オビ 企業物語1 (2)

「これがないと開催できない!」と言われたい

企業のイベント管理の在り方が変わる!「イベントクリエイト」とは?

◆取材:加藤俊/文:菰田将司

 

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株式会社Netsket 代表 芥川 武氏

 

法人が開くセミナーやイベント。その開催告知や管理の在り方が、今大きく様変わりしつつある。

某日、ある社団法人のイベントの運営管理を行うため「EventCreate(イベントクリエイト)」というサービスが導入された。運営サイドからは「ITに詳しくない人間でもすぐに使いこなせる」と大変好評だったという。

 

ホントに使いづらい!

イベントクリエイトは、セミナーや研修・会合などの法人のイベント運営を効率化するクラウドサービス。提供しているのは株式会社Netsket(ネットスケット)という埼玉県上尾市の企業だ。

イベントクリエイトのサービス開始は2014年。企業だけでなく、自治体や大使館、公益法人といった、一見IT化のイメージが薄い業種を中心にこれまで200アカウント以上に導入が進んでいる。

実はこのイベントクリエイト、前身とも呼べるサービスがある。同社が運用しているイベント管理SNS「everevo(イベレボ)」だ。

イベレボがサービスを開始したのは2011年。2016年現在、会員13万人、イベント総件数は3万4千件というサービスに成長している。

代表の芥川武氏は、サービス着想のきっかけは「お客様からの声だった」と語る。

 

「2011年当時、Facebook等のSNSがブームになる中、個人でイベントの開催を行う人が増えていました。でもイベントの運営って、実際にやってみると大変なのです。

告知を出して、参加者の出欠席をチェックし、お金を集めて、と。そこに費やす労力をなんとかして欲しいという相談があり、サービスを作ることにしたんです」

 

気軽にイベント管理アプリでも作ろう、そう思っていた芥川氏。しかし、やがてこのサービスを自社事業の中心に据えることに。

 

netsket04人柄が窺える朗らかな笑顔が印象的な芥川代表は、自身も元プログラマー。「幼いころ、周囲はまさにマイコン時代。私も親にねだってパソコンを手に入れ、コンピューターに熱中しました。そのころからプログラマーになろうと思っていましたね」(芥川代表)

「イベントでの出会いって、とても大事だと思っています。私も人生に影響を与えてくれた人との出会いは、全てなんらかのイベントでした。

様々な意図を持った人たちが集うこと、そのものに凄い価値があるし、そこから生まれるコラボレーションには可能性が潜んでいる。社会的な大義に貢献できるこのサービスに集中しようと思いました」

 

こうしてスタートしたイベレボは、片や街コンから果ては安倍首相が出席するようなイベントにまでも使われるようになる。

しかし、こうしたサービスを産み出した芥川氏とはいったいどんな人物なのか。

 

 

インターネットで 世の役に立つ

「小さい頃から夢は三つあってプログラマー、社長、そして美人の妻と結婚すること。そのどれも叶えることができましたが、実際にはどれも叶えてからのほうが遥かに大変、ということに後から気づきました(笑い)」

 

そう語る芥川氏の最初の起業経験は、一橋大学在学中。俗に言う〝学生ベンチャー〟だった。当時はネット社会の到来が叫ばれ始めていた時期。仲間と、パソコン教室を開設し、好評を博した。

その後、ITベンチャーで3年間システムエンジニアとして勤務後独立。夢を叶えて社長になったわけだが、前述の通り、当初は苦難続きだった。

 

「立ち上げた頃の苦労は、どこの社長さんも持っていると思います。私も人を雇う立場になって、その苦労を実感するようになりました。そんなある時、ベンチャー経営者の飲み会に誘われまして。

皆自分と同じようにギリギリで戦っている人たちだったんですが、そこで話されていたのは、大きな事。グローバルな事とか、世の中をどう変えていけるのか、とか。傍から見ると笑っちゃうかもしれないぐらい壮大な話。

だけど、彼らはとても輝いて見えたんです。自分もそこに加わりたい、目先のことに右往左往していたらダメだ、と思ったんです」

 

そこで芥川氏が決心したのが、受託を止める、下請けで依頼通りの商品を作るのではなく、自分から新しい提案を発信していこう、ということだった。

まさに本当の意味での「ベンチャー」を目指したのだ。

 

