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株式会社ワイ・デー・ケー 会社のためなら敢えて苦言も呈する YDKの大久保彦左衛門

◆取材:綿抜幹夫 /撮影:寺尾公郊
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02_YDK01株式会社ワイ・デー・ケー/専務取締役・YDKコミュニケーションズカンパニー社長 八巻 信男(やまき・のぶお)氏…1946年生まれ。法政大学卒業。大学在学時より日本電気で働き、56歳で退職後はNEC子会社でその手腕を大いに発揮する。2008年、YDKコミュニケーションズ4代目社長に就任。2012年、株式会社ワイ・デー・ケー専務取締役昇進。(取材後、2014年6月18日現在、同社取締役副社長)

業績V字回復の次は、売上倍増3カ年計画の新ビジョン「YCV─50」の達成だ!

IT分野におけるモノづくりのトータルソリューションを提供する株式会社ワイ・デー・ケーにあって、お荷物カンパニーだったYDKコミュニケーションズを、たった5年で稼ぎ頭にまで急成長させた敏腕社長・八巻信男氏。

前回小誌(2012年5月号)にご登場いただいて以降も、その攻めの経営に翳りはない。売上、規模とも拡大を続けるその理由とは? そして、新たに掲げた経営ビジョン『YCV─50』とは何か?

災い転じて福となすための次の一手

02_YDK08同社外観

誰の心からも決して消え去ることがない大震災の記憶。特に被災者ともなれば、いまだに生々しい恐怖が甦ることもあるのだろう。だが、被災者だからと言って下を向いてばかりもいられない。むしろ大きな被害を受けたものとして、それをばねに飛躍を遂げてこそ、本当の復興と言えるのではないだろうか。

被災地・岩手県遠野市に本拠を構えながらも、震災後の復興をいち早く成し遂げ、新たなビジョンで会社発展を目論む八巻社長。自身が率いる株式会社ワイ・デー・ケーの社内カンパニー『YDKコミュニケーションズ』(以下、コム)に妥協はない。

 

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「近視眼的経営では会社の発展は望めません。先を見据えたあるべきビジョンを示さないと社員の士気も上がらないし、展望も開けない。目先の売上利益にこだわっているような会社はダメになるものです」

 

本体である株式会社ワイ・デー・ケーは、何とか利益は確保できそうだが、経営環境は依然厳しいものがあり、社内の各カンパニーに問題が山積している。その中にあって、コムは八巻社長の号令の下、飛躍の時を迎えようとしている。

 

「もちろん、いつもいつも遠い先だけを見ていては足元があやしくなります。今の積み重ねの上に将来がある。そこを間違ってはいけません」
株式会社ワイ・デー・ケーが社内カンパニー制の事業運営に移行して11年目。コムはスタートから6年間不採算事業のレッテルを貼られ、社内のお荷物だったが、今期の決算時には累損を解消する予定だ。八巻氏が先代社長に請われて4代目社長に就任したのが2008年。そこから奇跡的な巻き返しを図り、この5年の間、赤字を垂れ流すことは一切なくなった。NECで辣腕を振るい、その子会社を成功に導いた経営手腕がここでも遺憾なく発揮された結果と言っていいだろう。

そして、次の一手もすでに打たれている。

 

02_YDK06半導体関連装置組み立ての様子
02_YDK05電気検査…長年培った信頼の技術力と国際標準に基づいた検査で品質を保証
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02_YDK04セル生産や1人(多能工)生産方式により高い生産効率を実現。共晶(有鉛)と鉛フリーの組立ラインを完全分離し、50名を超える電子機器組立国家資格保持者が高い品質を作りこんでいる

「昨年2月、半導体製造装置最大手メーカー東北組み立て部門をメカトロニクスカンパニーから我がコムに移管統合しました。赤字だった組み立て部門を統合することで、固定費を圧縮し、スケールアップのメリットを求めたわけです。おかげさまで、短期間での黒字転換を果たすことができました」

コムの社員数はここ数年で倍増し180名となり、派遣等を入れると240名超の大所帯に成長している。着々とワイ・デー・ケー内での地歩を固め、その発言権は日に日に増すばかりだ。

 

 

会社発展のためなら、誰に対しても決して遠慮はしない!

こうして実績を積み上げることで、本体における地位も、常務から専務へと昇格。トップを目指せる位置に到達したと言っても過言ではない。 また、ワイ・デー・ケーからこの人がいなくなれば、経営が立ち行かなくなるのではないかと思うほど、理路整然と経営哲学をぶちまける。それだけコムでの実績を残したという自負があるからであろう。全社の経営課題についても、矢継ぎ早にポンポンと出てくる。

今、一番頭を痛めているのは、74人の技術者集団であるテクノロジーズカンパニー(八巻社長はコムの社長のほか、テクノロジーズカンパニーの事業も担当)のこと。市場の変化に加え、あるプロジェクトの失敗が大きな損失を抱えそうだからだ。現在はこの解決に、危機感をもって奔走している。 現状はあくまでも『大番頭』。それでも上のやり方や言い分に唯々諾々と従うほど、八巻社長はヤワではない。

 

「口を飾らず申し上げれば、全社的な成長が滞っている原因が私を含めた経営陣にあるのは間違いありません」

なるほど、これは手厳しい。しかし、事実として自らが社長を務めるコムにおいて、売上、利益、そして組織の拡大と、大きな貢献を果たしている八巻社長だからこそ言える『諫言』ではないだろうか。そして、その舌鋒はさらに鋭さを増していく。

 

