有限会社ビー・テップ取締役・営業部長深町吉三氏(スケールウォッチャー開発者 ドールマン氏と)

 

「待つ商売なんです。攻めて行き、そして待つ」。有限会社ビー・テップ取締役・営業部長深町吉三氏は、そう言って商品に自信を示す。彼の提案する商品は日本中の工場・ビル・飲食店から住宅まであらゆるものがターゲットになる。環境保全が急務の今、多くの業界から注目されるその技術について伺った。

 

設置するだけで設備の改善が図れる!

群馬県太田市に本社を構える有限会社ビー・テップは、油水分離装置や配管内の水処理装置といった設備改善装置を開発販売している会社だ。

「これらの分野でお客様に有益なテクノロジーを提供しています」と話すのは、同社の取締役・営業部長を務める深町吉三氏。同社の創業者でもある。

 

「私は以前、配管内の流量を調べる超音波流量計を販売する会社にいました。配管流量は年に何回か調べる必要がある。配管の中がサビや付着物で狭くなり流量が減ってしまうと、設備に様々な不具合が起こってしまうからです」

しかし検査のたびに毎回配管を分解するわけにはいかない。それで外部から超音波を当てて検査する装置が、超音波流量計だ。

 

「超音波流量計にはドップラー方式と伝搬時間差(トランジットタイム)方式の2つがあります。当時、トランジットタイム方式が日本では主流だったのですが、この方式は配管内にサビが多いと超音波が届かず、正確に測れない。だから管の中を掃除する時期を選んで計測していました」

しかしそれだと時期が限定されてしまうし、何より正確さに疑問が残る。そこで登場するのがドップラー方式の流量計だ。それを海外、特にアメリカから輸入販売していたのが深町氏だった。

深町氏はその後1999年3月に独立、有限会社ビー・テップを創業する。

深町氏は続ける。

 

「弊社がオランダから輸入・販売としているものに『スケールウォッチャー』があります。これは配管内の水に含まれるカルシウムやシリカなどの成分、そして発生し付着するサビを電磁場を利用して軟化除去してしまう装置です」

これらの不純物やサビは普通、人の手で清掃したり、洗浄剤などの薬剤を混合することによって除去している。しかしその作業は手間もかかり、薬剤費も年間数百万円にも達する場合がある。

しかしスケールウォッチャーを設置すると、薬剤などを使わずにスケール(堆積物)を軟化除去し常に管内をクリーンに保つことができる。大幅なコストカットを実現できるのだ。

 

「装置の取り付けは簡単。今使われている配管の外側から取り付けるだけ。それだけで既に溜まっているスケールも除去することができます」

空調設備に使われるクーリングタワー(冷却塔)は、このスケールウォッチャーを設置するだけで水の使用量も50%~80%と大幅に削減することも同時に可能となる。

樹脂生産工場の冷却設備のトラブル防止に導入 スケールウォッチャーINDシリーズ

試してもらってからではないと売らない

「大型の発電所では大量の水を使用していますが、やはり配管の中のサビが問題になっている。しかしこの装置を使うことで配管の寿命が伸びて、傷んだ配管を交換する必要もなくなるのです」

この効果を多くの人に実感してほしい、と深町氏は話す。

「3ヶ月から6ヶ月間使ってもらえば、確実に効果は実感できると思います。ですからまず試してもらい、それから改めて本格的に導入してもらっています」

それだけの期間でも明らかに差が現れてくるので、それを感じてもらいたい。逆に、テストしてもらわなければ販売しない、とも深町氏は言う。

商売として積極的ではないのでは?という疑問に「この商売は『待つ商売』です。攻めて行って、待つのです」と深町氏は笑う。

 

「私は元々が営業マン。営業が売る商品は、目先の利益だけを得るのではなく、まず効果を感じてもらい、そして次に繋がる商品でなくてはならないと思います」

その姿勢が各所で評価され、利用者が紹介で広まっているのだという。

また、そのお試し期間中でも消耗品の費用などは利用者に請求するという。

 

