サンアースソーラージャパン株式会社 太陽光パネルの世界的草分け、サンアースソーラー日本上陸

◆取材:綿抜幹夫

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写真左:サンアースソーラージャパン株式会社/代表取締役 野村敏子氏

写真右:サンアースソーラーパワー社/董事長 周 建宏氏

 

地球温暖化が叫ばれて久しい。その対策として再生可能エネルギーの開発と普及が、世界規模で進んでいる。牽引しているのは太陽光発電だ。その太陽光発電の国内市場が今、内外の並み居る有力メーカーらによって、熾烈なシェア争いの場と化しているという。

そこへきて今度は、中国から超大物が上陸だ。世界にその名を轟かすサンアースソーラーパワー(日地電力)である。そのサンアースソーラーが今なぜ日本に? 来日中の中国本社董事長、周建宏氏と、今年6月に設立されたばかりの日本法人の社長、野村敏子氏を直撃した。

 

 

過酷な環境下、条件下で培われた高度な技術力

─まずサンアースソーラー社について簡単にご説明ください。

 

周 私どもは1966年に創業しております。以来ずっと百年企業を目指した経営をしてきており、『太陽がある限り、お客さまのために発展し続ける』ことを理念に掲げ、幅広く社会に貢献してきたと自負しております。私どもの一番の特長はというと、他に類を見ない高い技術力と言っていいかと思います。というのも当初、国の機関としてスタートしたこともあって、常に完璧な品質、精密な製品づくりを義務付けられてきたからです。したがって優秀な人材を確保し、教育指導に心血を注ぐほか、最高度の設備を整えるなど、これまで研究開発には多大な予算を計上してきました。

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もちろん経営難に陥ったときも、一切リストラすることなく頑張ってきています。それはすなわち、人類が存続する限り会社を継続、発展させていかなければならないという経営者としての私の矜持でもあります。と同時に、ただ売るだけではなく、アフターサービスも未来永劫続けていかなければならないという自分への戒めでもあります。ちなみに私どもの製品は、中国本土はもとよりアジア、北米、欧州、アフリカ、豪州など世界中で稼動しているんですよ。

 

─今でこそ太陽光発電は様々なシーンで活躍していますが、そんなに古くから太陽光パネルに目を付けられたのは、どういう理由からでしょうか。

 

もともとが軍需やエネルギー政策など、国の施設や事業に資するためにつくられた企業だからです。中国は広いですからね。エネルギーを外部から供給するのが困難な場所が多くあります。そういうところの施設や家屋に電力を供給するには、太陽光発電がもっとも適しているんですよ。とはいっても当時の太陽光パネルを設置する場所はどこも過酷な環境でしてね。宇宙であったり、海洋のブイであったり、灯台であったりと。万一、故障でもあったらおいそれと補修や交換ができないような場所ばかりです。したがって故障は絶対に許されません。繰り返しになりますが、これが他に類を見ない、今日の高い技術力を生んだというわけです。

 

 

市場はもはや淘汰の時期に入っている

─現在、太陽光パネルは価格競争が激化しています。中国においても最大手企業が破たんする事態に見舞われていますが、このタイミングでの日本進出の理由は何でしょうか?

 

野村 おっしゃる通り、太陽光の業界では、昨年は最悪の1年と言われています。市場が飽和状態に陥ったためです。ですが、それでも市場規模は一昨年に比べて約30%も成長しています。問題は供給過多による価格破壊にあるのです。中国では助成金を目当てに、約千社もの企業が太陽光パネルに参入しています。これでは市場が混乱するのも当然で、今年は淘汰の時期に入っていると言っていいでしょう。確かに、こんなタイミングで何をいまさら日本へというご意見があるのは承知しています。弊社は古くからこの事業を行っているので、欧米はもとより、アフリカなどにも拠点を構えています。

ところが、こんなに近くの国なのに日本には拠点がありませんでした。これまでは日本の代理店を通じての取引をしてきましたが、弊社の考えや製品を、もっと日本の皆さんにご理解いただきたく、このたび日本法人を立ち上げたわけです。単に日本での『ブーム』を当て込んで来たわけではありません。太陽光パネルは使い捨て商品ではなく、私たちは一つの財産として捉えています。この出会いによってその財産を分かち合い、しっかり守っていこうということです。

 

─太陽光パネルの企業の多くが大変苦戦を強いられていると聞きます。世界最大手でも破たんする過酷なこの状況を、貴社はどう受け止めていらっしゃるのでしょうか?

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右上:中国通信局(1980年代)・右中:チベット 世界で一番高い駅・タングラ駅/標高5086m  ・右下:ドイツ アークホルン軍事空港/25MW ・左上:スペイン アルメリア 2008年当時世界最大級/24MW ・左中:イタリア ローマ空港/5MW ・左下:山形県初・メガソーラー

同じ業界の人間としては心を痛めていますが、弊社はメディアの皆さん同様、業界を取り巻く環境や、同業者の状況を客観的に評価しているつもりです。傾く企業には理由があると思いますが、他社についてそれ以上申し上げることはありません。弊社は弊社の役割をしっかり果たして、継続発展を目指すのみです。そのために常々大切にしているのが〝万無一失(失敗のないよう万全を期す)〟の精神でしてね。このパネル事業を通して、子々孫々まで繁栄するようたゆまぬ努力を続けていく覚悟です。

 

 

絶対の品質と万全の経営基盤

─先の震災で脱原発の機運が高まり、それまでの温暖化対策という大義名分よりもさらに進んだ再生可能エネルギーへの転換ですが、ますます競争が激化する日本で、貴社がシェア拡大をしていく上でのセールスポイントは何でしょうか?

