オビ 企業物語1 (2)

元大手証券マンの挑戦

注目のIFAでモラルある証券ビジネスを

株式会社アンバー・アセット・マネジメント/代表取締役社長 友田行洋氏

 

オビ ヒューマンドキュメント

OLYMPUS DIGITAL CAMERA株式会社アンバー・アセット・マネジメント/代表取締役社長 友田行洋

「モラルのない収益至上主義がつくづく嫌になったんです」。元大手証券マン・友田行洋氏は過去の仕事を振り返り、そう告白する。

同氏は2014年、30歳のときに前職を辞め、株式会社アンバー・アセット・マネジメントを創業、現在はIFA(独立系金融アドバイザー)として資産運用のコンサルティングを行っている。

個人投資家の間でにわかに注目を集めるIFAは、果たして日本の土壌に定着するのか。

同社の取り組みを追いながら、証券ビジネスの未来を占う。

 

 

 

IFA(独立系金融アドバイザー)とは?

老後のための資産運用、あるいは相続や事業継承対策、そうしたお金にまつわる不安や悩みがある場合、誰に相談するだろうか。即座に「IFA」と答える日本人はまだまだ少ないであろう。

 

IFAとは「Independent Financial Advisor(独立系金融アドバイザー)」の略で、銀行や証券会社などの金融機関に属さず、中立的な立ち場から個人投資家に資産運用のアドバイスを行う専門家を指す。

銀行や証券会社、特に実店舗を持たないネット証券と提携し、株や投資信託などの購入を取り次ぐ金融商品仲介業者である。今、個人投資家の間では、このIFAににわかに注目が集まっている。

 

「証券会社との大きな違いは、彼らはあくまでセールスを行う営業マンですが、我々は資産運用のプロとしてコンサルティングを行うという点です」

 

そう話すのは株式会社アンバー・アセット・マネジメント代表取締役社長の友田行洋氏だ。同氏は大手証券会社の富裕層向け資産コンサルティング業務に従事したのち、30歳の若さで独立、同社を立ち上げた。

 

「自分たちの売りたい商品を勧める、それが営業マンです。いっぽう、IFAは金融機関の意向に縛られないため、お客様に商品を押しつけることはありません。

株や債券、投資信託、ときには不動産購入など、さまざまな選択肢の中からお客様に適した解決策をご提案しています」(友田氏・以下同)

 

 

アメリカで主流となったIFA

amber03紀尾井町本社外観

もともと日本では有価証券を扱えるのは証券会社のみに限られていた。

しかし、「貯蓄から投資へ」のスローガンを掲げた当時の小泉内閣主導のもと、2003年に証券取引法が改正され、金融商品取引業者以外でも有価証券売買の媒介などが行えるようになった。

それが日本におけるIFAの始まりである。

 

現在、個人投資家の数は1000万人とも2000万人とも言われている。

2014年に少額投資非課税制度(NISA)が開始されたことなどを背景に、翌年5月には個人向け金融商品の代表ともいえる投資信託の純資産総額が初めて100兆円の大台を突破。

金融庁が長年唱えてきた「貯蓄から投資へ」の流れがいよいよ動き出したとも言え、そうした潮流がIFAの台頭を後押しする。

 

「2008年に楽天証券やSBI証券などの大手ネット証券がIFA業者を活用したサービスをスタートさせたことも大きな転機となりました。

この頃から日本でもコストを抑えつつ、中立的な立場でアドバイスが行えるようになり、現在の土壌が出来上がったと言えます」

 

日本証券業協会によるとIFA業者は2016年1月現在で820業者が登録し、約3000人が活動しているという。

その数は9年前と比べて1.5倍に増えている。しかし、IFAの活躍の場はまだまだ少ないと同氏は語る。

 

「日本は欧米に比べてIFAの普及が20年以上遅れていると言われています。投資信託の購入経路におけるシェアは日本では銀行と証券会社が99・7%、IFAは0.3%に過ぎません。

しかし、アメリカではIFAが約6割を占め、逆転しています。日本でも遅かれ早かれ、そうした状況が必ず訪れるものと思っています」

 

 

利益相反する収益構造

なぜ、アメリカではIFAが主流となったのか。その答えは大手証券マンという華々しい経歴を捨ててまで起業した同氏の動機を知ると見えてくる。

そして、それは証券会社の収益構造上の大きな問題点とも言えるだろう。

 

「証券マンとして育てていただいた会社なので悪く言うつもりはありません。しかし、収益至上主義の競争に飲み込まれ、まったくモラルのない仕事をしていたことも事実です。

朝、職場に行けば、ホワイトボードに『何時までにいくら』というノルマが書き出されていて、その商品をひたすら売りつけていく。

お客様にとってリスクはどうなのか、その商品が本当に生活に適しているのか、そうしたことは一切関係ありませんでした。

 

証券会社は個人投資家の利益よりも、取り引き回数をいかに増やし、会社にとっていかに収益を上げるかを優先します。それは自分を信じて投資してくださったお客様に対する裏切り行為にも感じました。

さらに、3年前後で担当が変わるため、どんなにお客様が損失を出そうともモラルが働かない状況が生まれやすいのです。

 