「無料でお試し、となると本気でチェックしてくれない。適当に使って、無料期間が過ぎたら『よかったけど、もういいよ』とポイされる。だからしっかり費用を払って吟味してもらいたい」

敢えて自らを厳しい評価にさらすことで価値を高める。深町氏のその姿勢が支持を集めている。

チラーの冷却効率改善のため導入された スケールウォッチャーIEシリーズ

 

廃油処理に革新的新技術

「弊社のもう一つの主力商品が油水分離装置『B-COS』です。工場や飲食店など、油を使う場所には必ず廃油を処理する装置があるのですが、多くの場合、油は水やゴミと混ざってしまっていて、再使用することができない」と、深町氏は語る。

現在、日本の産業廃棄物は総量3億8703万トンにも及び、そのうちの44%は廃油と、油を泥化した汚泥で占められている(2019年、環境省調べ)。

例えば飲食店のキッチンにはグリストラップという油を集める装置があり、そこに集められた油はゴミ・水と分けられ、油は処分・廃棄に、その他は下水管に流れ込んでいく。しかしこの装置は簡易的なもので、集められた油は水と交じって腐り、悪臭を発生し、さらにそれが下水管に流れ込んで管を詰まらせ、設備の故障を招く。

 

「なので油は凝固剤を使って固めてしまっている場合が多いのですが、それだと汚泥として産業廃棄物処理するしかなくなってしまう。油分を抽出してリサイクルさせることができないのです」

そこに油水分離装置「B-COS」を使用すると、水と油の分離を促進して油分のみを回収、下水道や設備に油が流れ込むのを防ぐことができる。

 

「この装置にも薬剤を使用していません。油を固めずに回収します。だから産業廃棄物を少なくでき、また様々に再利用もできるのです」と話す深町氏。

当然、これらの技術について特許を持っているのかと思いきや、特許は一切取ってはいないと言う。

 

「特許を取得すると細かな技術や情報についても公開しなければならなくなる。しかしそうすることで大企業も動くでしょうし、二番煎じの不良品も出回るようになる。そうなってはこの技術そのものの評価が下がってしまう。そうなってはならない」

だからまずは弊社の商品の効果を感じてもらいたい、と言う深町氏の語気は強い。

食品工場に設置された油水分離機 B-COS

 

誇りは「クレームゼロ」

深町氏が電気系の専門学校を卒業後に就職したのは、大手音響メーカーのオンキョー株式会社。そこでスピーカーやステレオの営業をしていたという。1975年のことだった。

「技術職で働くこともできた思うのですが、営業職が性に合っていたのでしょうね。営業として良い成績を上げることができましたし、本社の企画会議にも参加させてもらいました。業界全体を見渡して、半年後・1年後にどんな商品が現れるのかを想像し、『この世にまだ無いもの』を考える会議は刺激的でした」

しかし入社して10年後、業界が大幅な転換期に入る。媒体がレコードからCDへと変化したのだ。「音楽をレコードで楽しむ、というのが好きだった。だからCDに変わった時、会社を辞めたのです(笑)」。

……深町氏に、今後の展望について伺った。

 

「長年、お客様に商品を提供してきましたが今までクレームを受けていません。それが弊社の誇りです。

またこれらの商品は設備の保全だけでなく環境問題にも影響を与える可能性がある」

ですからもっと多くの人に知ってもらい、活用してもらいたい。「今後は一般のご家庭にも普及していってもらいたい、と願っています」

相容れないものでありながら人の生活に不可欠な「水」と「油」。この2つをより良く活用できるようにする有限会社ビー・テップの商品には、環境を大きく改善できる可能性が秘められている。

鉱物油回収に導入された油水分離機

直径600㎜の配管にスケールウォッチャーコイル部を設置

 

深町吉三

群馬県伊勢崎市出身。専門学校卒業後、オンキョー株式会社に入社、営業職を務める。その後超音波流量計の販売を契機に、1999年に有限会社ビー・テップを創業。現在、同社取締役・営業部長。

 

有限会社ビー・テップ

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