経済回復のカギは〝アトツギ社長〟にあり! 企業と若手後継者の挑戦を強力にサポート

二代目・三代目社長にはどんなイメージを持つだろうか? 「苦労知らず」「お坊ちゃん」?

そんなイメージで語られることが多い二代目・三代目だが、実際には多くのシガラミの中で挑戦的な事業に踏み出すことができず「むしろ自分で起業したほうがずっと楽」と話すほど、不満が溜まる一面もある。近年、後継者不足による企業倒産の例は枚挙に暇がない。

そんな状況を打破するために「起業家もカッコイイけどアトツギ社長もカッコイイ」と掲げる組織がある。「一般社団法人ベンチャー型事業承継」はそんな後継ぎ社長の経営拡大を応援している。

後継ぎになりたい人がいない!

一般社団法人ベンチャー型事業承継は、官民のワクを越えて様々な事業体が手を取り合い、企業と若手後継者の挑戦をサポートするプラットフォームを構築している。具体的には企業の若手後継者が先代から受け継いだ有形・無形の経営資源をベースに新規事業・業態転換・新市場参入など新たな領域に挑戦するためのノウハウや資金面・マーケティング面を支援するというものだ。

近年、企業の倒産件数は第二次安倍政権発足後、アベノミクスの恩恵を受け減少の一途を辿っているが、それでも2016年で8446件の倒産件数があり、その99%は中小企業だ。(東京商工リサーチ)

このようなデータの中には、今まで黒字で経営を続けていながらも後継者のなり手がいないために泣く泣く暖簾を下ろしたという企業も少なくない。

実際に事業を受け継いだ後継者が直面する課題としては

①社内・先代の理解を得にくい

②同族企業の保守的なイメージからベンチャー志向の人材を採用できない

③ブランディング・広報PR力が乏しい

④社外の技術・研究シーズを活用して事業化していく人材や資金が不足

⑤直接金融での資金調達が困難

⑥後継者本人の経営者としての資質、などといったものがある

とこのベンチャー型事業承継では挙げている。こういったシガラミが後継ぎのなり手を減らし「むしろ起業したほうが楽」という状況を生み出している。

アイデアソン、クラウドファウンディングなどアトツギを支援する様々なプラン

そんな状況に対し「ベンチャー型事業承継」では「地方のアトツギの意識が変わったら日本経済に地殻変動が起きる」と宣言し、会社を存続させること・社会に必要とされる会社であり続けることには価値があると言う。「ベンチャー型事業承継」は後を継ぐことに二の足を踏ませる先述のような問題を解決できる、様々なプランを用意している。

例えば東京で生活している地方出身の後継者候補、つまり家業を持っている若手経営者たちが集って新規事業を考えるアイデアソンの開催。これにより、既にある事業を受け継ぐことの閉塞感や惰性を打ち破り、新たな可能性を発見することができる。

次に、事業開発に関する課題解決として、大学や研究機関とのネットワーク「知識プラットフォーム リバネス」や大学ファンドとも連携し、産・学そして金融機関や企業支援団体、自治体などの官の連携を図っている。

第3に、クラウドファウンディングサービス「Makuake」を利用して新規事業の資金面とマーケティング面をサポートし、更に銀行との連携で融資額増加の後押しも実施している。このクラウドファウンディングについては既に多数の企業が利用し新規事業をスタートしているという。

また、「ベンチャー型事業承継」自体がファンドを運営することで他の様々なファンド運営組織からの資金提供を受けて経営を拡大、配当リターンを行うというモデルも提案している。組織拡大・人材採用についても独自のプログラムを持ち、チームビルディングの支援も行なっている。

 

アトツギだからこそ得られる充実感・達成感

これほどまで至れりつくせりにアトツギたちを支援するのは何故だろうか。若手、特に20代の内だからこそできることがある、と事業の目的には示されている。20代だからこそ挑戦する力があり、周囲からの応援を得ることができる、異業種へのアンテナも高い、と。親世代もまだ若く、世代交代を潤滑にランディングできるというメリットもある。

また新たにスタートアップした企業にはない歴史=信頼感も助けにもなる。危機を乗り切れる組織力を有していることで安定して長期的な視点から事業を捉えることができる。それはイノベーションを生み出す土壌にもなる、と。

今回ベンチャー型事業承継の実践事例として登壇した2人も、アトツギだからこそ得られた発見・イノベーションを実現している。

ミツフジ株式会社は西陣織の製造する工場としてスタートした、創業60年の企業だったが、そこに現代表取締役社長の三寺歩氏がIT産業から参入してきたことで、化学反応が起こった。ミツフジが持っていた繊維を銀メッキする技術を活用し、導電性繊維を使ったウェアラブルデバイスの開発を行う会社として生まれ変わったのだ。

その製品「hamon」は身にまとうことで自分の生体情報を取得し、そこからスマートフォンなどの端末に情報を送信することができる。健康管理を始め介護福祉や医療の分野にまで様々な利用の可能性があるという。

工具通販サイト「DYIツールドットコム」を運営する株式会社大都山田岳人代表取締役は、妻の実家から結婚の条件として「家業の跡を継ぐ」ことを出されたことがきっかけだった。その家業とは大阪に本拠を置く工具の問屋。入社当時はトラックに工具を積み、西日本各地の町の金物屋・工具店を回って営業していたという。しかし不景気の中、取引先の小売店の業績も沈み、価格競争の中経営は苦しくなっていった。そこで山田代表はネット通販に活路を見出す。

「卸が小売に手を出した」ということで業界内から強い反発を受けたが、会社を存続させるにはこの道しかないと決心し、結果大きな飛躍をすることができた。

2人のお話からは、アトツギだからこその苦労もあるが、同時に跡を継いだ者だからこその充実感と達成感もうかがい知ることができた。株式会社大都の山田岳人代表取締役も「先代より受け継いだ最大の価値は仕入先」と話す。

長年経営を続けてきた企業のみが持つ、培われてきた価値ある「レガシー(遺産)」。新たな知識と可能性を持つ若き経営者たちがそのレガシーを手に入れることで「日本経済に地殻変動が起きる」。ベンチャー型事業承継からは、そんな大きな可能性が湧き出してきている。

 

代表理事 山野千枝

一般社団法人ベンチャー型事業承継

設立日:2018年6月20日
代表理事:山野千枝
事務局:東京都千代田区神田錦町1-17-1神田高木ビル7F
Tel:03-5577-3234