株式会社ワイズ 代表取締役会長兼CEO 早見泰弘氏

かつてない保険外リハビリサービス事業で業界内外から強い関心を集め、本誌でも過去2回の取材を通じて、その動向に注視してきた株式会社ワイズ(東京都中央区)。

 

この9月には全国で9施設目となる「脳梗塞リハビリセンター 用賀」が開設され、その勢いは増すばかりだ。そこで改めて、代表取締役会長兼CEOの早見泰弘氏に近況をうかがった。

 

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新たな脳梗塞リハビリセンターが用賀にオープン

9月1日にオープンした「脳梗塞リハビリセンター用賀」

東急田園都市線「用賀」駅から徒歩1分以内という好立地の場所に9月1日にオープンした「脳梗塞リハビリセンター 用賀」(東京都世田谷区)。

店舗内には鍼灸ルームやカウンセリングルームが完備され、専門のリハビリ設備が並ぶ。また、特別仕様の歩行訓練コーナーもつくられており、まさにリハビリに特化した施設だということが素人目にも一目でわかる。

 

同施設を手がける株式会社ワイズ(東京都中央区)は「脳血管疾患後遺症に特化した保険外リハビリサービス」という新たなビジネスモデルを確立し、今、医療・介護関連業界でもっとも耳目を集める民間企業の1つだ。

 

主要事業となる「脳梗塞リハビリセンター」は今回の用賀店が9店舗目となり、その広さは過去最大規模。2014年の創業からわずか3年でここまで急成長していることからも、どれだけの関心と期待が同施設に寄せられているかがうかがい知れるだろう。

 

 

3年弱で2000名超の利用者、〝卒業生〟も誕生

「内覧会には70名を超える応募があり、大盛況でした」
そう話すのは同社の代表取締役会長兼CEO の早見泰弘氏。

 

同施設は介護保険による通所リハビリ(デイサービスなど)とは異なり、主な利用者層は60代以下、つまり現役で働く世代である。

 

最大の特徴は社会復帰・職場復帰を目指すためのリハビリを保険外サービスによって提供している点だ。保険制度の枠にとらわれないため、従来の類似施設にはなかったサービスを受けられるとして人気を集めている。
「全店舗を合わせると、これまでの3年弱で2000名以上のご利用者さまにお越しいただき、〝卒業生〟も誕生しています。現行の保険制度によるリハビリはもともと高齢者を対象とした制度設計になっており、行われるメニューも食事や排泄といったADI(日常生活動作)の改善や維持が主な目的です。

 

しかし、脳梗塞をはじめとした脳血管疾患を患う方は高齢者ばかりではありません。私たちの施設では『維持』ではなく『改善』を目指し、社会復帰、あるいは職場復帰を目標としています。だから〝卒業〟なんです」

 

保険外だからこそ目指せる社会復帰

新宿センター

入院中に行われるリハビリの日数は保険制度の関係から、例えば、脳血管障害では150日、高次脳機能障害をともなった重篤な脳血管障害では180日までと制限されている。

 

退院後にもリハビリが必要な場合はリハビリ専門病院に通うか、デイサービスなどの介護施設に通うなどの選択肢が一般的だ。

 

いずれも保険制度を利用したもので、時間が制限されたリハビリしかできないなど、現役で働く世代にとっては満足の得にくい環境といえる。

 

「保険制度を利用した場合、週に1回40分程度のリハビリを行うのが通常です。しかし、当施設では理学療法士などのリハビリ専門スタッフが症状や目標に合わせたメニューを組み、マンツーマンで1回2時間〜2時間半、徹底したリハビリを行います。

利用者様は100%自己負担となりますが、質も量も高いリハビリを受けることが可能となります」

 

 

田町・三田センター

リハビリメニューもさまざまだ。例えば、WHO(世界保健機関)から脳梗塞の後遺症に効果があると認められている鍼灸治療が受けられるのもその1つ。

 

「利用者様からは『体の動きが柔らかくなった』などのお声をよくいただいております。用賀店舗の歩行訓練スペースにも従来にはないアイデアが採用されています。

 

 

