株式会社タイムワールド 代表取締役加藤孝文

濃度の濃い酸素を吸引することで疲労が回復する効果があることは広く知られ、近年は酸素バーなる場所もあるという。

「しかし本当の効果はそんなものではない」と話すのは、株式会社タイムワールド加藤孝文代表取締役。彼の商品は、人類の秘めたチカラを引き出す性能を持っている。

 

スポーツ選手だけのものではない

酸素カプセルの製造・販売を手がける株式会社タイムワールド。主力商品の「O2 Capsule」は、現在ドイツ・ブンデスリーガのドルトムントで活躍するサッカー香川真司選手が愛用していることでも知られる。
酸素カプセルは、水深3メートルと同等1・3気圧の圧力と、平地では約21%の酸素を二倍以上、50%の高濃度にした空気を生み出し、身を入れるものだ。

 

「効果は古くから知られていて、特に欧米では既に確立している医療法です。しかし、日本ではまだ効果に疑問を持っている人も多く、なかなか一般に普及していません」

 

そう話すのは、同社代表取締役の加藤孝文氏。確かに酸素カプセルはスポーツ選手やアスリートが使っているもの、というイメージが強く、一般には馴染みが薄い。

 

「日本で酸素カプセルの知名度が上がったのは、2002年の日韓W杯の際、本大会前に左足を骨折したイングランド代表のデイヴィット・ベッカム選手が、酸素カプセルに入って治療したことで奇跡的に回復し、本大会に出場できた、というニュースが流れてからでした。他にも、2006年の高校野球で、早稲田実業の斎藤佑樹投手が使っていたことも話題になりましたね」
そういう経緯があるので、スポーツ選手が怪我の治療や体力回復のために使用するものというイメージが定着してしまったのだが、効果はそれだけではなく、勿論一般の人が利用しても大きな効果が期待できる、と加藤代表は言う。

 

「そもそも、この高気圧酸素を利用した治療法は150年以上前からヨーロッパやアメリカで普及していたものです」
しかし、当時はなぜ効果があるのか分からないまま、ただ万能の治療法として過大に評価されていた。

 

記録では1928年に、病院そのものを高濃度・高気圧にする直径20メートル五階建ての高気圧治療病院がアメリカ・オハイオ州クリーブランドに建てられている。その後、近年に至って効果が科学的に実証されるようになり、特にスポーツ選手やアスリートが身体能力を平常時よりアップさせる方法として使用し始めた。
「2008年の北京オリンピックでは、各国代表チームが酸素カプセルを持ち込んで、疲労回復目的で使用していました。日本代表はドーピングの恐れがあるとして持ち込みませんでしたが、それだけ効果が知られるようになった証だと思います。2012年のロンドンオリンピックでは、選手団のサポートハウスに置かれるまでになったそうです」

 

 

こうしてスポーツの分野では広く普及し、効能が広くうたわれるようになったが、近年では更に美容やアンチエイジング、リラクゼーションへの効果も期待されるようになっている。

 

2012年には女性がやってみたい美容法の中で、岩盤浴やフットケアなどを差し置いて一位になった調査結果もある。また、筋肉量の低下で代謝が落ちている体に酸素を効果的に摂取できるという効果があるので、疲労・血行障害・肩こり・腰痛・手足の痺れなどの症状に改善が見られ、老人のリハビリに使用される例もある。

 

 

高濃度酸素+高気圧

このような多様な効果が予想される酸素カプセルだが、他の酸素バーなどで酸素を摂る方法と異なる点はどこにあるのだろうか?

 

「それは酸素の摂取と共に身体に『圧力』を加えることにあります」と話す加藤代表。
酸素カプセルの中には1・3気圧という圧力がかかっており、中に入ると全身が圧迫されるように感じられるのだが、この圧力に秘密がある。
「人体は圧力がかかることで血行やリンパの流れが促進され活性化する。一般に欧米で使われている医療用の酸素カプセルには2気圧や3気圧という高い気圧がかかっています。勿論高い気圧であれば高い効果も予想されるのですが、その分体への負担も大きい。一回で使用できる時間も短くなりますし、老人や子供など体力の低い人が使用しにくくなっている。だから1・3気圧、これは母の胎内と同じ圧ともいわれますが、この気圧にしているんです」

