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茨城県立日立工業高等学校 – 〝他ではできない学び〟を得られる日本版デュアルシステムのモデル校

2017.06.07
オビ 特集
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学校と企業を行き来しながら、座学と実務訓練を長期に行う、ドイツ生まれの「デュアルシステム」が日本の専門高校に導入されてから12年。

もともと高卒者の就職率向上と、中小企業の人材不足を解消する目的で始まったが、いまやその効果も活用法も多様化し、地域全体を巻き込んだまちおこしにも活用されている。

そこで各地で定着しはじめた、デュアルシステムの活用の実際とポイントについて実例を挙げながら紹介していく。

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一人ひとりの希望に合わせた多彩なカリキュラム。

茨城県立日立工業高等学校
校長 宮田耕一氏/デュアルシステム担当 弓野憲秀氏
◆取材・文:富樫のぞみ 

日立製作所発祥の地としても著名な茨城県日立市。

今回紹介する茨城県立日立工業高校は、県内でも二番目に創設された歴史ある工業高校だ。

機械科、電気科、情報電子科、工業化学科の4学科に加え、定時制総合学科を設置。

地元日立市で活躍できる高い技術力をもったモノづくり人材の育成に努めている。

15あるモデル高校のひとつとして、日本版デュアルシステム導入当初より実績を重ねてきた同校。

長期職能訓練を一つのスタンダートに至らせるまでの取り組みについて話を聞いた。 

生徒たちが輝く場所のひとつとしてデュアルシステムはある

―貴校のデュアルシステムをはじめとする就労訓練の仕組みや実地状況について伺いたい。

宮田氏

宮田氏:当校では全国で15あるモデル地域のひとつとして、日本版デュアルシステムの導入当初よりデュアルシステムを継続してきました。

現在も希望する2年次の生徒を対象に、選択科目のひとつとして実施しています。

週に1日の企業実習を年間通して行うというもので、毎年おおむね15名ほどの生徒が参加しています。

弓野氏:「社会に出て頑張りたい」「就職を志望している業種や企業について深く知りたい」

「親御さんからの薦めを受けた」など、生徒たちの動機はさまざまです。

また進路相談や日常の会話の中で、私たち教員から声をかけることもあります。

宮田氏:生徒たちが〝輝く場所〟というのは、一人ひとりに用意されているものだと私たちは考えています。

その場所を難関資格の取得に見出す子もいれば、部活動や学校行事、日々の友人とのなにげない交流の中にある子もいます。

デュアルシステムもまたそのひとつであることは間違いありません。

デュアルシステムを終えた生徒たちのレポートを読んでいると、その驚きや興奮が伝わってきます。

弓野氏:まだまだ甘えが残るかなと心配していた子どもたちも、わずか1年間で目を見張るような成長を遂げていくのはデュアルシステムならではと思いますね。

保護者の方からも「積極的に家事や身の回りのことに取り組むようになった」

「自立心が芽生えたことを感じる」などの感想を毎年多くいただいています。 

一人ひとりの希望に合わせた多彩なカリキュラムを実現

―デュアルシステムを継続する中で、留意している事項はあるか。

弓野氏

弓野氏:生徒や保護者の方からの相談として多いのは、毎週8時間の職能訓練を1年間継続することができるか、また週に1日を職能訓練にあてることで勉強が遅れてしまったりすることがないかということですね。

こうした不安を解消するため、実習日には教師がそれぞれの生徒の元へ巡回し、定期的に受け入れ企業や生徒との面談を行い、必要に応じて補習などのサポートもしています。

また部活動との両立をめざしたいという生徒に対しては、受け入れ企業のご厚意で退社時間を早めるなど、一人ひとりに合わせたきめこまやかなカリキュラムを実現することができました。

宮田氏:そのほか本校独自の取り組みとして、就職を検討している生徒に向けた3日間のインターンシップも実施しています。

部活動や資格取得のため、1年間継続しての就労訓練は難しいけれども、インターンシップは受講するという生徒も多いですね。

主に2年生を想定した内容ではありますが、1年生から参加する生徒もおります。

―どのような企業が実習生を受け入れているのか?

宮田氏:日立製作所グループの企業城下町として発展してきた地区ということもあり、身近な家電製品からインフラ設備まで多種多様な製品やサービスを扱う企業が存在しています。

最新鋭の設備開発や国家レベルのプロジェクトを扱う町工場さんも多く、他ではできない学びを得られる環境です。

弓野氏:デュアルシステム導入当初より受け入れを継続してくださっている企業さんも多く、皆さん独自のノウハウや哲学に基づいて生徒たちの指導に当たられています。

1年間の実習カリキュラムについても実に多彩で、新入社員向けのものをアレンジしているという企業から、実務経験を重視されるという企業、デュアルシステムのために特別なカリキュラムや課題を設けているという企業など、特色豊かなものとなっています。

地域貢献事業の一環として、近隣の特別支援学校に向けた寄贈品も製作しているという。

地域全体で若き技術者を育てる土壌がある

―受け入れ先企業からの声としてはどのようなものが多いのか?

弓野氏:いかに子どもたちを育てるべきかという、企業の皆様からの強い信念を感じています。

たとえ就職に繋がらなくても、地域活性化や社会貢献として継続したいという企業の方も多く、本当にありがたいことです。

またこちらがお世話になるだけでなく、若手社員の方々の教育の場として、デュアルシステムを活用してくださっているというお声も頂戴しております。

―黎明期よりデュアルシステムを実施する中で、感じることは何か。

宮田氏:本校が日本版デュアルシステムのモデル校として指定を受けてより12年が過ぎましたが、これほどの長期間に渡り継続してこれたのは、ひとえに地域の皆様、県教育委員会、及び関係各機関の多くの方々のご支援あってのものと感じております。

この場をお借りして、深く御礼を申し上げます。
グローバル化の進展とともに、日立地域の製造業も変化しています。

とくに中小企業では少子化による若手人材の不足や後継となる技術者の減少が深刻なものとなりつつあると憂う声は決して小さなものではありません。

若きモノづくり人材の育成を通じて、今後もさらなる地域貢献ができるように一層尽力してまいる所存です。 

部活動も盛んな同校。運動部はもちろん、文化部も日々練習や制作に励んでいる。自動車部もまた、数々の賞を受賞。全国大会でも上位成績をおさめている。
資格取得に向けて勉強に打ち込む生徒も多い。
オビ 特集

◉プロフィール
宮田耕一(みやた・こういち)氏…2014年茨城県立日立工業高等学校校長に就任。

弓野憲秀(ゆみの・のりひで)氏…情報電子科教諭、デュアルシステム担当。 

●茨城県立日立工業高等学校
〒317-0077 茨城県日立市城南町2-12-1
TEL 0294-22-1049
http://www.hitachi-th.ibk.ed.jp/

◆2017年5月号の記事より◆

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