入社した頃はお客様に喜ばれる仕事がしたいと思っていたはずなのに、まったく違うことをしている自分がつくづく嫌になり、辞表を提出する決意をしました」

 

amber04緑が望める紀尾井町本社応接室

証券会社が個人投資家よりも有価証券の発行を依頼してくる企業の味方をするのは当然の帰結である。

企業側がよりいい条件での発行を望めば、個人投資家側の条件は悪くなる。証券会社と個人投資家の関係性は収益構造上、必ず利益相反するのである。

そうしたことから、アメリカの個人投資家たちは証券会社からIFAへと流れていった。

 

「個人投資家の皆さんが求めていることは商品の提供ではなく、ソリューションの提供です。日本では資産運用と言えば、銀行や証券会社に相談するのが一般的ですが、IFAの存在が広く知れ渡れば、そちらへシフトしていくのではないかと思います」

 

 

資産運用が失敗する1つの理由

同社は月に一度、投資信託セミナーを開催している。毎回30〜40名の参加者が集まり、その半数がその後の個別面談に申し込みをするという。

驚くことに、ほとんどの相談者が初回の面談時に財産目録を持参するそうだ。つまり、それだけセミナーを通じて同社を信頼した証である。

いったいセミナーではどんなことを話しているのか。

 

「証券業界の裏側を全部お伝えしています。資産運用で儲かる理由は人それぞれですが、損をする理由は明らかなんです。それは銀行や証券会社がその方に不釣り合いなリスクやコストの商品を無理やりねじ込んでいるから。

そういうカラクリを2時間かけてお話しすると、皆さん、とても頷いて共感してくださいます。

短期間で担当者が変わるから信頼できない、売るときだけ一生懸命でフォローがない、手数料目的で商品を強要されるなど、個人投資家の方たちは銀行や証券会社に対して多くの不満を持っていることがよく分かります」

 

 

生活者の夢と理想を守るために

初回の面談ではヒヤリングに徹する。

生活の状況、月々の収入と支出、現在の運用状況、そもそも資産運用をする目的は何なのか、そうしたことを事細かにヒヤリングしたあと、社内で証券、不動産、タックスプランニング、保険、相続など各分野の専門家とディスカッションを行う。

そして、2回目の面談時に現状分析したレポートを渡し、その顧客にあった改善案を提案する。

 

amber02日経マネー30周年特別シンポジウムにて

「私たちは2世代3世代にわたっておつき合いをする前提で応対するため、お客様に顔向けできないことはしません。

当社に相談に来られるお客様は50〜80代の普通の生活者の方が大半で、皆さん、大きく儲けたいというよりも、老後などのためにどうしたら現状の資産を減らさないようにできるかと悩まれています。

将来の夢や理想のために大切なお金の最適な運用方法を時間をかけて見つけていく。当然、手間隙という意味ではコストがかかりますが、実は扱う金額は証券会社時代に比べて大きくなりました。

なぜなら、『これを買いませんか』と勧められて出すお金は、その方の財産の一部分でしかありません。しかし、私たちのやっていることは人生設計そのものをサポートし、お財布をまるごと預かる仕事です。

責任は重くなりますが、その分のやりがいを感じています」

 

さらに顧客から「ありがとう」と感謝されることも大手証券会社時代には味わえなかった経験だという。

 

「以前は営業マンでしたから、お客様に何かを買ってもらえば、こちらから『ありがとうございます』とお礼を言っていました。でも、今はお客様から感謝されることがとても多いんです。

お手紙をいただいたり、手土産をくださったり、会えて良かったとおっしゃっていただけたり、お客様に喜ばれる仕事ができていると実感しています。そういう意味でもIFAの会社を立ち上げたことは間違いでなかったと思っています」

 

 

 

同氏にはIFAそのものをさらに日本で広めていきたいという思いがある。それは「2人の被害者のため」と同氏は語る。

 

「証券会社を信頼するあまり、資産を有効に活かせないでいる個人投資家の方たちが一番の被害者です。ただ、証券マンたちが収益至上主義に苦しんでいることも事実です。

IFAという形で証券マンとしてもっと別の働き方があることを示し、彼らが活き活きと活躍できる場を作っていけたらと思っています」

 

証券業界のモラルの欠如に疑問を持ち、IFAの道を選んだ同氏。

果たして日本の証券ビジネスにおいてIFAは新たなる秩序を生み出すことができるのか。同社の動向とともにIFAの今後に注目していきたい。

 

 

オビ ヒューマンドキュメント

●プロフィール

友田行洋(ともだ・ゆきひろ)氏…東京都杉並区生まれ。東京理科大学工学部建築学科卒業後、大和証券株式会社に入社し、富裕層向け資産コンサルティング業務に従事。2011年~2013年、社長賞表彰を計8部門獲得する。特に金融資産運用、タックスプランニングに強みを持つ。2014年、株式会社アンバー・アセット・マネジメントを創業し、現在に至る。公益社団法人 日本証券アナリスト協会検定会員(CMA)。

 

●株式会社アンバー・アセット・マネジメント

〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-31 クリエイト紀尾井町ビル12階

TEL 03-6380-9755

http://ambercorp.co.jp

 

 

 

◆2016年10月号の記事より◆

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