オビ 特集

元LINE社長森川氏×サイボウズ社長×クックパッド創業者×面白法人カヤックCEOが語る公益資本主義・討論会〈前編〉

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渋谷公会堂で6月1日に開催された「『公益資本主義』アントレプレナー・イニシアチブ決起集会」。原丈人氏の推奨する公益資本主義を若手経営者へ広める団体(『公益資本主義』アントレプレナー・イニシアチブ)が10月に立ち上がるのに合わせて開かれたキック・オフイベントだ。プログラムの中で有名経営者達によるパネル・ディスカッションが行われた。

司会は本誌にも登場頂いている山口豪志氏(株式会社54)。公益資本主義の提唱者、原丈人氏や住友精密工業株式会社の前社長神永晉氏も参加!

 

登壇者

・LINE前社長 現在 C Channel株式会社 代表取締役社長 森川亮氏
・クックパッド株式会社 創業者 取締役 佐野陽光氏
・サイボウズ株式会社 代表取締役社長 青野慶久氏
・面白法人カヤック 代表取締役CEO 柳澤大輔氏

 

―皆さんの会社の説明や考え方からお願いします。

 

柳澤(面白法人カヤック):僕らの場合、事業をやろうという時に最初に思い浮かんだのが「面白法人」という言葉でした。仲間がいて、次にどういう事業をやろうとなって、どうせだったら面白いことをやりたいなと。自分たちが面白がれば会社の人たちも自然とハッピーになるだろう。外からみても面白いと思ってもらうことも重要で、これが世の中への影響力に繋がると考えていたんです。

それをそのまま経営理念にしてもよかったけど、どうせだったら見た人が入社したくなるような、戦略というより戦術が見えてくる経営理念を用意したかった。で「面白く働く」ことを追求するためにもう少し具体的に落とし込んだ結果、「つくる人を増やす」に落ち着いたのです。つくる人が増えれば楽しく働く人も増える筈ですから。現在、結果的には社員220人中200人がクリエイターの会社なので狙い通りに来ているかなとは思っています。

 

佐野(クックパッド株式会社):クックパッドでは「毎日の料理を楽しみにすることで心からの笑顔を増やす」ことを理念にしています。創業した理由は、この事業をすれば確実に「なにかよい世の中になるな」「心からの笑顔が増えるな」ということが分かったので「それだけを徹底的にやる会社が世界にこれくらいあってもいいだろう」という思いでスタートしました。

公益資本主義に絡めるとしたら、一つ言えるのは僕みたいな存在が許されているということ。資本主義に対しては、僕自身それを否定するのではないのですが、ただどんなものでも結局人間が作ったものなので、完璧なものはありません。必ずアップデートが求められるのだけれども、「そのバージョンアップが随分遅れているぞ」という感覚はあるのです。

そういった意味で、原さんが提案されている「議決権をもう少し長期に所有する人にのみ与えるような形にする」というのは、すごく理に適っていると思います。

皆さん今の世の中が、「何かちょっと足りないな」という思いはある程度共有しています。クックパッドみたいな企業が許されているという事実もあり、たぶんさらに仕組みのほうのアップデートもしていかなくちゃいけないというのが、僕らの世代に課せられたことだという意識を持っています。

 

 

青野(サイボウズ株式会社):サイボウズという会社は、グループウェアという情報共有のソフトを作る会社で、97年に創業しました。「みんながもっと楽しく働けないかな?」というのが原点で作ったのですけど、途中で初心を忘れてM&Aをたくさんやってですね、1年半で9社買収して売上は倍になりまして、でも「違う!」と思ってその後8社売却しまして、結果的に売上が3分の1になったという。

上場企業としてあるまじき無茶苦茶な経営をしているのですけど、ただまあ自分がたどり着いた答えは「みんなが楽しく働ける社会にしたいんだ」ってことで、「チームワーク溢れる社会を作る」というのを理念にして、今に至っております。

今、日本のチームワークの問題、特に会社でみんなが働く問題の中では、「都会だったら女性が働けないよね」とか、「男性が長時間労働してヘロヘロになっているよね」みたいなものがあって、これを変えたいなと思っています。それで私が4時に帰るというのも1つですね、世間に対して「できるよ」ということを見せたくて取り入れています。それによって、「やろうと思ったら短時間で効率良く働けるよ」というのを見せたいと思っています。