 

しかし、この低い気圧がネックになった。

 

「こういう機器ですから、医師のお墨付きが欲しくて話を聞きに行くのですが、皆『1・3気圧なんてオモチャみたいなもんだ』と言って取り合ってくれなかった。医学の常識からするとオカシイものだったんですね。しかし、1・3気圧でも充分効果はある」

 

1・3気圧下で、高濃度の酸素を取り入れることによって代謝が活発化し、頭痛などを軽減し、骨折の治りすら早くなる。

 

「天気の変動が体調や気持ちに影響を及ぼすことがある、なんて話題になっていますが、あれは高気圧から次の日に低気圧に変化することに原因があります。気圧が急に下がると心身に悪影響がある。特に老人などは体力が衰えているのでその影響を直に受けてしまう。

老人ホームなどを回っていると、雨の日に軽いウツになっている老人が多いと聞きます。逆に高気圧の日はテンションが上がっている。このように天気、特に気圧は間違いなく人体に影響を及ぼしているんです」

 

故に酸素を吸引するだけではなく、高酸素・高気圧の状態に身を置くことが肝心と加藤代表は言う。

 

「仕事に疲れて家に帰った時に、高酸素・高気圧に体を浸すことで、体をリセットする。そうすることで健康が回復し、寿命も伸びる。それがこの『O2 Capsule』です」

 

体をリセットする夢の機器

この商品を開発するきっかけはどこにあったのか。それを加藤代表に伺った。

 
「実は自分もこの利用者だった、というのが発端です。購入したのはアメリカ製の寝袋みたいなソフトタイプのもの。自分は健康に不安があったわけではないのですが、有名スポーツ選手が使っていると聞いて、どんなものかなと。

そうしたら、確かに疲れは取れるし元気にもなった。それを自分の知り合いに話していたら、だんだん『やりたい』という人がウチに来るようになって。それが口コミで広がって数が増えていたので、これは商売になるのでは、と思ったんです。1999年頃のことでした」

 

開店後は、前述のベッカムの骨折の件がニュースになり、スポーツ選手の来店が増えてきた。そのうちソフトタイプのものは壊れやすく、多くの人が使うのに適していないと感じるようになっていった。

 

「それでハードタイプのカプセルを開発したんです。これは世界初の試みでした。これがスポーツ選手に大ヒット。現在は、以前は否定的だった医師たちもその優れた効能を評価してくれていて、寧ろ医師の利用者も増えていますね」

 

健康に気を遣う経営者などに利用されることも多いという。

 

「他にも二人から六人までも利用できる大型のものも用意しています。多人数用は介護施設などで人気です。中に入ると老人の皆さんが元気になれますしね。他にレンタルプランも用意していますよ。今は、老若男女全てが利用でき、健康になれるこの機器を広く知ってもらうこと、利用してもらうことが第一だと思っていますから」

 

最後に、経営の苦労は? と伺った。

 

「たった一人から始めたこの会社もやっと20人ほどになりました。この製品はミネラルウォーターと同じで、認知されるまでに長い時間がかかる。だれも最初は金を払って水を買うなんて信じられなかったでしょう? それが登場から数十年で、誰しもが水を買うようになった。いずれ酸素も買うようになる。私は気が長いので(笑)。

今はダメだと思っても、皆が気づいてくれるまでほっておく。医師が認めなかったら、認めなくても気にしない人達に提案していく。効果は間違いないのにそれが受け入れられない時期は悔しかったですが、今、やっとそれが認められるようになってきました」
今後は、海外にも販路を求めていくという。いずれは国内100万台、海外1万台と台数を増やせば、自宅で高酸素・高気圧で体をリセットするというのが常識化していく、と話す加藤代表。

 

……空気中に自然に存在する酸素に、人の隠されたチカラを引き出す秘密が隠されている。加藤代表の酸素カプセルには、それを引き出す「魔法の箱」になる夢が秘められている。

 

【プロフィール】

加藤孝文(かとう・たかふみ)氏
1964年、東京千代田区生まれ。東京工芸大学電子科を卒業後、大手電気通信会社に就職。その後、1999年に株式会社タイムワールドを設立。趣味は旅行。

株式会社タイムワールド
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