◆取材:橋本雄太 /文:菰田将司

井上和幸 株式会社経営者JP 代表取締役社長・CEO 

 

「マネジメント人材育成が遅れている」と言われて久しい日本。多くの企業が経営幹部人材の枯渇に頭を抱えている中、経営者の育成にいち早く注目している企業がある。今回はクライアントにベストな経営チームの提供を目指す株式会社経営者JPの井上和幸代表取締役社長・CEOに話を伺った。

 

経営人材のコンサルティングを担うスタッフに必要なのは、ブレない「軸」

「“ヘッドハンティング”という言葉は嫌いなんです」と株式会社経営者JPの井上和幸代表は話す。

「当社4事業のうち、現在の主軸となっているエグゼクティブサーチ(幹部クラスの人材紹介)は、一見シンプルに見えて、その本質は非常に奥深い仕事です。企業を背負う経営者を相手にして、成果を出していかなければならない。『とにかく人を紹介すればそれでいい』と考えている人がこの業界にもいますが、それではクライアント経営者の役に立てるということはなかなか難しい。だから自社のコンサルタント採用には常に細心の注意を払っています」

エグゼクティブサーチコンサルタントは、クライアント企業が本質的にはどのような会社でありたく、どういう歴史と精神・価値と使命を持っているのかを正しく理解し、共鳴し、その上でクライアント企業を率いる経営チームをプロデュースするのだという気持ちをブラしてはいけない、と井上代表は語る。

 

2000年代以降、日本企業にも「プロ経営者」と呼ばれる人々が現れるようになった。創業一族や内部からの生え抜きではなく、全く他企業から招聘されて会社の舵取りに着手するプロの経営者。彼らは様々な企業を渡り歩きながら、その見識と手腕をもって業績を上げているが、時に旧経営陣と対立し、乞われて登場したにも拘らず、社を追われることもある。

米アップルコンピュータ副社長から日本マクドナルドホールディングス株式会社の代表取締役副会長兼CEOに抜擢され、更に株式会社ベネッセホールディングスへと移った原田泳幸氏や日本ゼネラル・エレクトリック代表取締役会長兼社長兼CEOから住生活グループ(現LIXIL)代表執行役社長兼CEOになった藤森義明氏などはメディアからも注目されたプロ経営者だったが、就任以前からの問題を刷新することができず、辞任に追い込まれている。

 

ある面それだけ難しい仕事であるとも言えるエグゼクティブサーチを実行するコンサルタントを採用していくにあたって「重要なのは『軸』」と井上代表は話す。

 

「人それぞれに積み重ねてきたキャリアがあり、目標がある。それがその人の『軸』になっている。エグゼクティブサーチコンサルタントには、大なり小なり、自分が仕事をしてきた中で培われた、あるべき企業観や組織観、リーダー像がある(それがないならば、そもそもこの仕事はできない)。かくあるべしという自分の信念、『軸』がブレなければ、たとえ困難に直面しても突き進むことができる。ただ“お金になれば”“稼げれば”とだけ考えているならば、小手先の対応や無理押しするなどして、結果的に上手くいかないし長続きしない。実際に企業経営者と話をしていく時に、自分なりの本質的な『軸』がないとコミュニュケーションをとることはできません」

 

「経営」できる人が不足する時代になる

株式会社経営者JPではエグゼクティブサーチ事業(経営幹部層の紹介)、コンサルティング事業、経営者・リーダー向けのセミナー事業、イベントの主催やコンテンツ販売を行う会員事業を運営しており、2030年までに「日本およびASIAにおける圧倒的NO.1エグゼクティブサーチファーム」「日本NO.1の経営者会員数を誇るプラットフォームカンパニー」「21世紀型経営者教育におけるNO.1カンパニー」「経営者関連の現場情報・実務知見を最大に保有し発信する、NO.1専門メディアカンパニー」(会社HPより)を目指している。

 

「経営者に対し、自社メディアも用いて積極的に有益な情報を発信しています。今、日本には経営幹部である『エグゼクティブ』層が少ない。ですからどこの企業も経営できる人材と情報を喉から手が出るほど欲している」

 

井上代表が新卒社会人として第一歩を踏み出したのはリクルートだ。

リクルートへの入社は1989年。世がバブル景気にうかれ日本経済が世界を動かしていた時代だった。同期入社が848人にもなったという井上代表は、人材開発部や広報室、社会人教育関連新規事業などの部署を経て、2000年に一度リクルートを離れる。

 

「リクルートの同期が90年代半ばに起業していた人材コンサルティングのベンチャー企業に参画しました。そこでちょうど紙からネットへの移行が進む中で、大手企業向けの新卒採用総合支援サービスを立ち上げました」

