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東立電機株式会社 モノづくり立国の復活を旗印に、目黒の地から飛躍を誓う若き3代目の挑戦!

◆取材:加藤俊 /文:小川心一

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DSC_2469 (1280x853)東立電機株式会社/代表取締役 加藤貴久氏

今や『目黒』と言えば、おしゃれな住宅地のイメージが強い。事実、様々な企業が行っている『住みたい街』ランキングを見ても、目黒や中目黒が上位にランクイン。そのブランドバリューは高い。しかし、そんな目黒区が昭和40年代までは大田区、品川区と並ぶ工業集積地だったことをご存じだろうか。

 

その目黒で、ものづくり立国ニッポンの復活を目指して奮闘する会社が、東立電機株式会社だ。産業用・工業用ヒーターのメーカーとして発展する東立を率いる、若き3代目社長・加藤貴久氏が、その熱き思いを語った。

 

実は工業地帯だった目黒区

目黒区は知る人ぞ知る工業地域だった。工業集積のピーク時には、機械の大田、電気の品川・目黒を合わせ『城南3区』と称されていたほどだ。

 

ところが、中心となった電気機械工業は、弱電関連が主体であり、高い開発・設計力は要求されなかった。そのため、経済環境の変化に対応できるだけの力を有する企業がほとんど育成されず、自立的な地域産業基盤の形成には至らなかった。また、公害に対する規制の強化や宅地化によって徐々に目黒区の工業は衰退していった。

 

そんな目黒区にあって、70年以上の歴史を誇る老舗ヒーターメーカー東立電機株式会社。現社長・加藤氏は父親から会社を引き継いで就任3年目を迎えたばかり。

 

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「ヒーターを作って約50年。業界としては老舗の部類に入ります。その間培ってきた長年の経験が弊社の強みです。短納期や、どんな無理難題にも応えられるだけの経験を積んできました」

 

実際に利便性の良さが顧客から評価されているのだろう。売り上げも安定。事実、長い不況も乗り越えてきているのがその証左だ。

 

「ヒーターという業界はお取引先の裾野が広い分あちらが悪くてもこちらがいいという場合が多くて、好不況の波を受けにくいんだと思います。しかし、長い目で見ると先細りの傾向が見受けられます。顕著に表れているのが、アジア諸国の攻勢です。従来アジア諸国といえば、大量生産というコスト面の強みはあったものの、品質の点ではまだ日本に一日の長がありました。ところが、近年市場の流れが変わり、小ロットの商売にも確かな品質を引っさげて、進出してくるようになりました。我々の産業用や工業用の市場にも彼等の足音が聞こえるようになりました。うかうかしてはいられません」

 

では、そうした諸外国からの攻勢に対して、東立電機はどんな手段で対抗しようとしているのか。

 

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「国内生産をやめる気はありません。ただ、価格面だけを見られてしまうと勝負になりません。そこで弊社では納期を売り物にすべく画策しております。通常4週間はかかるようなものでも、2週間で上げる。超短納期に特化するわけです。また、ある程度ルーティーンでやっている仕事については数も納期も見えているので、OEM生産にシフトしコストを下げるようにしております」

 

長い歴史の信用と実績に胡坐をかいてしまえば、いかな優良企業でも生き残ることが困難な時代。新生東立電機の挑戦は続く。

 

 

攻めの経営で売上高倍増を目指す!

30代の若さで社長に就任し、先代の影響の強かった会社を徐々に自分色に染め変えて、やっと自分なりのビジョンを従業員にも示すことができるようになったと言う加藤氏。今年、いささか大胆とも思える宣言を社内に発令したとのこと。

 

「私は間もなく42歳になりますが、年商を45歳までに2倍にしようと社員に発表しました」

よく言えば安定した、悪く言えば成長性の乏しい会社を、一体どのようにして倍以上の規模に押し上げようというのか具体案があるわけではないと言う。ただ答えが見えなくとも、現状に甘んじてしまう空気を払拭するためには中天を突くが如き狼煙を上げる必要があるのが経営というもの。

はたして本業のヒーターに注力して達成するのか、あるいは別に売上の柱を立てるのか。ヒーターの市場が今の社会情勢で大きく伸びるとは思えないと加藤氏は言うが……。

 

「いまやれることを着実にやっていきます。会社として生産性を高めるべく、従業員のレベルアップに取り組んだり。社内で勉強会を開くようになりました。これが好評なんです」

 

もちろん社内の改革、スキルアップだけで倍増が困難なのは百も承知。そこで加藤氏が朧ながら光明とみているのが、国外の存在だ。

 

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海外メーカーとのタイアップを更に進めていくつもりです。私は以前3年ほどアメリカに留学していました。それもあってもともと異文化に対する抵抗はないんです。ところが、社長になってからは舵取りの難しさに直面して、どうしても守りに入ってしまうところがありました。自分本来の性格である外に打って出る姿勢に欠けていたというか。それがまずいと想えるだけの余裕がやっと最近でてきたんです。きっかけは私が日頃参加しているBNI(世界最大の異業種交流組織)のシンガポールツアーに参加したことでした。日本から出て、海外のビジネスパーソン達と交流する中で、自社の年商を倍にできるという熱意を抱くようになりました。これからは様々な事業にも手を伸ばすつもりです」

 

 

そしてモノづくり立国再興のために

加藤氏の目には、自社の発展の先に見据えているものがある。地元目黒が再び工業の活力を取り戻すこと。そしてモノづくりの将来に関してだ。

 

「目黒はもともと工業の町でしたが、今や住宅地としての評価の方が圧倒的に高いです。でも私はもう一度、この目黒を工業の町として知らしめたい。これは大田区や品川区に対して、少なからず対抗心があるのかもしれませんね(笑い)。目黒区の地域としてもっているブランドバリューを工業にも活かしたいんです」

 

そしてもっと大きく日本の製造業全体の発展をも願っている。

 

「日本の製造業復活に微力ながら貢献したいですよ。『ものづくり日本』の名をもう一度世界に轟かせたいんです。そのためにもモノづくりの楽しさを多くの方に知ってもらいたい。私は現場の仕事もやるのですが、そのときはたいがい素手で機械を扱います。当然油まみれになります。でも、そんなことが気にならないくらいモノづくりは楽しいんです。この面白さを皆さんにぜひ知ってもらいたいんです。

 

今時は皆さん汚れることを極端に嫌いますよね。でも、物を作っていれば必ずあちこち汚れるものです。本当にモノづくりをしている人が見れば、仕事の上の汚れ方か、単なる不精な汚れ方か、その違いが分かるものです。物作りの代表としてしっかり物申すのが私の役目だと思うし、物申す事が出来るよう、モノづくりを通して、世の中の皆さんに色々な事を発信していきたいです」

 

志は限りなく大きく、理想はどこまでも高い。目黒から始まる『モノづくり日本』の反転攻勢に活目せよ!

 

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加藤貴久(かとう・たかひさ)氏

東立電機株式会社代表取締役。

96年入社。10年代表取締役就任。

 

●東立電機株式会社

〒152-0011東京都目黒区原町2-14-15

TEL03-3716-3181

http://www.toritsudenki.co.jp/

 

 

町工場・中小企業を応援する雑誌BigLife21 2013年12月号の記事より

町工場・中小企業を応援する雑誌BigLife21 2013年12月号の記事より