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東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック  院長 新谷悟氏  

皆さん、の中に投資していますか?

◆取材・文:加藤 俊 /文:渡辺 友樹

 

東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック (2)東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック  院長 新谷悟氏(しんたに・さとる)…昭和36年香川県高松市にて生まれる。県立高松高校卒業後、昭和63年岡山大学歯学部卒業。大学院に進学して、口腔がんに関する研究で博士号取得。平成6年愛知県がんセンターで外科医研修。平成9年ハーバード大学に留学。平成13年愛媛大学医学部助教授。平成18年昭和大学 顎口腔疾患制御外科学教室主任教授・口腔外科科長に就任。平成22年口腔がんセンター センター長に就任。平成23年東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニックを開設して現在に至る。

銀座の中心から歯科治療の在り方を変える!

銀座の中心にある歯科クリニックと聞くと、お金持ちやセレブが通うような、ホワイトニングなど審美歯科を行うクリニックをイメージしてしまう。しかしこのクリニック、一般歯科・審美歯科など幅広い診療科目を用意しているものの、実は、口腔がんの治療をはじめとする口腔外科治療が専門。それもそのはず、院長は昭和大学口腔外科主任教授、科長や、口腔がんセンターのセンター長を務めた人物なのだ。

そんな「偉い先生」がなぜ、地位を捨てクリニックを開業するに至ったのか。また「銀座」を拠点と定めた理由とは。

東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック院長の新谷悟氏に話を聞いた。

 

業界を変えたい。後進に影響を与えたい。

東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック (4)東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニックの待合室。ここが歯科医院であることを忘れさせるお洒落な空間で、さすが銀座にあるクリニックだなと。

東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック (2)「大学病院のトップを経験した立場から自分に何ができるか考え、〝口腔外科の治療を第一に捉える〟歯科クリニックを、銀座のど真ん中でやってやろう。私が銀座のど真ん中でクリニックを始めれば、業界内外で目立ち話題になるのでないか。そうすれば、自分達の既得権益を守ることに躍起になっている業界や、後進たちも変わるのではないだろうか。そういう想いで、当クリニックを開業しました」(新谷氏、以下同)

 

同クリニックが、口腔外科の治療を第一に据えるのには、明確な理由がある。口腔内の異常は、放っておくと癌をはじめ、全身の病気、命に関わるような病気に繋がる恐れがあるのだという。いやはや、口は災いの元とはよく言ったもので、字義通りの意味もあるということか。ところが、こうした意識はまだそれほど浸透していない。新谷氏が、銀座という都会の中心地、一番目立つ場所でクリニックを開業するのは、この世間の認識を変えたいからに他ならない。

 

東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック (10)

「儲からない、お金にならないという理由で、口腔癌治療、口腔外科治療は人気がありません。多くの歯科医が、インプラントや美容・審美歯科、そういった方面を手がけたがります。ご存知のように、これらは高額で利益を上げやすいですから。もちろん、当クリニックでもインプラントや美容・審美歯科を診療科目のひとつとしていますが、あくまでもまずはお口の中の治療ありき、その後のメンテナンスの一環として、患者さんの希望があれば行うという位置づけです。

なによりも重要な病気の発見や治療がまず先に来なければならない。そう考えています。口の中のがんは、唯一目に見える癌です。つまり本来は早期発見が可能なのです。口の中の健康状態を気遣うことを軽視し、ひとたび病気になったら、これはもう仕事どころではありません。経営者の方であれば会社や工場を畳まなければならず、結果的に生活できないという状況を招くこともありえます。

東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック (7)口腔癌の様子

何より口腔内の病気は、話すこともできず、食べることもできずという状態になることが多い。これほど辛いことはないでしょう。

健康を気にする方は多いですが、口の中の状態を気にする方は少ない。皆さん、ビジネスをするうえで、事業や設備には当たり前のように投資するでしょ。でも、その前に自分の口の中にだって、ちゃんと投資しないと(笑い)」

 

早期発見、そしてセカンドオピニオンによって一人でも多くの患者を救いたい。患者が求める、患者に優しい治療を行いたい。そんな理想を、クリニックという場でどこまでできるか。

 

「当クリニックでは、お忙しければ休日や時間外も対応しています。患者さんには、まずは、たっぷり時間を取りながら、お口の中の状態を完璧にしませんかという提案をしています。一度完璧にしてしまえば、その後は数カ月おきの通院で、きれいにメンテナンスします。まずは一度、気軽にお問い合わせください」

東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック (1)新谷氏の歯科治療にかける熱意にあてられたのか、普段何とはなしに選んでいる歯医者さんの選び方を考え直そうと思った。なんとなく家に近いところを選んで、短時間の治療に何回も通うことが〝当たり前〟と思っていたが、そうではなく、たとえ家から遠くても、信頼できる歯科医に、数カ月に一度通う方がいいと。新谷氏のところであれば、銀座に遊びに行くつもりで、買い物や、おいしいものを食べるついでに立ち寄れる。口を開けて寝ているうちに、口の中をメンテナンスしてくれる、そんな歯医者の在り方も悪くないと思えた。

