オビ 企業物語1 (2)

飲食店経営からITベンチャー企業の社長へ

「顧客管理の大切さを伝えたい」最新マーケティングツールで中小企業の売上拡大に伴走

 

toBeマーケティング株式会社/代表取締役CEO 小池智和氏

 

オビ ヒューマンドキュメント

 

toBe_koike1990年代、インターネットはあっという間に世界中と日本に広まり、同時にビジネスの世界も大きく変貌した。

今やどんな業界においてもネットユーザー対策が必須となり、マーケティング手法は次から次へと生まれている。

 

しかし、ビジネスの現場にネットとITが浸透し、営業活動の自動化が当たり前となっても、企業に市場を見る力と顧客管理能力が必要であることは変わっていない。

 

マーケティングで最も重要な「顧客管理」にフォーカスし、マーケティングオートメーション「Pardot(パードット)」の導入と運営コンサルティングで中小企業のIT化を推進する、

toBeマーケティング株式会社・代表取締役CEOの小池智和氏に、マーケティングのIT化による中小企業のビジネスの未来を伺った。

 

 

時代の変化が生んだ必携ITツール

toBeマーケティング株式会社が行っているサービスは、株式会社セールスフォース・ドットコムが提供するマーケティングオートメーション(以下MA)「Pardot(パードット)」の導入・運営支援と顧客関係管理(以下CRM)コンサルティングだ。

 

MAとは、メールやSNS、ウェブサイトを利用して、企業のマーケティング活動を支援するITツール。

インターネットを利用している見込み客の動きを、問い合わせや注文の内容、SNSでの投稿から把握し、メールフォームの記載内容、またはサイトに訪れたIPアドレスを読み取り、見込み客(顧客情報)を集める。

ウェブ解析やメール配信を自動化して行うことができるため、定期的なフォローメールや、行動やターゲットに合わせたダイレクトなマーケティング活動を、効率よく行うことが可能だ。

 

問い合わせフォームやメルマガ登録等で見込み客を集める方法は以前から行われていたが、ネット通販やソーシャルメディアの利用率が高くなったことにより、MAは急速に開発された。

日本でも2015年から企業のMAの導入件数は増え始め、日本で開発されたMAも多い。同社が設立したのも、MAの導入企業が増え始めた2015年の6月だ。

 

これらMAなどのITツールは、生活の変化があったから生まれたツールであり、中小企業が営業活動を行う上で必携のツールであると、同社代表取締役CEOの小池智和氏は言う。

 

「ツールは使えるようにならなくては意味がありません。我々は、MAツールである『Pardot』を使いこなし、よりマーケティング活動を効率的に行うためのコンサルティングサービスを行っています」

 

同社のサービスを受けている登録顧客数は、設立1年半の現在340社。急成長のITベンチャー企業だ。

 

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同社エントランス

 

 

挫折から転職。IT知識ゼロからIT起業

MA導入とCRMコンサルティングを行っている同氏は、最初からIT企業での経験があったわけではない。

「パソコンスキルはゼロでした」という同氏がIT企業の社長となるまでには、人生修行のような紆余曲折があったという。

 

「でも、経験したことは今の事業に全て繋がっています。いろいろな問題はありましたが、関わった全ての集大成が今の事業です」

 

同氏が初めて起業したのは、大学在学中。バイト三昧だった学生時代、アルバイト先の旅行会社が倒産し、当時の社長から顧客名簿を受け継いだ。

その顧客名簿を元に、大学を中退して旅行会社を創業する。譲り受けた顧客名簿のおかげで、事業は順調だった。

 

しかし25歳の時、会員となっていた青年会議所のメンバーからキャバクラの経営を打診され、「若気の至り」で受けてしまった。

風俗業が一晩で稼ぎ出す金額が同氏の経営眼を狂わせたのだろう、並行して経営していた旅行会社を廃業させてしまう。

 

大学中退の末の事業失敗。ここで同氏は企業で社会人経験を積もうと、リクルート社へ派遣社員として入社。

パソコンスキルがゼロにも関わらず、顧客データベースやマーケティング支援の営業を行うこととなった。

元々事業を行っていた経験もある上に営業力もあることは大きな強みだ。50人の営業社員の中でもトップクラスの営業成績となる。

 

その後リクルート社から分社独立した企業へ転職。

情報通信提供サービス事業の開発を任されるようになり、企業向け顧客情報管理の最大手企業へ引き抜かれた。

 

「でも、顧客管理と顧客分析の大切さを伝えたいと思い、独立を決めました」

 

「Pardot」の導入販売だけではなく、顧客管理にフォーカスしたコンサルティングや支援も行う同社の設立には、学生時代に譲り受けた「顧客台帳」への思いがあるという。

 

 

顧客管理の大切さを伝えたい

MA「Pardot」の中核となる機能は、顧客管理を最大限に活用するマーケティング業務の自動化だ。

見込み客のメールアドレスや企業名や個人名などのコンタクト管理の他、ウェブサイトへのアクセス履歴、滞在時間、メールの開封などの行動履歴まで記録することができる。

メールの自動配信やターゲットに合わせたダイレクトマーケティングも可能だ。

 