ただ、ぼくが4時に帰ってサイボウズがボロカスにやられてしまったら、「それ見たことか」と言われてしまうので、ぜひ実績を上げながら、日本の働き方を変えられればとチャレンジしていきたいと思っております。以上です。

 

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森川((LINE前社長 現在 C Channel株式会社):C Channel代表の森川です。3月までLINEの代表をしておりました。いま世界を幅広く見ると、資本主義と民主主義というものがある意味デファクトになりながら、一方でその課題というのは、お金持ちの意見ばかり通るようになっていくことで、社会の構造がちょっと歪んでいるという状況なのだと思っています。

社会は政治・権力があって、国民がいて、メディアがあって、その3つで回っているということを考えると、日本を元気にするためには今メディアが元気がないのじゃないかと。毎朝、毎晩流れてくる情報は暗い話が多くて、それをシャワーのように受けているので社会も暗くなってきてしまう。であれば、とにかく明るいメディアを作って、日本を元気にしようということが一つあります。

あと特に若い方ですね。いまやはりどうしてもメディアをビジネスとして考えると、人口分布上、年齢が高い人向けに出したほうが収益は上がるのです。そのため若い人が共感できるメッセージを発信するメディアが少ない。だから、若い人がテレビを見ないしネットにもない。それであれば、若い人が共感するメディアを作る。且つそれをグローバルに持って行って、そこに出ている若い人達が活躍すればそのままグローバルに出ていけるようなものを、これから作ろうとしています。

イメージ的には、MTVに近いです。あれもあそこに音楽が乗ったから、ロックとかある意味文化活動が広がったので、そういう日本を元気にする、日本がいいところの文化を世界に発信して、そして日本中を元気にしようと。世界を明るくしようと思っています。

 

 

―2つ目は、さっそく皆さんの会社で取り入れてらっしゃるような、いわゆる仕組みというかルール、こういったところをぜひ伺っていきたいなと思っております。

 

 

柳澤:我々クリエイティブな世界で会社をやっていますので、クリエイティブも時間軸が結構長いのです。ブランドを1つ創るのに短期的にはできません。そこの時間軸を、長いスパンの物差しで会社や経営者を評価するという風に軸が変わるだけで、だいぶ変わると思っています。そういう会社にしたいと考えた時に、その文化を作るのは何か。これは、ほぼ評価なのです。

仕事というのは、評価そのものなのですけれども、取引先の評価、部下の評価、上司の評価、お客さんの評価、すべて評価につながっている。なぜそう思ったのかというと、学生時代を終えて社会人になった時に、一番気持ち悪かったのが、社会というのは「結構評価を気にして生きていかなきゃいけないんだな」ということ。これが、社会にでて最初の、学生時代とのギャップだったのです。

では、評価というものが会社の文化を作るのなら、と思ってカヤックで最初に導入したのが、「サイコロ給」という仕組みでした。サイコロを振って給料を決めるという仕組みです。これは、会社を最初は友達同士で始めたので、「お金で揉めるよ」と言われたから、揉めないような何か初志貫徹の思いを込めるにはどうすれば、と考えてサイコロ給を導入しました。結果的に、評価の最たる報酬評価制度の中に、「一切評価をしないという評価」を入れたことになります。

 

これはかなり衝撃的で、よく考えるとかなり最先端だと思うのですが、全く評価をしない評価を入れたということは、それが「他人の評価を気にしすぎるな」という1つのメッセージになるのです。カヤックは面白法人と謳っているぐらいですから、みんなが面白く働くためには他人の評価を気にしすぎていると面白く働けないだろうと。

なので、少しそういう要素を入れる。全部サイコロで決まっちゃうと不味いのですけど。数%そういうことを取り入れることで、広い世界に繋がっていくということがあって。これはよくよく正しかったなと思っています。

というのも、世の中の失業率と自殺率ってほぼ比例していますよね。失業率が上がると、自殺率が上がっていくという。つまり会社でも仕事上使えないという、スポーツでいう戦力外通告みたいなものですけど、それ自体は人間を否定するものではないのだけれども、仕事上は厳しいという話になる。これは、全人格を否定されたかのようなダメージがあるので、評価というものが厳しすぎるのだと思います。