 

大きく4点のポイントが挙げられます。まず第1は、弊社では製品の研究開発や製造技術の向上に多くの時間と費用を投じていることです。一つの例として、日本にも拠点を構える世界的機械メーカーに、太陽光パネルのセルと呼ばれる部分の生産ラインをオーダーメードで特注しています。こういったデザイン、こういった仕様でとお願いして作っているので、まさに世界で唯一のラインと言っていいでしょう。また、日本を代表する製作機械のメーカーにも弊社専用の機械をお願いしています。このように生産機械や技術を向上させることで製品スペックの差別化を図っています。いわば日本の技術が大いに反映されているのが弊社の製品というわけです。

 

─なるほど。製品の性能や品質に、絶対の自信をお持ちなんですね。では、2点目は?

 

第2は弊社の立地にあります。弊社は中国浙江省寧波市ハイテク区にあります。上海から南に車で3時間ほどのところです。海岸に面した都市で、中国でも一、二を争う貿易港です。四方を海に囲まれた日本と似た環境にある弊社は、他の中国企業、特に内陸部にある企業とは当然その環境が異なります。内陸部の企業では理解できない問題点、例えば湿気や塩害、台風なども、弊社なら充分経験の蓄積があるのです。

最近顕在化している問題としてPID現象があります。PID現象とは、高温多湿の環境で高電圧が流れるとモジュール回路内に電流漏れが発生し、出力が落ちる現象で、太陽光パネルの表面の強化ガラス、セル、バックシート、アルミフレーム等の相互作用によって起こると言われています。我々は老舗メーカーとして、この問題にも古くから取り組んできており、その長い使用実績からも出力維持には自信を持っています。

 

─おっしゃる通り、日本と気候風土の近いところにあるメーカーなら、問題点を共有できるメリットは大きいですね。では、3点目は?

 

第3は歴史です。弊社は約50年もの間、太陽光一筋できました。多くの企業が最近のブームに乗って太陽光パネルに参入していますが、弊社はまだ一般に普及する前から取り組んでいるのです。太陽光一筋の姿勢はこれまでもこれからも変わりません。他に流行りものがあったとしても決して参入などせず、これ一本を貫きます。目指すところは太陽光パネルのナンバー1だけです。ですから、弊社の技術は常に中国一と自負しています。

 

─洋の東西を問わず、多角経営と称してあれこれ手を出しては失敗し、『コアコンピタンス経営への回帰』を標榜する企業は枚挙にいとまがありません。その意味でも、本業一本の姿勢は大変ご立派だと思います。では、最後の4点目は?

 

第4は経営基盤です。弊社はこれまでただの1度も赤字決算を出したことがありません。健全経営が弊社の自慢であり、強味なのです。製品に『20年保証』などと謳ったところで、会社の経営基盤が脆弱ではその保証の担保がないに等しい。だから弊社は創業以来、一貫して百年企業を目指しているのです。

 

今後はPR活動も積極化

─2013年6月、日本に貴社現地法人が設立されました。早速この8月には、山形初の『東北おひさま発電』が貴社製品導入によるメガソーラー発電で売電事業を開始。貴社は素晴らしいスタートダッシュに成功しています。今後の日本における戦略をお教えください。

 

野村 日本における現在の太陽光発電ブームに頼るのではなく、長いスパンで成長発展していくことを目指しています。当面は中国本社からの太陽光パネルの輸入販売。そして太陽光パネルの不動産化です。それは土地所有者の遊休地有効活用として、50KW未満の発電を行う小口システム販売です。これは日本の制度上、50KW未満の売電が様々な面で有利だからです。まだ設立されたばかりの日本法人ですが、おかげさまで大口のお問い合わせも多数いただいております。長い歴史に裏打ちされた信頼とベストプライスで皆さまのご期待に応えていきたいと考えております。

 

─こう言っては申し訳ないのですが、日本での後発メーカーとしては、少し広報活動が足りていないように思われますが。

 

野村 中国には『美味しい料理は宣伝しなくても客が来る』ということわざがあります。弊社は商品の品質には絶対の自信がありますので、あまり積極的な告知活動を行ってきませんでした。ところがやはり、競合社の多い〝世界〟という視点から見ると、黙って何もしないでいたらなかなか広がっていかないのも事実です。そこで今回、本社から周董事長を招いて積極的なPR活動を展開することにした、というわけです。

 

─昨今は日中関係もギクシャクしておりますが、貴社の太陽光パネルが日中の懸け橋となることを大いに期待しております。

 

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●プロフィール

しゅう・けんこう氏…中国寧波市生まれ。太陽光発電の老舗、サンアースソーラーパワー社の董事長。その経営手腕で同社を世界的な太陽電池製造企業へと育て上げた。創立者の「太陽がある限り、私たちサンアースは未来の社会に貢献します。」をモットーに日々奮闘中。

 

●プロフィール

のむら・としこ氏…サンアースソーラージャパン株式会社・代表取締役。1987年に来日。日商インターライフ株式会社の社長室国際貿易担当を経て2001年に独立、教育事業を中心に幅広く活躍。サンアース社の企業理念に共感し、日本法人設立に参画、代表取締役に就任。

 

●サンアースソーラージャパン株式会社

〒102-0083 東京都千代田区麹町2-10-1 クレアーレ麹町705

TEL 03-5212-7835 FAX 03-5212-7836

http://sunearth-solar.jp
町工場・中小企業を応援する雑誌 BigLife21 2013年12月号の記事より