 

 

祖母を舌がんで亡くし、口腔外科医を志す

「三十数年前になりますが、高校卒業後に祖母を舌がんで亡くしました。食事も取れず、話すこともできず、口から血を噴き出すこともある祖母の姿を目の当たりにし、こんな風に苦しむ人を一人でも減らしたいという思いから、口腔がんの治療に携わりたい、口腔外科医になりたいと考えるようになりました」

 

実体験から生まれた強い思いに動かされて新谷氏は、岡山大学から大学院、そして愛知がんセンターでの外科医研修と、口腔外科医としての道を順調に歩んでいく。患者から指名されることもあるような期待のホープだったという。その後も、口腔外科医療への飽くなき探究心からハーバード大学に留学し、最先端の口腔がん治療を研究。この臨床と研究実績を買われ、帰国後は愛媛大学医学部助教授に。さらに平成18年、昭和大学の口腔外科主任教授兼科長となり、東京大学と協力し、「スーパー医療特区」におけるがん免疫療法の治療を行っている。

そして平成22年、口腔がんセンターのセンター長に就任する。とまぁ、一見すると、絵に描いたような輝かしいキャリアを歩んできた人なのである。

 

 

既得権益を守りたい業界の中で

しかし、新谷氏の注力してきた免疫療法や統合治療の研究は、既得権益を守ろうとする歯科医師会などからあの手この手の圧力を受け続けたという。

 

「患者さんにとってみれば、好き好んで舌の切除などしたくないのは当然で、たとえ西洋医学の範疇ではないような治療法であっても、できることがあるならば何でも取り入れたい、これが当たり前の気持ちだと思うんです。

しかし、免疫療法、統合治療など、とにかく何であろうと、慣例を破って新しいことを行えば叩かれる世界でした。こうした妨害は新たな治療の研究などに留まらず、たとえば口腔がんの無料相談を行うと歯科医師会から『無料でやられると我々の患者が減るから困る』と言われたりする。こういったことがたくさんありました」

 

大学医局の噂に違わぬムラ社会ぶりには、慨嘆せざるを得ない。ただ、それ以上に恐ろしいのは、これら悪しき慣習が、象牙の塔の内側の話に止まらないことだ。新谷氏曰く、一般の我々患者に対する歯科治療の内容にも大きな弊害を与えているとのこと。

 

東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック (8)

「たとえば、歯の詰め物ですが、金属の銀歯はアマルガムといって、水銀と金属の粉を振ることで飽和させて粘土のようにして、それを歯に詰めるわけです。これが良い治療、正しい治療とされてきたわけですが、近年、これが水銀中毒を引き起こし、アルツハイマーや、がんなど全身のさまざまな不調や病気の原因となることが分かってきました。そうした弊害が明らかになってなお、歯に金属を詰める治療を行っているのは日本とドイツだけです。

理由は、保険診療になるから。ここにも、既得権益を守る力が働いているわけです。詰め物の治療が保険適用外である他の国では、患者が自分で選ぶことができ、詰め物をする必要がある場合にも、多くの患者が金属ではないものを選びます。リスクのある金属の詰め物を選びたくないのは、人として当然のことでしょう」

 

 

突然の父の死、開業へ

そういった疑問や葛藤を抱えながらも、要職にあって多忙な日々を送る新谷氏に転機が訪れる。

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「突然父親が倒れ、亡くなったんです。平成23年のことでした。このとき、倒れた父のそばで、意識が戻るのをただひたすら待つ『何もしない時間』を久しぶりに過ごしながら、懸命に父の治療を行う医師や看護師の姿を見て、ハタと気づいたんです。自分もこれをやりたい、患者さんのそばにいる『主治医』になりたいと。もともと、祖母の死をきっかけに口腔外科医を志したときから、患者さんのそばにいたいという想いはあったのですが、父の死によって改めて決意できたんです」

こうして平成23年、東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニックを開業。銀座の地から業界への問題提起を続けている。

 

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「普通の歯科と少し違って、口臭、口内炎から口腔がん、親知らずや顎関節症、味覚障害、いびき、歯ぎしり、矯正など、あらゆる歯と口の病気に対応できますので、もしもお困りの方などいらっしゃれば、お力になれればと思います。土曜日も診療をしております。よろしくお願いします」(新谷氏)

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東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック (6)新谷クリニックは、通常歯医者という言葉で連想されるイメージとは程遠い。アットホームな雰囲気に包まれている。完全個室制なので、すぐ横で他人が治療されている様を見ることもない。通常は嫌でも耳に入ってしまう、あの耳をつんざくドリルの切削音を間近で聞くこともないそうだ。筆者にとっては、かなりありがたい点。

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●東京銀座シンタニ歯科口腔外科クリニック

〒104-0061 東京都中央区銀座1-8-14 銀座大新ビル5F

TEL 03-3538-8148

http://www.ginza-somfs.com/

 

2014年7月号の記事より
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