「我がコムは充分にその役割を果たしているつもりですが、全社的に悪いんだからと、こちらにもとばっちりがくるわけです。ですが、それでは社内カンパニー制を敷いている意味がない。各カンパニーが切磋琢磨して予算を守ることこそ大切なのに、達成したところが出来なかったところの犠牲になるのは理不尽極まりない。『必ずしも予算は守らなくても…』なんて言われたら、死に物狂いでやってきた我々は立つ瀬がないじゃないですか。予算は神様なんだから、それを守らない経営はあり得ないはずですよ」

まさに歯に衣着せぬ率直な物言い。ここまで言い放って、他の取締役から煙たがられたり、あるいは疎まれたりはしないのだろうか。

「大口を叩く以上は、それに見合う実績を上げる。ただそれだけのことですよ。実際、お気に召さないならクビにしていただいて結構と堂々宣言していますしね」

 

立場に恋々としない人間ほど強いものはない。その上、腕が伴っているのだから、周りはぐうの音も出ないであろう。

「企業としてもっともやってはいけないこと。私はそれを『逆三本の矢』と呼んでいますが、『一、人を切る。二、賃金を減らす。三、昔話をする』。こうなったらもはや末期的な症状です。これでは会社がつぶれてしまう。私が来た当時の会社はこんな状況に陥っていました。私のモットーは、人(従業員)を何より大事にすることです。モノづくりとは人づくり。そして、お客様第一とは何もお客様にこびへつらうことじゃないんです。優れた従業員がいいものを作ってお客様に提供することこそ、お客様第一なんですから」

けだし至言である。

 

 

新ビジョン『YCV─50』とは?

業界を取り巻く環境は、想像をはるかに超えたスピードで変化を続けている。主要取引先である業界最大手・東京エレクトロン株式会社は、半導体製造装置およびフラットパネルディスプレイ製造装置をビジネスとする会社で、この分野でのシェアは、日本で第1位、世界でも第3位を誇る。そんなトップカンパニーですら、米国の世界最大手アプライド・マテリアルズとの経営統合を発表した。 この激しく変化する業界で勝ち残っていくために、コムは新たな経営ビジョンを高らかに掲げた。

02_YDK07YCV-50活動のロゴマーク

「今までは劣悪な環境、つまり人はいない・設備は老朽化する中で、誰もが想像できない『一流を目指して』というスローガンを掲げ、このコムを一流の会社にするんだと頑張ってきました。その甲斐あって環境整備は進み、2年前遠野の工場を視察されたお客様から〝もう一流ですよ〟と声を寄せられるほどに。この事を自信に、昨年4月から新ビジョン『YCV(ワイデーケー・コミュニケーションズ・ビジョン)─50』を掲げ、次のステージを目指してリスタートしました。このビジョンこそが、コムが勝ち残るための鍵であり、社内外に宣言するメッセージでもあるんです」

 

では、具体的に何を目指していくのだろうか。

 

「6年前、コムの売上は約13億。現在はそれが倍増して約26億です。営業部門ではこれを更に倍、50億を目指しています。製造部門はリードタイム10日を半分の5日に、購買管理部門はコスト50%削減を目標とします。これらを3年後には達成する。そういう強い目的意識を持って、コム全体を挙げて取り組んでいるところです。きっとやり遂げてくれることでしょう」

 

何とも高い目標を掲げたものである。だが、人も企業もぬるま湯に浸かっていては進歩がない。

「現在の厳しい経営環境の中にあっても、我が社は生き残らなければならない。いや勝ち残らなければならない。そのためにもQCD(Qは品質=Quality、Cはコスト =Cost、Dは納期=Deliveryを表す)がしっかりしないと話になりません。製造業はこのQCD三つの柱で成り立っているのですから。具体的な我が社の事例として、国家資格取得者による組み立てという同業他社との明確な差別化、強みを挙げています。昨年、国家資格である電子機器組立て技能士試験に13人が合格しました。これで特級~2級合わせて53人が資格取得者になりました。他社にない大きなアドバンテージと言えるでしょう」

高い志と、それをやり抜くための決意。こう言っては失礼かもしれないが、外様の助っ人である八巻社長の原動力はどこから生まれてくるのだろうか。

 

「先代社長に請われ、NECを62歳で辞めてここに来ました。何と言っても、大赤字の会社を何とかしなきゃいかんという強い思いがあったからです。人生終盤のステージで、新たなやる気と熱意を得て、今こうして成功を収めつつある。だからこそ、更にいい会社にしたいという意欲が湧いてくるんです。正直申し上げて、ここに来る前には、もっと好条件で声をかけてくれた外資系の会社もありました。そっちに行っていれば給料は何倍にもなっていたでしょう。だが、この会社からは毎週のように来て欲しいと頼まれ続けました。この窮状を見捨てたら男がすたる。だからこそ敢えて火中の栗を拾ったんです。幸い、時流に乗ることも出来たし、運もあってここまで来ました。少々年齢的にきつくなってきましたが、今降りるわけにはいかない。決めた以上は最後までやり通すだけです」

 

YCV─50を達成した時、八巻社長の眼前には新たな地平が広がっていることだろう。そしてまた、コムと共に大きく踏み出していくに違いない。会社発展の道に終わりはないのだから。

 

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●プロフィール

やまき・のぶお氏…1946年生まれ。法政大学卒業。大学在学時より日本電気で働き、56歳で退職後はNEC子会社でその手腕を大いに発揮する。2008年、YDKコミュニケーションズ4代目社長に就任。2012年、株式会社ワイ・デー・ケー専務取締役昇進。

株式会社ワイ・デー・ケーYDKコミュニケーションズ

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2014年1月号

2014年1月号の記事より