オビ 企業物語1 (2)

中国新車時代到来で日本企業にチャンス! ‐ 中国自動車製品業界連合会 路志光氏

◆取材:綿抜幹夫

14_Bukan01武漢雅連自動車電子商品有限会社/社長・中国自動車製品業界連合会/秘書長路志光氏・右上…現在急ピッチで建設工事が進められている武漢国際オートショップセンター(2014年10月オープン予定)右下…完成後のモデル

武漢に一大オートショップが出現。東京(大手町)でプロジェクト説明会も開催

経済発展の著しい中国では今、自動車産業が急成長を見せている。中でも、2014年10月にオープンした武漢国際オートショップセンターは、中国最大級の規模を誇る一大拠点として、国内外から大きな期待を寄せられている。同センターができたことで、日本企業の中国進出に新たなビジネスモデルが作られることになるのだろうか。中国自動車製品業界連合会路志光秘書長(事務総長・会長職に相当)に話をうかがった。

 

自動車専門総合商業施設・武漢国際オートショップセンターがオープン

中国という大きな国のマーケットがどう動くかについて、アジアのみならず、今や全世界が注目していることは間違いがないだろう。あれだけの人口を抱える市場は多くの国々にとって魅力的なフロンティアそのものであり、様々な予測や投資、調査が水面下で日々、行われている。

そんな中、中国内陸部の大都市・湖北省武漢市に、大規模な国際オートショップセンターがオープンすることが明らかになった。名称は武漢国際オートショップセンターである。
「武漢のオートショップは中国最大の規模を誇ります。この建物の中に、JP国際オートショップセンターを作ります。これは中国以外の企業に出店していただくフロアです。高い技術力をお持ちの日本の中小企業の皆さんにもそのオートショップに来ていただいて、お互い提携して発展していきたいと願っています。このオートショップには大きな特長があるんです。それは政府が直接コントロールしていること。車の事業は中国ではまだ新しい分野ですが、マーケティングや生産のバランスは政府が考えています」

 

中国自動車製品業界連合会の路志光会長に話をうかがう。中国自動車製品業界連合会は中国政府機関であり、中国交通部の方針に従って、ここから自動車関連商品や管理システム、自動車部品などに関する最新情報が中国全国に発信されることになる。
「武漢は内陸部の都市ですが、中国のさまざまな主要都市までだいたい5時間で行ける交通至便の場所です。そのため中国では『5時間経済圏』という言葉もあるくらいです。空港から約20キロ、車で30分ほどでしょうか。また現在、港を整備中でして、早ければ今年末あるいは来年初頭には整います。国際海運の船が揚子江を遡ってきて直接入って来られるようになります。港からの距離は約50キロです」

 

約750億円の予算をかけて建設される一大商業施設である。全7階建ての各フロアには、様々な自動車部品を販売するテナント、オフィス、飲食街、大駐車場が完備され、また同じ敷地内に高層ホテルまで併設されている。5階フロアが外国企業のためのVIPオートショップであり、現在、車製造メーカー、車関連商品メーカー、車関連卸問屋、車修理メーカー、車関連人材育成機関、車部品メーカーの出展者を募集中だ。

「カー用品の販売では日本大手企業とも、現在、着々と業務提携の話が進んでいます」

 

 

日本企業は今までなぜ中国進出に失敗してきたのか

中国といえば、大企業であれ、中小零細企業であれ、これまで多くの日本企業が事業拡大や新規巻き直しをめざして進出してきた国でもある。しかし、成功よりは失敗して撤退する事例のほうがずっと多いことは明らかである。どうしてそうなってしまうのか。

「むろん、それぞれの企業によって事情は異なるでしょう。大企業はともかく、中小企業の場合、資金力の問題が一つあると思います。資金が十分でなく、大きな宣伝ができるわけでもありません。私はいろいろな日本の中小企業と付き合ってきたし見てきましたが、技術水準は申し分ないと言っていいと思います。ただし中小企業が中国に入ってこようとした場合、中国の企業を納得させる手段が欠けているように思われるケースが非常に多い。中国の企業が納得できなければ、中国の消費者も納得させることはできません。信頼を得るのがたいへん難しいのです」
個々の企業のリサーチ不足、マーケティング不足もあるだろうが、時期も良くなかったのではないかと路会長は語る。

「今までの10年というのは、中国はいわば溜め込む時期でした。この10年の中国の発展は投資と輸出によるものであり、消費の時代ではなかった。日本企業がいかに良い商品を作っても中国でなかなか売れていない要因は、もしかしたらそこにもあるかもしれません。しかし今後は違います。これからこの国は消費の時代になります。だから、これからが大きなチャンスなのです」

 

来るべきWIN─WINのために

これまでとまったく違う、中国と日本の産業界の関係。それはいわば、WIN─WIN関係の構築である。飛躍的に伸びていく中国の消費のトレンドの中に上手に乗っていくことで、疲弊した日本の中小企業にも、突破口になる可能性が出てきたのである。

「日本企業の失敗の要因の多くが、中国の事情をよくわかっていないことにあったと思います。コストばかりかけ、遠回りしてなかなか目標に近づくことができない。消費者に近づかない。コストばかりかかるから、当然、撤退するしかありません。お客さんと直接交流するチャンスがないのですから。中国の販売業者と日本の技術者、メーカー、どう交流するか、そのシステムがそもそもできておらず、パイプがありませんでした。我々のプロジェクトでは、そうしたパイプを作りたいんです」

具体的には、武漢国際オートショップセンターに出店すると即、中国自動車製品業界連合会に会員登録される、という形でのサービスが発動する。

 

「我々、連合会の会員になってもらうことで、中国の会員と取引ができるようになります。会員同士のコミュニケーションや取引がスムーズに運びます。日本の会員と中国の会員が交流しやすくなるんです。現在の計画ではおよそ800社にオートショップに参加してもらうつもりでいますが、全社、連合会の会員になっていただきます」

このビジネスモデルが、従来の日本企業の中国進出の形といかに違っているかは一目瞭然だ。今までは単独で船出するか、日本の商社が探していたビジネスパートナーと組むか、そのくらいしかルートがなく、しかもそれは多くの場合、信頼に足るものではなかった。それが業界団体に加盟することで、自動車関連のあらゆる情報の交換や人材交流、商談などが各段にやりやすくなるのである。しかもそれが中国政府を後ろ盾として行われるものであるとすれば、これほど安心のシステムはないだろう。

 

「今までの日本企業は、バラバラに中国に来ていました。だから、直接中国の消費者と係わりたくてもなかなか前に進まない。今の私たちの考えは、大きな連合会の中に日本の企業も中国の企業も参加させて、連合会全体からコントロールする、というものです。そうすることで日本製品は消費者の手許に行くようになります。私たちは日本企業についてのすべてのアフターサービスを行います。中国に来たらお客さんを探しますし、商標登録なども含めて、全力のサポートを惜しみません」

ビジネスパートナーとして、中国の企業と日本の企業が手を携えることのできる時代が、いよいよやってきたようだ。日本の製造業が復活できるかどうか、その重要な試金石の一つが、確かにここにある。
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左上…連合会の全国名車レースのイベント記念写真
右上…連合会の毎年の例会の様子
左中…中国の車業界最初の仕入れ時のセッション記念写真
右中…海外での国際会議の調印式の記念写真(路会長)
下…武漢視察団とトヨタ店長との記念写真

オビ ヒューマンドキュメント

武漢雅連自動車電子商品有限会社
中国武汉・硚口区解放大通667号
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中国汽车工业协会汽车后市场分会会长

※この記事は2013年11月号の記事を再構成したものです