経営者もすごく評価される軸があって、時価総額などが評価の軸に加わるから、一生懸命に頑張る性質が経営者なので、そこでどうしても行き過ぎてしまうというか。他人と比較してしまうので、自分の会社が「ここまでの価値がないな」と薄々思っていても、他の会社を見て「あいつがあそこまで行くなら俺も行くだろう」という話がでる訳です。「他社の評価を気にしすぎない」ということは、カヤックの面白く働くということを担保してきたので、そこはちょっと公益資本主義と近い部分もあるのではないかという話に感じています。

 

―せっかくなので、「鎌倉に本社」にこだわり続けている話とかもお聞きしたいです。

 

柳澤:鎌倉に本社を15~16年前から置いていますけれども、やはりITの業界で我々ビジネスする時に、「このITによって仕事が忙しくなってはあまり意味ないな」と。こういう便利なツールができたからには豊かになることに使うべきだろうと思ったのです。であれば、どこでも働ける時代になったので、鎌倉に本社を置こうと。

 

―ありがとうございます。佐野さんにお聞きしたいのですが、結構最初の頃は経営が大変だったということを伺っています。成功するまで長い間、ご自身も長期的な視野で経営されたと思うのですけど。中長期的な資本というものを実現するために実際どういった経験があったり、もしくはどういう仕組みがあればいいと思いますか。

 

佐野:クックパッドは最初の利益が出るまで7年掛かったのですけど、お金がなかったんですよ。でも、今にして思うと、それがすごく良かったのでないかと思います。ある程度利益が出始めてお金を使って事業を進めるということができるようになってしまうと、またハードルが上がるのです。

経営で大事なのはやらないことを決めることです。競争力だってなんだって要は絞ることなのです。やることを決めるのは案外楽で、やらないことを決める方が大変。そういった意味で言うと、「資金が潤沢にある」状態は長期的に何か担保されているように見えつつ、事業が生まれる環境としては、たぶん良くない環境なのですよね。

僕は現在もそこは悩んでいます。結局チームもお金を絞っていったほうが実は先に進んだりするのですよね、もう最初に予算がなくなっちゃったぐらいのほうが。夏休みの宿題みたいなものですから。人間なんてそんなものかと。「今さらか」という段階で成果が出てきたりとか、先に進んだりという傾向があったりするので。潤沢な資金を用意できれば長期的な事業に取り組めるかといったら、多分そうではないのです。でも、実際に長期的に取り組んでいく時には資金が必要なのですけれども。ここらへんを、ジレンマじゃないけど、どういうふうに扱うのか。

ただ、常に思うのですけど、日本人で生まれた時点でもう大丈夫ですよ。というか死なないもの。僕がなんで起業したかというと、大学を卒業する時にどうしようかなと思ってじっと考えたんですが、まず人間って死なないことが分かったのです。餓死するということが多分日本ではそんなにない。だったらそんなにお金はいらないんじゃないかと。

クックパッドの経験でいうと、お金がないからインターネットが無料の時代に値段を付けて売っていたのです。今にして思うとあれが凄い良かったなと思います。お金がないなりに、小さい範囲でちゃんと利益が出るような形を常に追求することをやるべきなだと思うのです。利益って価値が定量化されているのでいいことだと思うんです。だからそれを今の立場から、一歩一歩ちゃんと実証をしていくプロセスが、たぶん世の中に価値を生み出していくということだと思うのです。

 

あんまり難しく考えずに、最初の資本って自分じゃないですか。自分を資本にお客さんに価値を生み出す、利益が出るという一歩を踏み出してから考えたらいいんじゃないですかね。そこを何か勘違いして、先に潤沢な資金とかを集めちゃうとこれまたお金を使うのは大変ですからね。だってなんで資金が泳いでいるかというと他に使えないからですよね。自分でお金を使えないから資金がフラフラしているわけです。お金を使って利益を生み出せない人のところに、それが集まっちゃうと辛いですよね。

だから、答えはなんというのかわからないですけど、まずやっぱり一歩じゃないですか。今もっている資本から、ちゃんと利益を生み出せるくらいの価値をまずしっかり生み出すというのが、すごく大事なのではないかなと思います。

 

