人口減少や高齢化で地方の労働力不足が課題になる中、東北と北陸地方を中心に中小企業の採用を支援する広済堂HRソリューションズ。企業が簡単に求人募集できる採用管理サービスを提供、DX化を進める。東北と北陸に拠点を置き、きめ細かな営業とサポートが強みだ。2022年5月には秋田県能代市と地域活性化包括連携協定を結び、能代市の企業と人材のマッチングにも乗り出した。広済堂HRソリューションズの大山洋介社長に展望を聞いた。

 

 

「地域創生HR」を掲げ、地方企業の課題解決を支援

――「地域創生HR」を掲げ、地方の中小企業の採用支援を進めています。地方企業にはどんな課題がありますか。

 

魅力的な企業がたくさんありますが、多くが人手不足に直面していると感じます。日本全体で労働力人口が減少していますが、特に地方の労働力が不足しています。高齢化が進むスピードも速い。しかし、地方には製造業をはじめ魅力的な企業がたくさんあるのです。たとえば、積極的に企業誘致を進める工業団地に行くと、環境の素晴らしさに圧倒されます。企業の採用ニーズと人材のマッチング比率を高め、地方で働く人を増やしたいと考えています。

 

――広済堂HRソリューションズではどんなサービスを提供しているのでしょうか。

 

当社はもともと東北と北陸地方を地盤とした求人情報誌「Workin」を制作・発行してきました。現在は、紙とウェブ両方で展開しています。地方ではまだ紙媒体が強いのが現実ですが、紙の求人情報誌だと手に取る人はその地域の人に限定されてしまう。ウェブは全国の求職者に情報を届けることができるメリットがあります。

 

さらにここ数年最も注力しているのが、HRテック事業である採用管理システム「TalentClip(タレントクリップ)」です。採用のトレンドは求人広告だけに頼らず、自社のホームページで集めるダイレクトリクルーティングが主流になりつつあります。TalentClipは簡単に自社の採用サイトが作成できるためすぐに求人募集できます。募集情報は外部の求人検索エンジンにも転載されるため、地元だけではなく全国の求職者に届きます。また、応募があった求職者情報をシステム内で管理できることも特長です。

 

採用管理システムの他にも、人材紹介・人材派遣、人材採用代行サービスや、特定技能を持つ外国人人材を育成し、人材紹介するサービス等も展開しています。こういった周辺事業も含めて求人メディア、人材紹介・人材派遣・外国人人材管理ツールなど、TalentClipを軸とした各種DXツールの提供による事業展開を進めています。

 

 

地方企業と伴走してDXを進めていく

――HRテックは競争が激しい業界です。強みをどう打ち出していますか。

 

当社の強みは東北と北陸に拠点を持っていること。東北では5県に営業所を置いています。このためサービスを提供した後も、顧客企業がシステムを使いこなせるための伴走や、地方人材のリスキリングも支援します。地域の中小企業にとってDX化を進めることは簡単ではありません。システムを提供して終わりではなく、取引先の企業が自走できるまでサポートすることが重要だと考えています。

 

――大山さんは広済堂ホールディングスに入社するまでどんなキャリアを歩んできたのでしょうか。

個人向けの営業職を4年ほどした後、ITベンチャーやHR領域の上場企業で、営業や企画、新規事業の立ち上げ、事業責任者などを経験し2017年に当社に入社しました。

前職は首都圏でHRの仕事をしてきましたが、今度は地方の人手不足の問題に取り組みたいと思ったのです。私自身は東京出身ですが、親族は全員秋田に住んでいることも影響しています。

 

 

秋田県能代市と提携し、「地域創生HR」の実現を目指す

――今年5月には秋田県能代市と地域活性化包括連携協定を締結しました。「タレントクリップ」を能代市内の企業に無償で提供し、労働力不足の解消につなげます。ゴールは何でしょうか。

 

能代市は古くから木材産業が盛んな町です。また、能代市を含め秋田県全体が風力発電に力を入れ、自然エネルギー産業も活発です。能代市を管轄するハローワーク能代の有効求人倍率は2022年6月現在、2.01倍と17カ月連続で前年同月を上回り、労働力不足が顕在化しています。一方で能代市は失業率も高い。雇用のミスマッチが生じているのではと思っています。

 

具体的な施策としては、市を通じて企業にタレントクリップを無償で提供し、採用ホームページの作成や、企業に応募した人材管理に役立ててもらいます。求人募集から人材のデータベース化まで一気通貫で行うことで、企業の採用力を強化します。また、Uターン、Iターンを希望する人に向けて移住・就職説明会も能代市と共同で開催します。

 

――今後、事業をどう成長させていきますか。

 

当社は「地域創生HR」を掲げています。地域創生HRのポイントは、地域の強みを見出して継続的な経済活動をHR視点から促進することと、地域企業や働く方々にできるだけ多くの選択肢を提供すること、そして付加価値を提供して地域を活性化することです。

 

まずは能代市での取り組みで定量的な成果を出し、他の自治体との連携も進めていきたいと考えています。また、今はコロナ禍の影響でなかなか難しいですが、日本で働くことを希望する外国人人材と地方企業のマッチングも力を入れたい領域です。

 

HRテクノロジーで地域の企業に新しい価値を提供できれば、これほどうれしいことはありません。