ƒvƒŠƒ“ƒg学校と企業を行き来しながら、座学と実務訓練を長期に行う、ドイツ生まれの「デュアルシステム」が日本の専門高校に導入されてから12年。

もともと高卒者の就職率向上と、中小企業の人材不足を解消する目的で始まったが、いまやその効果も活用法も多様化し、地域全体を巻き込んだまちおこしにも活用されている。

そこで各地で定着しはじめた、デュアルシステムの活用の実際とポイントについて実例を挙げながら紹介していく。

 

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デュアルシステム大成功!実習生が毎年入社!

◎都立葛西工業高等学校編/中川インテリア株式会社

 

◆取材:富樫のぞみ/文:五十川正紘

※都立葛西工業高校の過去掲載記事はコチラ

 

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実習生の入社理由は、社風を気に入ってくれたから

ds_nakagawa05住宅や各種建物のカーテン、壁紙、床材などのインテリアの施工工事を手掛ける中川インテリア株式会社は、2013年度から今までに計3名の実習生を受け入れてきた。

今年の4月には初めて実習生1名が同社に入社。同社の代表取締役社長、中川晶博氏は、「当社の社風についてよく理解し、また気に入ってくれたからこそ入社を希望してくれたと思う」と語る。

同社の社風や、実習生の指導方針などについて、中川氏から話を伺った。

 

 

満足度の高い働く環境づくりを進めたからこそ、社員に対して遠慮はしない!

─御社の社風について伺いたい。

 

ds_nakagawa02同社ショールーム内では大胆な壁紙を使ったスペースも

当社は、仕事の量よりも質を大切している、昔ながらの内装工事会社です。

仕事をお引き受けした以上は、絶対に無責任なことはせず、お客さまにご満足いただけるクオリティの仕事をする……という創業以来の考えが、会社全体にしっかりと根づいています。

そのため、たとえ大きな施設の内装工事案件でも、できるだけ外注はせず、自社で責任をもって現場の施工管理に当たっています。

また、昔ながらの会社である一方、建築業界の中小企業としては珍しく、就業規則を策定し、給与制度や休暇制度をはじめ人事諸制度を明確に定めています。

社員たちにしっかり仕事をしてもらいたいと思えばこそ、働く環境をしっかり整える必要があると考えるからです。様々な人事制度がしっかり整っていれば、社員たちは安心して長く働き続けられると思います。

このようにして、働きやすい環境づくりに取り組んでいますから、仕事に関しては、社員たちに対して遠慮はしませんし、社員たちも当社の姿勢に対して理解を示し、一生懸命仕事に取り組んでいます。

 

─「社員たちに対して遠慮はしない」とは、例えばどのようなことか?

 

ds_nakagawa01同社ショールームの一角に展示されているカーテン

常に締切りを意識して仕事をしてもらいます。

当社の就業時間は8時から17時30分で、その後、社員が残業するとしても19時30分までに必ず退勤してもらいます。そのため、残業代は月60時間分の定額制にしています。

どんな仕事も、完成するまでダラダラと時間に制限なく続けるのではなく、締切りを決め、その範囲内で完成できるように集中して取り組むべきです。

仕事に締切りがあれば、社員一人ひとりに緊張感が生まれますし、また、その緊張感なくして、社員一人ひとりのスキルや能力の向上はないと思います。

 

 

実習生や若手の指導は、チームワークを保つために礼儀を重視!

─実習生や、今年4月に入社した昨年度の実習生の今の仕事内容は?

 

実習生は、基本的には社員たちと一緒に内装工事の現場に出て、社員たちの指示に従って、その手伝いをしています。その他、お客さまとの打合せの場に同席することもあります。

今年4月に入社した昨年度の実習生は、6月までの見習い期間が終わったところです。ちょうどそのタイミングで、当社が公立学校のカーテン取り替えの仕事を受注しましたので、今はその現場で仕事をしています。

 

─実習生の受入れにあたり、何か準備したことはあるのか? また、実習生の指導方針は?

 

ds_nakagawa03同社で勤務する事務員の皆さん(本社内)

特別、準備したことはありません。実習生には、普段の当社のありのままの姿を見てもらっています。

また、指導にあたっては、実習生だけではなく若手社員も含めて、何よりも礼儀を重視しています。例えば、現場や職場のチームワークを保つために欠かせない「おはようございます」「お疲れ様でした」などの挨拶の徹底。

会社では、いろんな人が集まっている組織である以上、チームワークなくして仕事はできません。

また、チームワークは、後輩が先輩を敬うことで保たれると思いますし、それには、常に礼儀をわきまえられるように若手社員を躾ける必要があります。

新卒の未経験者を現場の施工工事責任者レベルまで育てるのに、10年はかかります。ですが中途採用は行わずに、当社は創業以来、新卒者のみを採用して、自社で一から育てています。

礼儀をしっかりわきまえられる理想の人材を確保するには、できる限り若い人を採用し、一から礼儀を躾けた方がよいと考えているからです。
このように礼儀を重んじている当社は、いかにも昔ながらの会社と思われるかもしれませんが、この方針は、これからも代々、受け継いでほしいと思います。

また、当社は、会社と社員たちとの信頼関係や、社員同士の親睦を深めるために、様々な社内行事をことあるごとに催しており、それも昔ながらの会社と言える部分かもしれません。

社内行事では、社員だけではなく、その家族も自由に参加できる「家族会」という行事も毎年開催しています。

社内行事はいつも大変好評で、社員やご家族の皆さまが思う存分楽しんでいらっしゃる姿を見られるのは、嬉しい限りです。

 

 

働く時は働き、遊ぶ時は遊ぶ!

─実習生や若手社員は、昔ながらの会社を感じさせる部分が多い御社のことをどのように感じていると思うか?

 

ds_nakagawa04社内イベント時の写真の一部

実習生や若手社員は、当社について、旧態依然であるというマイナスイメージではなく、働きやすいメリハリのある社風の会社だと感じているのではないでしょうか。

仕事に関しては社員たちに遠慮することがないため、厳しい会社だと思われることもあると思います。

しかし、様々な社内行事では、いつも社員全員が自ら参加し、役職や年齢問わず、お互いが家族に近いような感覚で接しているため、普段の会社の厳しさを忘れて楽しんでいると思います。

そういうメリハリがある、つまり「働く時は働き、遊ぶ時は遊ぶ」という社風に対して、社員たちは、「この会社なら、仕事をしっかり覚えられるし、安心して長く働ける」と感じるのではないでしょうか。

逆に、厳しさだけを感じる会社や、全く厳しさを感じない会社に対しては、「この会社で働き続けて大丈夫なのだろうか……」と不安になると思います。

当社での半年間の実習を経て今年の4月に入社した社員は、そのメリハリのある社風を感じられたからこそ、当社への就職を決めたのだと思います。

また、そう思うと、実習生に当社のありのままの姿を見せていて本当に良かったですし、それが、デュアルシステムにおける、企業側のポイントになると思います。

 

 

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◉プロフィール

中川晶博(なかがわ・あきひろ)氏…1958年生まれ。東京都江戸川区出身。1982年、早稲田大学教育学部卒業後、インテリア専門商社の株式会社サンゲツに入社し、営業職を務める。1984年、中川インテリア株式会社に入社し、カーテン、壁紙、床材などのインテリアの施工・営業などの業務を担当。2003年、同社代表取締役社長に就任。

 

◉中川インテリア株式会社

〒133-0052 東京都江戸川区東小岩1-31-5

TEL 03-3650-6111

http://www.nakagawa-in.co.jp

 

 

 

 

◆2016年9月号の記事より◆

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