京都・北山にある日本初の実店舗型ドローン専門店は今年の秋、開店2周年を迎えた

 

2015年から急激に注目が集まり始めた小型無人機ドローン。単なる空撮利用を超え、無人であることを活かした測量、輸送、農業など様々な分野への利用がひろがっている。

 
ホビー用途のドローンを販売する店舗が多い中、産業用ドローンの普及と販売を推進するのがSkyLink Japan(スカイリンク・ジャパン)だ。代表取締役 須田信也氏は、ドローンに潜在する可能性を「空の産業革命」と期待する。スカイリンク・ジャパンがけん引するイノベーションとは何か。須田氏に、2020年に向けたドローンが起こす産業革命について聞いた。

 

販売からメンテナンスまで
ワンストップ プロパイロットの養成も行う

 

株式会社WorldLink & Company(SkyLink Japan) 代表取締役 須田 信也

 

スカイリンク・ジャパンは、株式会社WorldLink & Companyのドローン部門。世界シェア7割のドローンメーカーであるDJIの正規代理店として、DJI社製ドローンを中心に、国内外から集めたロボットや周辺機器、ソフトウェアを店舗・インターネットで販売する。

 

さらに自社整備場による修理・メンテナンスや購入後のサポートサービスを充実させ、ドローン導入コンサルティング、パイロットの派遣や育成も手がける。2017年3月にはNTT西日本と連携し、ドローンによる太陽光パネルといったインフラ点検サービスの提供を開始。販売だけの同業他社とは一線を画すワンストップサービスだ。

 

ホビー用途のイメージが強いドローンだが、同社で普及推進に注力しているのは産業用ドローンである。空撮、写真測量、3D、インフラ点検、農業など、その可能性は未知数であり、代表取締役の須田信也氏は、その可能性を「空の産業革命」と言う。

 

「ドローン業界の進化はとてつもなく早く、新しい技術がどんどん生まれています。DJIも、全世界の頭脳を集めて進化をしています。我々も、ドローンが正しく社会とつながるために、産学一体となって最先端の技術やノウハウを身につけ、イノベーションを推進していくことが使命と感じています」。

須田氏が魅せられたのはドローンそのものではなく、ドローンがもたらす社会の変化を感じるエキサイティングさだと語る。「日本経済が鈍化している今、産業を活性化できるツールを見つけたと感じたのです」。

 

 

大学を中退して起業
ニーズを先読みして大成功

須田氏が現在のビジネスを始めたきっかけは、アメリカ留学中の寿司屋のアルバイトにさかのぼる。

 

「寿司屋に来ていたお客が、刺身を食べたいけれども周りに店がないと言っていました。そこで、寿司屋に来ていた業者から魚を卸してもらい、デリバリーすることを思いついたのです」。

 

やってみると、思いのほか稼げる。「これは商売になる」そう確信した同氏は、多少悩んだものの、大学を中退し魚デリバリービジネスを始めた。粗利が良かったこともあり、売り上げは月に1万ドルにもなったという。

 

 

「でも、自分はこのまま一生魚を売っていくのかなと思ってしまったんです」。起業1年を区切りとして、同氏はその魚卸しの会社に就職することにした。「様々な職種を経験するサラリーマンをやっておかないとダメになる気がしたんです」。

その会社は日本産の魚を卸していたこともあり、同氏はロジスティクス担当として、日本のブリ養殖場に赴任することになった。「でも、ロジスティクスの流れを作ってアメリカに帰る矢先、会社が買収されてしまいました」。

 

 

須田氏はそのまま日本に残ることを決意する。同氏にとっては丁度良い頃合いだったのかもしれない。初めてのビジネスも会社勤めもアメリカ。「外資だけの頭ではやっていけなくなる」と迷いが出ていた時だったのだ。

 

社会を変えるイマジネーションはどこに?

農業ドローン特別授業風景

 

しかし、日本で半導体メーカーに就職した同氏は、アメリカで培ってきた「先を読む能力」を阻まれることになる。外資の経験だけでは日本の会社勤めは通用しないが、日本企業のあり方におさまろうとすると閉鎖的な文化に窮屈となってしまうのだ。

「自分がやってきたビジネス思考に間違いはないと確認はしていました。でも、日本ではその思考は拒否されてしまいます。このままではイマジネーションは生みだせないと感じました」。日本経済の鈍化の原因を見た同氏。自身が携わっていた南米の営業拠点立ち上げ時に潮時を感じていた。

 

「外資の経営コンサルタントで修行して勉強しようとも思いましたが、経営しながら勉強しよう」と腹をくくり、2014年8月、ガジェット販売事業として起業した。
トレンドを見抜き、日本に上陸していないものをいち早く輸入して売る。始めてみると、須田氏のアンテナの精度はことごとく当たった。「面白いものをただ売るだけではなく、そのメーカーの代理店となって大きく販売したいと考えていました」。
そんな時、ついに須田氏のアンテナはドローンを捉える。「ものすごいものが出た」と、すぐに中国・深圳にあるDJI本社にコンタクトを取ってみると、話はすぐついた。しかし、一千万円分の購入が条件。「大きなネックでした。でもやるしかないと踏み切りました」。必ず成功するという確信が、須田氏にはあったのだ。

 

 