「その時決心して立ち上げようとしたサービスがイベレボです。とは言っても、なかなか受身のスタイルを脱却するのは難しかったです。しかし、なんとかスタートまで漕ぎ着き、不安を抱えてイベレボをリリースしました。

なんと、スタートした初日からイベレボは売上が立ったんです。当時は東日本大震災直後。節電のためにゴーヤを窓の外で育てよう、それも南相馬市の農家の育てた苗を買おう、という企画がイベレボで始まって、これがヒットしました。

誰でも簡単にイベントを企画・販売できるというコンセプトが受け入れられたことを感じました。その後も、大きなイベントや特定のコミュニティに受け入れられたりするたびに利用者が伸び、現在に至っています」

 

一般向けのイベレボが成長する中、次第に法人からイベント管理システムの引き合いが。新たに法人向けサービス、イベントクリエイトを立ち上げる決断を行う。

 

 

人を雇う前に……

イベントクリエイトは法人がイベントやセミナーを開催する際に、担当者がITに詳しくなくても、すぐに活用できる点が特徴だという。

netsket02▲「イベントクリエイト」のトップページと、使い方動画▲
今まで人が行ってきた仕事が、次々にネットやコンピューターに取って代わられている。しかし、システム開発費を賄えない中小企業は、その恩恵を受けることができないのだろうか。株式会社Netsketネットスケット代表芥川武氏は、そんな人たちの「助っ人」になりたいと考えている

「イベント開催までの使い方が一目瞭然になっているので、どんな方でも、簡単にイベント開催まで行えます。様々なツールを用意しているので、法人イベントの運営管理が相当楽になると思います。

デザインの柔軟性が高く既存のウェブサイトに溶け込むように作ることもできるので、製作会社さんやデザイン会社さんがイベントクリエイトを使ってシステムを組み、お客さんに提案するようなこともあります」

 

『私でもわかりやすく使い方が表示されていたのはイベントクリエイトだけ。他はどんなサービスでどんなことをしてくれるのかがわかりにくかった』

実際、ある大手女性向けブランドの担当者より言われたという。「誰でもかんたんにITのメリットを享受できるようにする」。これは芥川氏が気を使っている点だという。

そして事実、その特徴を理解されてきたのだろう、これまでイベント管理サービスとは無縁だった顧客がここにきて増えているという。

労働組合や商工会議所、社団・財団法人など、一見するとあまりこういうネットでのイベント集客サービスと縁遠いと思われる団体がイベントクリエイトを活用してくれているそうだ。

 

netsket03「労働組合や商工会議所など、団体のお客さまは開催イベント回数が非常に多いんですよね。セミナーとか勉強会とか、福利厚生で音楽会や映画のチケットを配ったり。こういった企画の人数把握などに利用されています。

またアンケートを他の会社に外注して数十万払って開催してもらうのなら、イベントクリエイトを利用して安く済ませ、その代わり回数を増やしたい、という声も聞いています。『イケてる労働組合』になれた、と担当の方には喜んで頂けました。

また、使い方も全編動画で紹介しています。解りやすさ第一です。ワザワザITに詳しい人を雇ったり、教育コストをかける必要もありません。人を採用する前に、コッチを触らせてください。きっと期待に応えられると思います」

 

昨今、コンピューターやネットの発展によって、人がやらなくてもいい仕事、今後なくなっていくであろう仕事が取り沙汰されている。「日本の労働人口の49%は代替可能」という海外の研究結果もある。

イベントの管理なども、そういう部類の仕事だろう。しかし、資金のある企業ならば自前で管理できるが、そうでない中小企業などは、やはり人力に頼っていくしかない。それは人材の浪費だ。

 

「その人材を他に回せば、中小企業だって、もっとチカラを付けることができるはずです。その手助けをしたいんです」

 

多くの中小企業の手助けとなるだろう、イベントクリエイトをぜひチェックしてもらいたい。

 

 

オビ ヒューマンドキュメント

【取材協力】

株式会社Netsket代表 芥川武氏

http://www.netsket.com/

 

「イベントクリエイト」

https://www.eventcreate.jp/ 

 

 

 

◆2016年11-12月合併号の記事より◆

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