オビ 探訪

探訪 Respond to needs 売る商売から買ってもらう商売へ

 

 

交通の便利さから都心への通勤者に人気上昇中の下町・足立区綾瀬。

駅前の賑わいを抜け、15分ほど歩くと、住宅地の中に「横引シャッター」の黄色い看板が見えてきた。

「横引」は社長の姓かと思ってしまいがちだが、然にあらず。

同社は上下開閉式が主流のシャッター業界の中で、顧客のイメージを具現化するために生まれた「横に引く特殊シャッター」の専門メーカーだ。

同社の横引き式シャッターはすべてオーダーメイドで、駅の売店や郵便局、百貨店から個人宅向けのガレージシャッター、日本家屋向けの雨戸まで様々な形で顧客のニーズに応えている。

出迎えてくれた2代目社長・市川慎次郎氏に社内を歩きながら話を聞いた。

 

天窓が電動で開閉する「水平引きシャッター」。こうした特殊シャッターにこそ同社の真価が発揮される。

 

 

創業者の意志を継ぐために、敢えて変化を選ぶ

株式会社横引シャッターは、1970年創業の株式会社中央シャッターをベースとする中央グループの一員で、1986年に先代社長の市川文胤氏が創業。

長年のシャッター修理の経験を元に、創業当初から自社で設計・製造から施工、メンテナンス、修理まで、すべてを行っているモノづくり企業だ。

 

当初横引式のシャッターは下にレールを敷きコロで転がして移動させる方式が主流で、レールに埃やゴミがつまりやすいという問題があった。

同社はその問題解消をめざして研究を重ね、カーテンのように動かせる上吊式横引きシャッターを開発。

曲線にも対応でき、ロール式なので長いものにも対応でき、動作もスムーズなこの夢の製品の出現は、シャッター業界に新しい風を吹き込んだ。

 

(左から順に)「パイプカーテンゲート」(左2枚)。スマートなのに強度があるので、店舗やガレージ等、内部が見える防犯に/「防火防煙シャッター」。平成23年8月29日、日本初の防火アルミ横引きシャッター認定を受けた/機能性と防犯性を両立させた「フォールディングゲート」

 

 

同社の特徴は、まずその高い技術力にある。

全部で4カ所ある工場では、先代社長の頃から研鑽を重ねた経験豊かな職人が設計の前段階から参加。

オーダーに応えるだけでなく、日々切磋琢磨して常に時代の先を行く製品を提案しているのだ。

 

例えば、電動式シャッターによりボタン1つで開放感のある露天風呂を可能にする「THE露天風呂」や窓に取り付ける防犯用パイプカーテン「ダメーダ」などもその1つで、既存のシャッター利用法を越えて新しい顧客のニーズを掘り起こしている。

 

 

常に時代の先を行く製品を提案し、あらゆるニーズ・あらゆるオーダーに応えていく職人たち。その確かな技術力が同社を支える。

 

 

なぜ提案が大切なのか。

それは「今実践すべきは売る商売ではなく買ってもらう商売」だからだと市川氏はいう。

 

「昔は“いいモノ”であれば売れましたが、今売れるのは“いいモノ”でかつ“お客さんがほしいと思うモノ”です。

いいモノだから買ってくださいではなく、常にお客さんがほしいと思うモノを先取りして形にし、PRしていくことが必要なんです」

 

本社内に設けてある実際にシャッターを動かせる商品見本室に、まず遊びに来てほしいというのもその一環だ。

さらにマスコットキャラ「カニ部長」(写真右)やテレビ・ラジオ、雑誌、Webサイト、YouYube、SNSでの情報発信などを通じ、常に潜在顧客を意識したPRを展開している。

 

だがたとえ営業のやり方は変わっても、創業者である先代社長の「商売は益を求めて商売ならず、人喜んでこそ商売なり」の精神は、

真新しいオフィスの壁に大きく書かれた社訓となって、市川氏と同社の中に確実に受け継がれている。

 

継承とは変わらないことではなく、守るべき価値を守りぬくために恐れず変化を続けること。

その違いはたとえ今は小さくても数年後、十数年後には大きな差になっていることだろう。

 

 

 

★同社の取り組みについてはコチラ

 

 

 

オビ 探訪

◉株式会社横引シャッター(代表取締役/市川慎次郎氏)

〈本社〉
〒120-0005 東京都足立区綾瀬6-31-5 TEL 03-3628-4500

〈工場〉綾瀬工場・八潮工場・三郷工場・垳工場

URL:http://www.yokobiki-shutter.co.jp/

Facebook:https://www.facebook.com/yokobiki/

 

 

◆2017年4月号の記事より◆

WEBでは公開されていない記事や情報満載の雑誌版は毎号500円!

雑誌版の購入はこちらから