独自のビジネスモデルの構築で世界をつなぐ

ドローンを販売するためには一千万の購入資金をかき集めなければならない。しかし、実績もないベンチャー企業に金を貸す銀行はない。「でも、資金は集まりました。何の担保もない自分に、前職の同僚や友人たちがキャッシュで貸してくれたんです。生きていて、一番うれしいことでした」。友人たちは、須田氏の能力を担保とみたのだ。

 
こうしてDJIの日本代理店として、スカイリンク・ジャパンがスタート。最初に仕入れたドローンはネット通販大手などで1ヶ月あまりで完売。当時、ドローンをネット通販大手で販売するところはなく、すき間を狙った戦略が見事に当たったのだ。

 

2015年の官邸でのドローン墜落事件で、幸か不幸かドローンは一気に注目を浴びることになる。これまでラジコンを手にしたことがないユーザーもドローンを手に取るようになったのを見て、同氏は導入サポートやメンテナンスサービスを始めた。

 

「これまで、ラジコンホビーはメンテナンスも、持つべき者の必須の知識であることが暗黙の了解でした。これでは正しく市場は広がりません」。このサービスは口コミで広まり、あっという間に知名度を上げる。

 

「技術が必要なもの、壊れるものにサポートはあって然りです。当たり前のことをしただけですよ」と同氏は言う。そして、2015年9月、日本初の実店舗型ドローン専門店を京都にオープンさせた。店舗では実物を触って見れたり、困りごとをすぐ相談できたり、連日、全国各地からユーザーが訪れる。

 

 

2020年に向けてドローンが担う日本の産業の復活

正しい知識の提供やサポート、メンテナンスは、産業分野におけるドローンの発展を見据えていたものだ。

「当初からあったビジョンは〝ドローンと社会を正しくつなぐ”です」と須田氏は言う。これまで人が担っていた作業分野に、ドローンやロボットの新しい技術や可能性を融合していき、危険な作業の軽減、作業の効率化や低コスト化を目指す、という考えだ。それは、「21世紀の産業革命」だと、同氏はみている。

 

「我々は、売って終わり、飛行のための認定証を取得させて終わりではありません。産業分野における新しいドローン活用シーンに対するサポートに注力し、イノベーションを起こしていきたいと考えています」。
現在、スカイリンク・ジャパンが注力するイノベーションは、農業分野、測量・土木建設分野、点検・調査分野だ。

特に、農業分野の技術革新が顕著であり、これまで高額な大型ラジコンヘリコプターに変わり、ドローンでの農薬散布が進められている。広大な圃場から高低差のある山間地域まで小回りがきくドローンの得意分野だ。近赤外線カメラを使えば、農作物の生育管理も可能となるという。

今年秋には、農薬散布ドローンを扱える若い世代の担い手育成を目指し、全国域でも先進的な取り組みとなる農業ドローンを活用した特別授業を県立高校で行った。
須田氏によると「様々な専門知識を要し、産業用ドローンを扱うパイロットやオペレーターの人材育成が大事です」。 ドローンパイロット名付け親の請川博一さんら第一線で活躍するプロフェッショナルと協力し、ドローン人材育成に注力している。ドローンの普及による新たな雇用創出も期待できるのだ。また、日本最大級の捜索救助ロボコンに京大、徳島大の研究者ととも産学連合チームで出場し、共同実証で培われたノウハウを生かして、遭難者発見・レスキューキット搬送のミッションの2冠を最多達成した。

 

 

「ドローンなどのロボティクスやAIが人間の仕事を奪うのではありません。どう使うかを考えて、正しく技術革新を行っていくことが大切です」と須田氏は語る。
ドローンは、産業発展という社会貢献を行うためのツールにしか過ぎない。「社会と正しくつなぐ」というビジョンのもと、スカイリンクジャパンは地球規模の産業革命を推進していくのだ。

 

 

どんな人材を求めているか

好きなものに熱意がある人を求めています。夢を叶えるにはどうすれば良いのかを考えられる人で、多少「ぶっとんでいる」くらいでも丁度良いと思っています。

 

なぜ海外留学したのか

高校生の時から海外には関心がありました。映画を字幕なしで鑑賞したいという動機で、交換留学生に応募したのがきっかけです。海外では、自分の殻をやぶって様々な人とコミュニケーションをとらなければなりません。違いを尊重しあい共に過ごす体験は、先見性と対応力に大いに役立っています。

 
ただ、自分は中途退学して起業しました。起業の体験があったからこそ現在があるので、今となっては後悔することはありませんが、当時は退学することにとても悩みました。せっかく留学させてくれたのに親に申し訳ないと苦しかったですね。

 

学生のうちにしておいたほうが良いこと

一度は海外に出て欲しいです。海外に出ると、日本人は様々な差別を受けます。それがなぜ行われるのか、その原因や心理を考え始めると、多様性を理解できるようになります。自分と異なる意見や価値観を受け入れやすくなるのです。これが体現できると、もっと大きく成長できるのではないかと思います。

【プロフィール】
須田信也(すだ・しんや)……1979年京都府生まれ。京都市立紫野高等学校業後、アメリカに留学し、Arizona州立大学中退後起業、2004-2008年 International Marine Prouct Inc. 2008-2014年 ローム株式会社での勤務を経て2014年8月に株式会社WorldLink & Companyを設立。現在に至る。

 

株式会社WorldLink & Company
住所: 〒603-8053京都市北区上賀茂岩が垣内町103 スパイラルスペース 1F
資本金: 1000万円
設立年度: 2014年
代表: 須田信也
従業員数:20名
年商:18億円
SkyLink Japan
http://www.skylinkjapan.com