本稿は、去る2月6日に行われた

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「プロフェッショナルの日」制定イベントのパネルディスカッションから切り出して編集したものです。

今回は福澤知浩さんへの質問を通して、モノづくりのプロフェッショナルとは何かを明らかにしていきます。

福澤知浩氏

 

岡本:福澤さんはモノづくりのプロフェッショナルです。前職は、新卒でトヨタに入社され、調達関連セクションなどでご活躍されました。そして、トヨタ在籍中に立ち上げられたのが、空飛ぶクルマのプロジェクトです。それをいよいよ事業として実現するために株式会社SkyDriveを設立されました。今、2020年東京オリンピック・パラリンピックの年にデモフライトを実現することを目指して、活動されています。

株式会社みらいワークス代表取締役社長岡本祥治氏

 

プロフェッショナルとは何か、どうしたらプロになれますか?

 

福澤:プロフェッショナルになるための準備が必要だという話もありますが、私は前職が大企業だったこともあり、その中で日頃感じていたことは準備だけで終わる人が結構いたということです。準備だけして、本番をやらない。ひとつ資格を取ったら、また次の資格を取るといった人が、周りには多かったですね。

 

個人的には、プロというとその人ならではの考え方、仕事の作法といったものがあって、それらを前提に、その領域でみっちりとしたトレーニングを積み、一回型を完全に身に付けます。プロとは、その上で自分の道を作っている人だと思っています。

 

岡本:トヨタにいたときプロだなという人はいましたか?

 

福澤:何人もいました。現場改善のプロや、プロジェクトをまとめるプロなど様々です。例えば、改善のプロにまかせると、社内でいちばんピカピカの生産ラインを造るといったものです。プロと言える人は、基本となる型を徹底的に修得し、そのうえでカリスマ性を持っていました。その合体技が完璧な人ですね。

 

岡本:トヨタの中では、これだったらだれに聞けばよいとか、暗黙の下馬評みたいなものがあって、プロは認知されていたのでしょうか?

 

福澤:そうですね。たとえば、素材で言えば、樹脂のプロ、鉄のプロ、アルミのプロ、加工でいくと切削のプロなど。仕事の進め方では、下の人をその気にさせるプロ、上の人に気に入られ話を通すプロなど、非常に多様です。

 

この人はプロだと思う人は?

 

福澤:要素はいっぱいありますが、前提となるのは、徹底的に学ぶということです。学ぶというのも実は難しくて、自分の思い込みを捨て去って謙虚になり、学んだことについては、教えて頂いた方に喜んで感謝を伝えるといった態度が必要だと思います。また、技術や知識にしても体系的に学んでいかないと、中途半端なレベルで判断してはダメだと思います。そういう、いろんな観点から見た学ぶ力がある人だと思います。

 

プロになるため心掛けたことは?

 

福澤:自分としては、頑張ることはやらない、モチベーションが必要なことはやらないというのが結構大事だと思っていました。モチベーションが必要なことは、モチベートしないといけないので、意識的にモチベーションを湧かすのが結構大変なのです。そこで、「勝手にやりたくなることをやる」ことに拘りました。

 

人生のキャリア選択においては、父親がサラリーマンで楽しそうだったのでその影響を受け、自分もサラリーマンになりました。トヨタで3年新規事業系をやっていたときは楽しかったのですが、異動してから「サリーマン向かんな」と思いました。サラリーマンはモチベーションがないとやっていけない。そういった中で、一方では新規事業をやっている人達や、経営者と会っていると、こっちのほうが頑張れると思って起業しました。多くの方々から「起業して大変ですね」と言われるのですが、身体的にも、精神的余裕から言っても、今のほうが圧倒的に楽です。

 

岡本:自分を生かせる、楽しい場所を見つけられたということですね。

 

福澤:そうです、わざわざ自分でモチベーションを沸かせる必要が全く不要な所に来ました。圧倒的に楽かつ、俄然面白いです。

 

プロになれる人の傾向、なれない人の傾向は?

 

福澤:プロになれる人の共通点は、自分の領域に関する圧倒的好奇心があること。好奇心があれば、自ずからモチベーションが湧いてきますし、結果的に行動するし辛抱強くもやる。もう一つは、意識を分散しないということ。あれもこれもではなく、絞ることが重要です。これと決めたらガガガガっとやる。あとは、先ほどの学ぶ話からもつながりますが、上手くコミュニケーションして教えてもらうことが大事だと思います。素直に吸収して学ぶ、コミュニケーションして感謝を伝えて、好ましいサイクルが回る。その、サイクルが回らないパターンがプロになれないパターンだと思います。

 

失敗体験はありますか?

 

福澤:大きな失敗体験というより、小さい失敗はいっぱいしてきています。相手との約束をどれだけ守れるかが重要なわけですが、有言実行をしないことで、お客様の期待を裏切る。忙しかったり、たまたま忘れていたり、期待を裏切る時の状況は様々ですが、まあいいかと約束を反故にしていたら、小さな話でも、積み重なると恐いです。気づいたら信用がなくなり、大きな反動が後でどんと返ってくる。

 

さすがに、今は独立して厳しい現実が身に迫っているのでそういう事はないですが、鬼気迫ることがあまりないサラリーマン時代はそういった体験はありましたね。

 

岡本:そういったときリカバリーはどうされるのですか?

 

福澤:信頼を取り戻すためには、その方のためにひたすらやりまくるしかないです。すぐに返事して、すぐにやって、驚くようなものを出しまくる。これを3か月くらいやると、また信頼が元にもどるってくる。期待以上のことをやり続けて挽回するしかないと思っています。

 

 

 

福澤 知浩 (ふくざわ ともひろ) ※モノづくりのプロフェッショナル

 

東京大学卒業後、2010年にトヨタ自動車に入社。調達部の一員として、100ヶ所、1,000回以上の現場出張を行ない改善活動に従事するほか、数百人規模のプロジェクトも統率。また、購入部品のバイヤーとして調達戦略の立案・実行にも携わり、関係各社とともに担当部品で世界最安のコストを実現。2017年に福澤商店株式会社を設立。トヨタ生産方式を基本とした現場改善や経営コンサルティングを30社以上で行い、内2社では役員として参画。トヨタ在籍時代に有志で始めた『空飛ぶクルマ』の開発活動『CARTIVATOR』の共同代表を務め、開発加速のため2018年に株式会社SkyDriveを設立し、代表取締役に就任。