しかし、顧客名簿の項目内容は、店舗に来た見込み客情報や、アンケートに回答した顧客の声、店舗での行動履歴など、紙の台帳で管理していた時代から変化していない。

インターネット上から抽出するデータに変わっただけである。そしてMAは、この顧客名簿をどう使いこなすかの分析までは自動化できない。

分析を行い、マーケティング計画を立てるのは、IT化が進んだ今でも人間の力であると同氏は言う。

 

「私は、最初からIT事業を始めたいと思って起業したわけではありません。顧客台帳と管理の大切さを伝えたいと思ったからです。最初に顧客管理ありきなのです」

 

同氏の言う顧客台帳とは、学生時代に倒産したアルバイト先の社長から譲り受けた、紙で保管されていたアナログ顧客台帳だ。

「最初受け取った時は『これをどう使えばよいのだろう』と思いました」

 

しかし中を見ると、そこには顧客の名前や住所などの他に、いつ申し込みがあったか、利用頻度、家族構成、企業情報などびっしりと書き込まれていたという。

自分が創業した旅行会社で、この台帳に書いてある項目を参考に営業をすると「あっという間に10件すぐに契約がとれてしまったのです」。

それは、顧客台帳の持ち主である前社長が、この顧客台帳を使ったマーケティング活動、つまりCRMを行っていた証であった。

 

「顧客管理の大切さを痛感しました」

 

この経験と思いが、同社が行っているサービスへと繋がっている。

 

 

IT化で変わる? 翻弄される中小企業

生活のIT化が当たり前になってから、企業活動にはテクノロジーが必須となった。

 

「人の生活が変わったから、マーケティングはIT化せざるを得なくなったのです。

本来はアナログでも良いはずなのですが、アナログのままでは健全な企業活動ができなくなっている時代です」と同氏は見解する。

 

欲しいものがある時は、インターネットの検索サイトやSNSで探し、ネット上で注文する。

ウェブで発信しなければ、誰にも見つけられず、集客することもできなくなっている時代なのだ。

 

しかし、中小企業にとってIT化は高い壁。

昔からのマーケティング手法へのこだわりや、変えられない伝統的な販売手法により、効率の悪い営業活動を続けている企業も多い。

また、ITの知識があり導入しようとしても、今度は導入費用が高額であるうえに、ITの専門家がいないというネックもある。

導入したとしても、中小企業の情報システム担当者は初心者や他の業務との兼任者である場合が多く、本来の機能を使いこなせないまま高額な月額料金を払い続けている企業もある。

 

このような問題が潜在する中、同氏が始めたサービスが、顧客管理と顧客分析、マーケティング活動を支援する同社独自の「伴走活用支援」だ。

 

「MAは、中小企業でも大企業と同じマーケティング活動ができるツールです。もっと多くの中小企業に広まって欲しいと思っています」

 

 

使えるツールとしてITを広める

「今は、インターネットで発信しなければ、誰にも見つけられない時代です。せっかく良いものがあるのに、IT化ができないため見込み客を集客できないというのはもったいないことです」

 

このジレンマを、MA「Pardot」と同社のサービス「伴走活用支援」が解決すると同氏は言う。

 

このサービスは、導入コストが抑えられている他、アウトソーシングをしなくても自分たちでMAを使いこなせるようになるための支援だ。

その結果、MAで集めた見込み客の行動を分析し、企業は自分たちの力で、効率的な営業活動を行うことができる。

つまり、「伴走活用支援」を受ける企業は、顧客台帳を使いこなし、大企業と同じようなマーケティングを学ぶことと同じなのだ。

 

小池氏の思いである「顧客管理の大切さを伝える」というビジョンの下、創業1年半で顧客数340社へと広げてきた。

来年度はスタッフを増やし、登録企業を800社に広げることが目標だという。

 

「マーケティングで困っている中小企業は本当に多いのです。日本全国に『Pardot』の導入支援を行なっていきたいと思っています。

広げるための手段として上場も考えていますし、私のビジョンに共感して広めていただける企業があれば、売却も考えます。

上場や売却も、ビジョンを広めるための手段だと考えています」

 

 

企業の10年後の生存率は5%だと言われている。

中小企業が事業を継続していくためには、時代が求めるマーケティングを行い、集客し、販売していくしか方法はない。

 

押し寄せるIT化の波に翻弄されている企業を、顧客管理の根本から支援するtoBeマーケティング。

同社が推進しているサービスは、ITツールの使い方をレクチャーしているのではない。

中小企業が大企業をも凌駕する、顧客管理の知恵と技術のレクチャーなのだ。

 

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社員の皆さんと社内風景

 

 

オビ ヒューマンドキュメント

●プロフィール

小池智和(こいけ・ともかず)氏…1972年9月1日 埼玉県上尾市生まれ44歳。1990年、専修大学商学部在学中に旅行会社を設立するも、平成不況の煽りを受けて倒産。社会経験を積む目的で入社した株式会社リクルートで、顧客データベースの販売やマーケティング支援を行い、営業成績はトップを収める。その後、株式会社ネクスウェイ、株式会社セールスフォース・ドットコムを経て、2015年6月toBeマーケティング株式会社を設立。代表取締役CEOに就任。

 

●toBeマーケティング株式会社

〒103-0023 東京都中央区日本橋本町1-9-13 日本橋本町1丁目ビル4F

TEL 03-6262-6316

https://tobem.jp

 

〈福岡オフィス〉

〒812-0015 福岡県福岡市博多区山王1-1-24 グリュックハイム山王公園前703

 

 

 

◆2017年3月号の記事より◆

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