青野:僕たちは働き方を良くしたいなと思って、サイボウズ自身も離職率が当時高くて、僕は2005年に社長になったのですけど、当時28%の離職率。疲弊した顔でみんな働いている会社だったのですけど、ちょっと考え方を変えようと思って、残業しないでよい制度を作ったりとか在宅勤務をできるようにしたりとか、産休・育休で6年間取れるようにしたりとかいろいろ働く時間帯を選べたりとか、そういったことをいろいろやっているうちに離職率が4%まで下がりました。

女性が定着するようになったので、今は4割位の女性がいまして、たぶんBtoBのIT企業だと異例の高さですね。あと女性役員が2人くらい出てきたりとか、そんなことが起きていますというのがサイボウズです。

で、この話は置いておいて、本当お金っておもしろいなと思うのですけど、僕が2005年に社長になって当時すごい株価が低かったのですよ。それを何とかしたいなと思って頑張ってIR活動して、取引先を回ったりして「株買いませんか?」と言ったら、結構買ってくれるようになったんです。そこに第2次ネットバブルが起きてきたので、うなぎ登りに上がっていってですね、半年で10倍以上かな? 今のたぶん時価総額の10倍くらいまでピークはつけてですね、もう訳がわからなくなっていったんです。絶対そんな価値はないのにどんどん上がっていくのですよ。

それで堀江さんが逮捕された時に、第2次ネットバブルが終わって急落したんです。後日、以前回った投資家と話をしに行ったときに、こんなことを言われました。「あの時に勧めてくれてありがとう。おかげで大儲けできた」って。それを聞いた時に自分の中で「あれ? 俺何をやっていたのだろう?」と思ったんです。この人を儲けさせるために訪問して説明して。きっと彼が売った時に買った人は大損しているわけですよね。もうそれで、一切IR活動はやめることにしました。

「サイボウズは売上利益を追求する会社ではありません」とその時に定義をして、それを毎年株主総会で言っています。株主総会で株主を前にして「すみません。この会社は売上利益を追求しませんから期待しないでください」と。そこから始めています。

 

―それ途中から変わったわけじゃないですか。かなり荒れそうですけど。

 

青野:僕は途中で手のひらを返しましたので、1回株主総会は荒れましたね。厳しい質問が止むことなく続くという。「お前のせいで俺は大損した」という話を10分以上に渡って喋られる方とか。「今の配当では俺の電車賃が出ないぞ。どうしてくれるんだ、電車代」とか。それはしょうがないですよね。「ごめんなさい」というだけですよね。

そういう利益を求める人が来られること自体が悪いわけではないと思うのです。ただ、一緒の方向を向いてない人同士が組んでしまった。これは不幸なんですよね。株主の方とも一緒の方向を向いているとすごくうまくいきますから。

 

森川:僕の会社はまだ始まって1カ月くらいなので、特に何の制度もないのですけど、個人的に考えていることからお話するとしたら、やはりいろいろな仕組みというものは、自然が基軸になって進んできたものだということです。たとえば、資本主義の本質には人間は足るを知るものだという概念があり、それだからこそ分配の仕組みができたと思うのです。今、自然から人間が生まれた先に今度は人間からコンピュータが生まれるようになっています。ところがコンピュータは足るを知らないために、こういうバランスを崩した状況になっているのかなと思います。

僕が今やろうとしていることは、「どこまで会社を自然に近づけられるのか?」ということ。今オフィスも一軒家みたいなところを借りています。ガラス張りなんです。道を歩いている人達は僕達を見るし、僕達も道を歩いている人達を見る。

そうすると、おそらく良いサービスをしていればみんなニコニコして見えるのだと思うのです。一方悪いサービスをしていたら、嫌な顔をしているように見えるのではないかなと。こういう接点を設けることが大事だと考えています。

あとは働く人達は何のルールもないんです。自由にやっている。それこそ自然に近い在り方です。たぶんそういった方が人間らしく評価できるのではないかと思っています。

人間が間違えたのは自然よりも人工の方が正しいという過信です。でも欧米的な考えではそうなのですけど、アジア系の考え方は違っていて、自然の中に本質があるみたいな概念に彩られています。もしかしたらこういった考え方の方が、本当の意味での地球を救うとか人類を救うとか、何かそういうエネルギーになるのではないかと期待しています。そういうみんながハッピーになれるような仕組みをどう作って、そこからゼロサムではなくて付加価値を生み出すことを考えていますね。(次号に続く)

 

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2015年7月号の記事より
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