通常、病院などで行われる歩行訓練には平行棒が使われますが、実際に町の中を歩こうとしたとき、手すりがあるとは限りません。そこでレッドコードと呼ばれる天井から吊るした吊り輪を利用して訓練することで、より実践に近い身体感覚や筋力を使ったリハビリが行えるようになります。

 

川崎センター

床材についてもご自宅の環境に合わせてフローリング、絨毯、畳の3種類をご用意しました。こうしたアイデアや手法を柔軟に取り入れられるのも保険外リハビリサービスを行う当施設ならではだと思います」

 

同施設の取り組みに関心を寄せているのは利用者だけではない。用賀店舗の内覧会には病院関係者も多く訪れたという。

 

 

「社会復帰や職場復帰を目指したいのに病院で最後までリハビリを受けられない、そのことに不満を抱いているのは患者さんばかりではありません。

 

医療者向けサービスを運営する株式会社 QLifeが先般行った保険外リハビリに関する調査によると、

脳卒中患者を診察する病院やクリニックの医師のうち約7割が復職のための実践的なリハビリテーションの不足を感じており、また当施設のような脳梗塞・脳出血後遺症の改善を専門とした保険外リハビリ施設の存在意義を感じるとのことでした。

 

退院後の新たな選択肢として当施設を多くの方にご利用していただくべく、今後は病院との連携もさらに強めていけたらと思っています」

 

いよいよ始まるオンライン・サービス

本誌2017年5月号では同社が新たに取り組むオンライン・サービス「リハビリコーチ」について紹介した。同サービスは専門スタッフがビデオ通話を通じて在宅リハビリ指導を行うというもので、施設に通うことができない利用者へ向けたサービスとなる。前回の取材時にはモニター試験が実施されている最中だったが、その後の進捗はどうなのだろうか。

 

48.2%の医師「現在の保険制度では、社会復帰を目指す脳卒中患者さんのリハビリをカバーできていない」。復職のための実践的なリハビリテーション「不足している」69.5%

「試験は2カ月間実施し、30〜70代の男女15名に参加していただきました。結果は満足度87%、『歩くスピードが速くなった』『手の動きがよくなっていくのを感じた』など改善を実感された方が67%いらっしゃいました。

 

このデータをもとに改善点を洗い出し、秋口にはサービスを開始できるよう、現在、着々と準備を進めている段階です」
オンライン・サービスのメリットはコストを大幅に削減できることと遠隔地へのサービス提供が可能になること。

 

これまで経済的な理由や距離的な問題から同施設のサービスを受けられなかった人たちにとっては朗報と呼べるものだろう。

脳梗塞・脳出血などの後遺症の改善を専門とした保険外リハビリ施設について、「存在意義を感じる」72.3%。もし、自院の近くにあったら「主要なリハビリ先の1つとして紹介したい」10.0%、「オプションの1つとして紹介したい」 45.9%

「私自身が大病を患い寝たきりとなった経験があり、体が思うように動かせない辛さをよく理解しています。現在、当施設は関東を中心に展開していますが、来年には関西や九州などにも店舗を増やす予定です。

 

さらに今秋にはオンライン・サービスも始まります。より多くの脳血管疾患の後遺症に悩む方々のサポートができればと考えております」

 

 

2025年には脳血管疾患の患者は300万人に達し、退院後もリハビリが必要となる患者は150万人におよぶという予測がある。保険外リハビリサービスという新たなビジネスモデルで躍進する同社の取り組みには、今後さらなる期待がかかる。

 

脳梗塞リハビリセンターへの問い合わせ・申し込みは0120-251-108

オビ インタビュー

【プロフィール】

早見泰弘(はやみ・やすひろ)氏…1972年、千代田区神田生まれ。1996年、法政大学経済学部卒業後にWebマーケティング会社を設立、代表取締役社長に就任する。大手企業との取引を中心に業界有数の会社へと成長させ、2004年には東証一部上場企業と統合、インターネット部門等の責任者として従事。2014年2月、株式会社ワイズを設立、リハビリ・介護を中心とした事業を展開し、現在に至る。

 

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