦レオ株式会社代表取締役社長、NI-WA代表取締役)さん 中央:古市憲寿さん 右 若手側:山岡健人(株式会社アドリブワークス代表取締役)さん、渡辺文乃(ワールド・ハイヴィジョン・チャンネル株式会社)さん、岩田健太(東京急行電鉄株式会社)さん@ホール

 

日本人のおかしなキャリア観(経営者)

そもそも、働き方改革の前に、日本人のキャリア観に違和感を持つ。働くということについて、できるだけ少ない努力で、できるだけ多くの収入を得るにはどうしたら良いかというマインドセットになっている人が多いのではないか。

 

大学の授業に参加してみて驚いたのは、ロの字型ゼミ形式の授業であっても寝ている学生がいるということ。先生に糾したところ、「彼もアルバイトで忙しいんじゃないのかな」などという。海外であれば若者は、学生のうちから市場価値を高めるためにできるだけどん欲に知識を吸収するというのが、若者のキャリア形成の普通の在り方だ。

 

こういった学生時代を過ごしたうえ、社員の権利として、もらえるものをもらおうというスタンスでは、自身の市場価値は決して向上しない。このことに気づいていないと、キャリアの転機が訪れた時、何も成長していない自分に気づき愕然とすることになる。ここに日本のビジネスパーソン特有の見えにくいキャリア問題が潜んでいる。

 

何のための働き方改革か?会社は深く理解せず取り組んでいる(若手)

日本中で働き方改革が進められているが、その流れに乗っていろいろな制度を作ったという伝達が上から来る。しかし、なぜ、何のためにこの制度をやり、あるいはそれをやったことによって働き方がどのように改革できるのか?そもそも何のために働き方改革をやるのかと会社に聞いていくと何のためにやるのかが本当はわかっていないように見受けられる。

 

やりたいことが見つからない(若手)

働き方改革で副業解禁の流れも起きている。しかし、そういった潮流での問題意識としては、本当にやりたいことが見つからないということがある。もちろん、やりたいことの数はいくつかあるが、これのために自分のリソースを継続して投下したいと思えるようなものがない。周囲にもそういった若者は多い。だから、会社の制度としてあっても、利用が進まないのではないか?

 

好奇心がないのが問題(経営者)

やりたいことが見つからないのは好奇心が無いからではないのか?どんな仕事も好奇心を持てば面白くなる。ハンバーガーを焼くという仕事でも、焼く長さを数秒変えると、味がどれだけ変わるのか?そういった改善活動に好奇心を持つことは可能。さらに刀の刃を研ぐ仕事であれば、毎日が同じことの繰り返しだ。しかし、それが自身の精神性を高めることになるから砥ぎ師は刀を研ぐ。どのような仕事であれ、フロー状態は作れる。嫌な仕事であっても、自分で好奇心を持ってマイクロフローを作ることが重要だ。小さな夢中が大きな夢中につながっていくのだから。

 

自分探しの旅、自己実現の旅はやめよう(経営者)

世の中的には、夢とか自己実現とか、そういったものがないといけないという風潮がある。だから、自分探しの旅とか、自己実現の旅をしている若者が多い。そんなものは、別になくてもいいんじゃないのか。なければないで目の前の仕事に集中すればよいのではないか。会社をやめたいという社員が出てきたとき、「何かやりたいこと」があるならやめればいいし、ないなら別に会社をやめなくてもいいんじゃないか?という話をしている。なので、無理にやりたいことを見つける必要もない。今あることをがんばればいいじゃん。

 

やりたいことは、やってみないと見つからない(経営者)

継続的にやりたいことが見つからないと悩むよりも何かやりはじめたほうがよい。やりはじめないと、自分は何に向いているか、本当は何に興味があるのかがわからない。人生を賭けてこれをやるんだというものは、そう簡単には見つからない。数多く取り組めば、一定確率でやりたいことが見えてくる。トライ&エラーが間違いなく必要だ。

 

上記のような問題提起に対し、さらに各部屋に分かれてディープなセッションが行われた。

 

古市さん、吉川さん@リビングルーム

 

金山さん@茶室(地下金庫を改造)

 

ピョートルさん@2階和室

 

箕浦さん@2階洋室

 

 

交流を生み出す縁側(ポーチ)の可能性。部屋でもなく、廊下でもない。人が滞留する未開の空間。

 

エントランス

 

本邸は全15室を持つ都内における異次元空間で、新しい発想を生み出す知的創造活動を行うに適していると思われる。邸の活用例について、株式会社NI-WA熊原氏に聞いた。

 

「本邸は、ルイ・ヴィトンの展示や、ラグジュアリーブランドのポップアップストアなど、いろいろ実験的な運営をしています。現状使い方が決まっているわけではありません。運営者として特に関心があるのが、人々との交流を生み出す縁側(ポーチ)の可能性についてですね。縁側文化みたいなものが作れないか?活用の仕方をいろいろご提案いただければと思っております」。

 

主催:軽井沢リゾートテレワーク協会

共催:株式会社NI-WA、株式会社東急シェアリング

会場:kudan house https://kudan.house/en/