「次世代リーダーズキャンプ2017」参加者の皆さん。最前列には講師陣らがズラリ。最前列左から4番目の人物から順に、蒲俊郎氏、新将命氏、竹岡哲朗氏(本キャンプ実行委員長)、富永雄教氏(中江藤樹記念館館長)

 

次世代リーダーの在り方を考える2日間

企業活動に社会性を持たせるきっかけ作り

2017年9月9日・10日、滋賀県高島市朽木の森 やまね館にて、NPO法人アサヒキャンプと株式会社VALCREATIONの共催により「次世代リーダーズキャンプ2017」が開催された。

 

会場となった「やまね館」(滋賀県)

本キャンプの目的は、都会の喧騒から離れた山奥で自然と触れ合いながら、リーダーとしての在り方を考え、目線の高い同志を作り、今後の目標やアクションをコミットメントすることにある。

また、参加者がNPO法人アサヒキャンプの賛助会員となり、本キャンプの収益を寄付するという、社会貢献型キャンプであることも特徴の一つだ。
初開催となる今回は、全国各地より次世代リーダーを志す経営者・若手リーダーが集結し、総勢21名での開催となった。

 

「アサヒキャンプ」とは

1953年に奈良県・生駒山に開設され、2012年に60周年を迎えた日本で最初の「教育組織キャンプ」。

一般のこどもたちや青少年とともに、ハンディキャップを持つこどもたちのキャンプを実施してきており、その成果は高く評価されている。戦後間もない当時、物資も設備もなく環境も整わないなか、朝日新聞厚生文化事業団が主管し、生駒山上のグライダー発着場後の滑走路や格納庫を使って、日本の草分けとなるキャンプが始められた。

 

その後、三重県・伊勢志摩の海のアサヒ志摩キャンプセンター、滋賀県高島郡朽木村(現・高島市)の森のアサヒキャンプ朽木村へと場を移す。2003年、朝日新聞厚生文化事業団がアサヒキャンプ事業を撤退した後も、アサヒキャンプカウンセラーのOBOGたちが引き続き、現役生を支え運営を継続している。

 

「創造と協同」の理念の下、アサヒキャンプ活動に参加した大学生ボランティア(キャンプカウンセラー)は800人以上に及ぶ。

 

さて、冒頭本キャンプ実行委員であり、株式会社VALCREATION代表取締役の藤村雄志氏からは、「本キャンプの活動自体に社会性を持たせることを重視しております。社会的な団体との接点はあるようで案外ないのが実態かと思いますので、そのような団体とのつながりを作るという意味でも本活動を活かしていただきたい」と挨拶があった。
アサヒキャンプOBであり本キャンプ実行委員長を務める竹岡哲郎氏からは、「朽木の豊かな自然に囲まれながら、次世代リーダーには何が必要なのか、先生の講義や様々な議論を通して大いに学び、コミットメントをする良い機会にして欲しい」という激励があり、プログラムは講義へと移っていった。

 

 

企業は〝経営者品質〟で決まる

参加者は様々なプログラムを通じて自分自身を見つめ直す

1日目は、ゲスト講師として新将命氏に登壇いただき、「勝ち残る企業創りの原理原則」をテーマに〝経営〟の原理原則についての講義が行われた。

 

新氏の講義のポイントは、長寿企業作りのための〝黄金のサイクル〟を回そうということだ。

 

 

「経営者品質が向上すれば、社員品質も向上する。社員品質が向上すれば、商品・サービス品質も向上する」というように、経営者品質からスタートしたサイクルは、最終的には顧客満足、社会満足、業績、株主満足へとつながっていく。

 

そのサイクルの始まりである経営者品質を高めるためにはどうすれば良いのか、について学びを深めた。

 

新氏は、中でも経営者品質において特に重要な〝情熱〟について強調した。情熱にも型があり、自分で情熱の火を灯すことのできる人、人の力がないと火を灯せない人、などに分けられる。良い経営者を目指すのであれば、自ら火を灯し、それを他人にも点火していけるようでなければならない。
更には、新氏の提唱する4つの「ジンザイ」について、それぞれどのように活かし育てていけばよいのか、具体的に教わった。「理想の〝人財〟とは、リーダー人財である」としたうえで、最初にやるべきことは「自分自身がリーダー人財になることだ」という教えに、参加者は一層身を引き締めていた。

 
新氏の講義後は、「中江藤樹と近江商人」というテーマで、近江聖人中江藤樹記念館館長である富永氏の講義が行われた。

 

朽木の森があるここ滋賀県高島市は、陽明学の祖と言われる中江藤樹を産んだ地として有名だ。陽明学はのちに滋賀県出身の近江商人へも多大な影響を与え、特に近江商人の経営理念である「三方良し『売り手良し』『買い手良し』『世間良し』」の精神は現代企業のCSRの源流とも言われている。
陽明学の提唱する考え方やその行いが、どのように近江商人を活性化させたのか。そして現代経営にどのように活かしていくのか、について学びを深めた。