 

ここで経営陣として自社の経営・組織作りにも取り組んでいた井上代表が直面したのが「自社の幹部候補の不足」という問題だった。

 

「会社は70人ほどの規模にまで拡大しました。事業を進めながらメンバーを集めていると、新人・中堅メンバーについては良いスタッフを集める手段があるのですが、幹部については当時、自分たちの人脈以外の手立てが全くなかったのです。どうやって探そう、といつも考えていました」

 

その時の問題意識〜幹部層の採用ニーズが日本企業にも出現している〜が次の事業に繋がることになる。

それと同じことを考えていたのが、井上代表の古巣リクルートだった。誘いを受けた井上代表は2001年に立ち上げられていたリクルート・エックス(現リクルートエグゼクティブエージェント)に転職する。

 

「90年代末にYAHOO!や楽天などの、後にメガベンチャーと呼ばれるようになる企業が次々と興り、かなりのスピードで伸びていっている。自分たちのような小ぶりのベンチャーもあふれんばかりに次々に登場し、少なからずのベンチャーが成長、組織拡大しようとしている。それなのに『経営』や『マネジメント」ができる人材の供給源がなかった。だからこの問題はもっと大きな課題になっていく。チャンスだ、と思いました」

 

リクルート・エックスで様々な企業の幹部採用に携わることになった井上代表は、同時に会社幹部を外に求めることへの抵抗を無くすプロモーションもしなければならないと考えた。

日経ビジネスと組んでスタートした企画は、転職して社長になった人にライブトークに登場いただき、そのインタビュー内容を収録して記事にするというもの。プロの、雇われ型の社長を汎く知ってもらう。2006年にスタートしたこの企画は好評を受けて異例の長期連載となり、場所を東洋経済デジタルへと移し、さらには主催をリクルートエグゼクティブエージェントから経営者JPに移管し2011年まで足掛け5年に及ぶものになった。

 

エグゼクティブ層の人材を育てる

株式会社経営者JPを立ち上げたのは2010年。誰を採用しマッチングするかだけでなく、その前提として、経営チーム、幹部チームをどのように編成するのが望ましいのか。採用するのか、社内の幹部候補を育成・抜擢するのかなども総合的にコンサルティングしていく必要がある、と考えた結果の起業だった。

 

「柿落としで行った新宿NSセンターでのセミナーには90人ほども集まってくれました。私自身も講師として『これからは顔が見えるリーダーの時代、セルフブランディングが重要な時代』とメッセージしました。その後も創業直後からリーダーシップ、経営戦略、話し方などのほか食べ方やフィジカルトレーニングなどについての講座やワークショップを展開しました。その流れは現在まで、お陰様で続いており、硬軟取り混ぜた実践型のセミナーのファンの方々も当社の大事な顧客基盤となっています」

 

現在社員20人ほどの経営者JP。

 

「『質・量・スピード』は経営に必要な要素です。しかし、拡大成長を目指しつつも、膨張しないようにだけはここまで留意してきました」

 

アベノミクス効果を経て、日本の企業倒産件数は10年連続でマイナス、2018年は8235件となった(東京商工リサーチ調べ)。しかしその内の後継者難や求人難などの人手不足による倒産件数は400件。これは2013年の調査開始以来最多を更新しており、特に中小企業では人材確保が重要な経営課題になっている(同)。

 

「外部から新しい経営者を迎えることによって、内部の者では気づかなかった新しい施策が生まれることもある。私たちも望ましい経営チーム創り、幹部採用や役員育成などを提供するため日々研鑽と研究を続け、自社のスタッフ採用と育成にも注力していますし、クライアントとの関係にも注意を払っています。また私たちは独自の経営人材ネットワークを持ち、社長・経営者だけでなく顧問人材の紹介など多様な要望に対応できるようにしています。経営の新しい方法として、『プロ経営者』を求めるという選択肢も考えてもらいたい」

 

プロ経営者の活躍により業績をV字回復したというニュースが紙面を飾ることも多くなった現代。後継者不在に悩む経営者への救いの一手として、経営者JPの事業活動を担うコンサルタント人材たちの更なる活躍と体制拡充が期待される。

 

 

株式会社経営者JP
代表者 代表取締役社長・CEO 井上和幸
設立 2010年
資本金 1000万円
TEL03-6408-9700
E-mail info@keieisha.jp
住所東京都渋谷区広尾1-16-2 VORT恵比寿Ⅱ 6F
ネットワーク・提携 KEIEISHA JP ASIA
コーポレートサイト:経営者JP
https://www.keieisha.jp/
会員制サイト:KEIEISHA TERRACE
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経営者JP総研
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