 

自然の中で自分と向き合う、内省のとき。

 

中庭で行われたバーベキューの様子

講演終了後は、中庭にてバーベキュー。そして電灯一つない真っ暗な森の中でキャンプファイヤーが行われた。

 

暗闇を照らす炎を囲み、満点の星が天井から見守るなか、参加者一人ひとりが自分自身と向き合っていた。
1日目のプログラム終了後は、2日間ともに学ぶ仲間との懇親を深め、夜は更けていく……。

 

 

細かい規則はいらない。基準は「Be gentleman」

2日目は、ゲスト講師として弁護士の蒲俊郎氏に登壇いただき、「リーダー論とリスク管理」というテーマで講義が行われた。
蒲氏はIT・インターネット・ベンチャーの企業法務を専門とする弁護士として、上場企業3社を含む多くの企業の社外監査役を務め、企業コンプライアンスの最前線で活躍されている。講演活動は様々な企業で行っているようだが、今回は本キャンプ用に新しく資料を準備され、新氏の著書「王道経営」を元に、法的観点から見たリーダー論についてお話しいただいた。
お話しの中でも特に、コンプライアンスの定義について重点が置かれた。

 

コンプライアンスを〝法令遵守〟と訳すのは古い、と蒲氏は強調した。法令遵守は当たり前であって、組織規範・規則、社会倫理など、コンプライアンスには様々な要素が含まれている。それを〝法令遵守〟と訳してしまっては、「法令さえ守っていれば良い」と考える経営者がでてきてしまう。実際、その解釈により様々な不祥事が起きた。

 

 

それでは、コンプライアンスとは何か? 蒲氏が見つけた答えは「Be gentleman」だった。これは「Boys, be ambitious」で有名なクラーク博士の言葉であり、直訳すると「紳士たれ」という意味だ。

 

細かい規則を一つ一つ覚えるのではなく、私はgentlemanだと言う行動を心がければ、不祥事は起こさないもの。コンプライアンスを難しく考えるのではなく「Be gentleman」という基準で経営を行って欲しい、と蒲氏よりアドバイスがあった。

 

 

講義の様子

そして、2011年に起きたオリンパス事件の際、代表取締役就任後早期解任にあったマイケル・ウッドフォード氏の言葉が印象的だと紹介があった。

ウッドフォード氏は「家族に言えないことをするくらいなら、社長の首などいらない」と言い切ったそうだ。

 

法律や規則を一つ一つ覚えるのではなく、「Be gentleman」・「家族に言えないことはしない」という2つの基準で経営を行っていれば決して不祥事を起こすことはない、という言葉に、参加者も深く頷いていた。

 

 

蒲氏の講義後は、1日目に引き続き新氏の講義が行われた。

「企業を伸ばすリーダーの条件」というテーマで、理想のリーダーとなるために必要な能力とその高め方について学びを深めた。

 

1日目で学んだ理想の〝人財〟となるために必要不可欠なスキルとマインドについて深堀し、リーダーとしてあるべき考え方や言葉がけなどについても具体的に教わった。

 

最後に、新氏から成功するためには方程式がある、それは「成功=(スキル+マインド)×情熱×運」である、とお話しがあった。そして「将来の自分は今日からの自分の結果である」という言葉に、「これからの行動で未来をより良くしていこう」と参加者の熱気は一層高まっていた。

 

 

次世代リーダーへの一歩を踏み出す

森での散策の様子

昼食後は、全体で総括と決意表明が行われた。

 

参加者からは、

「新先生から教えていただいた、8褒め、2注意を実践すべく、もっと社員を誉める努力をします」、

「ダメな経営者の部下、その家族は地獄を見るということがよく分かりました。自身が経営者になった時にはきちんと原理原則を実践して良い経営者になりたい」、

「自身も弁護士だが、コンプライアンスは法令遵守だけではないということをどれだけ理解し、お伝えできていたか、深く考えさせられた。もっと学んでいかねばと感じた」、

「若くしてこれだけの学びを得られるこの環境は本当に幸せだと感じる。次世代育成のためにも次は社員を参加させたい」という非常に前向きなコミットメントが次々と発表された。

 

 

最後に竹岡実行委員長からは、皆様から頂いた支援金は次世代を担う子どもの教育へ活用いたします、と感謝の言葉があり、2018年の開催も前向きに考えていきたい、とお話があった。

 

 

次世代リーダーズキャンプ2017は、素晴らしい先達からの講義、キャンプファイヤー、仲間と触れ合う懇親会、森の散策など、様々なプログラムを通して自身を見つめ直し、次世代リーダーの在り方を考え、今後の目標やアクションをコミットメントする。経営者や若手リーダーにとっては非常に有意義な場であったと感じた。

 

主催:次世代リーダーズキャンプ実行委員会
お問い合わせ先:事務局(株式会社VALCREATION)
連絡先:03-5766-3871
メール:info@jisedai-leader.com