オビ 特集

ƒvƒŠƒ“ƒg学校と企業を行き来しながら、座学と実務訓練を長期に行う、ドイツ生まれの「デュアルシステム」が日本の専門高校に導入されてから12年。

もともと高卒者の就職率向上と、中小企業の人材不足を解消する目的で始まったが、いまやその効果も活用法も多様化し、地域全体を巻き込んだまちおこしにも活用されている。

そこで各地で定着しはじめた、デュアルシステムの活用の実際とポイントについて実例を挙げながら紹介していく。

 

‚¨‚Ñ2

特別な採用活動は一切不要!若者が集まる会社の秘密を探る

◎都立北豊島工業高等学校編/大和合金株式会社・三芳合金工業株式会社

 

◆取材・文:富樫のぞみ

※都立北豊島工業高校の過去掲載記事はコチラ

 

ds_miyoshi02

溶解・鋳造時の様子

 

 

記者の目

作業場の入り口に立った瞬間、熱い風を全身に感じた。熱源である溶解炉とは相当に離れているはずなのに、汗がじわじわとにじみ出る。

私よりもう何歩か入ったところでは、学生たちが熱心に見学している。安全服を着用しているとはいえ、体感温度は相当なものであるはずだ。

それでも彼らは終始、炉を見据えてまっすぐに立ち、これから起こることを見逃すまいと意識を集中させていることが見て取れた――。

 

特殊銅合金業界トップを走り続ける大和合金株式会社(以下、大和合金)。ものづくりを学んできた学生たちにとって、その〝現場”は熱さを忘れるほどの驚きと興奮に満ちたものだ。

事実、大和合金ではデュアルシステムの受け入れを開始した3年前から、実習生の採用に成功しているという。若者たちがこれほどまでに就業を熱望する理由とは。

 

 

学生たちが魅かれるのは、昔ながらの義理人情の世界

◎萩野茂雄会長インタビュー

ds_miyoshi03_kaicyo若手人材をいかに確保するかに頭を悩ませている方は多いだろう。それは重工業分野においてもまた深刻な問題のひとつである。

だが大和合金は例外だ。特別な採用活動を行わずとも、社員同士や取引先、はたまた噂を聞いた学校と、さまざまな縁を通じて、自然と若者たちが集まってくる。

その背景にあるのは、創業以来変わらぬ「社長と社員の距離の近さ」だった。

 
―若手社員も割合積極的に仕事を楽しんでいる印象を受けたが。

 

うちはね、家内工業なんですよ。社員の家族や兄妹、夫婦に友達と、人と人の輪が繋がってここまで続いてきた。有り難いことです。

もちろん未経験から始めた者も多いですよ。学ぼうという意欲さえあれば、下知識はなくても絶対に伸びる。これは間違いありません。

だからうちは老いも若きも、勉強熱心ですよ。定期的に大学の先生方をお招きして、社内全体で常に新しい技術と知識を皆で勉強しています。

良い品を作るために誠実一路、真面目に努力を惜しまない。本当に自慢の社員ばかりです。

 

―実習生の印象は?

 

ds_miyoshi01工場内風景

今の若い子たちは、とても真面目だね。昔の工業高校の学生というと、やんちゃな子も多かったものですが、そういう子はとんとみません。ちょっと寂しくなるくらいですよ。

せっかく若いんだから、失敗を恐れずに、もっと思いっきり暴れまわってもらわないと。

それでうっかり失敗したってね、「社長が暇にならないように、わざと失敗してあげたんですよ」くらい言ってやればいいんです。この台詞はね、とある昔なじみの社員が実際に言った台詞ですが、実に真理を突いているでしょう。

若いのが失敗した時に、頭下げてなんとかするのが社長の仕事。それをやらないなら、社長なんていらないですよ。

 

―若手人材の育成のために、意識していることは?

 

良い仕事が人を育ててくれるのですよ。私はね、取引先の皆さんに「どんな無理難題でももってきてくれ」って話をしているんです。

一生懸命頭をひねって、やっと答えをみつけるから仕事っていうのはおもしろい。ただ日銭をかせぐために働くんじゃ、そりゃあ若者だって退屈でしょう。

私がしていることといえば、社員に声をかけて歩くだけ。「今日はどうだ」「家族は元気か」なんて、1人ひとりの顔を見て、話をする。当たり前だけど、こういう対話が大事なんですよ。

 

 

製品作りの一端に参加モノづくりの現場を知る

以前より多くの学生や業界関係者の見学を受け入れてきた大和合金だが、デュアルシステムのような1年間継続しての実習生の受け入れは初めてだという。学生たちがどのような作業を行っているのか、さっそく見ていこう。

ds_miyoshi04工場見学中の学生たち

来社した実習生は、会社見学をしながら安全面に問題のない範囲でモノづくりの現場にも携わってもらうというのが大和合金の基本方針だ。なかでも実習生にとってメインとなるのは、砂型鋳物と呼ばれる作業だ。

砂型鋳物とはその名の通り、特殊な砂を使って鋳型をつくり、そこに高温で溶かした金属を流し込むことで製品を作る技術である。

型抜後、さらに仕上げ加工が必要になるという手間はあるが、製品形状や大きさの制限がなく、作れるものの幅が広いのがメリット。少ロット生産に向いていることもあり、新製品の開発相談が多い大和合金にとってはうってつけの手法といえる。

 

実習生は専用の砂を枠につめたり、完成した鋳物を取り出したりといった作業を担当。手がけた鋳物のうち、検査をパスしたものは、製品として取引先に届けられる。この点もまた、実習生にとってやりがいとなっている。

 

「1年間という長い期間の中で、お互いに〝顔なじみ”になれるのは、デュアルシステムならでは。

実習中はもちろん、運動会や音楽会などの会社行事にも積極的にお誘いし、親睦を深めていくことができるなど、今までにないお付き合いができるのが魅力ですね」と実習担当の責任者は話してくれた。

 

 

新たな価値を世界へ広める3代目社長・萩野源次郎氏のグローバルな若手育成手法

ds_miyoshi05_gen大和合金の歴史は、挑戦の歴史です。今、私たちが挑んでいるのは、海外市場への本格参入。牽引するのは、20代・30代の社員です。

ちょうどこの取材を受けた日、海外での専門学会にはじめて弊社の研究開発課の社員が参加しました。まだ30代と部署内でも若手ですが、その向学心には頭が下がる思いです。

さらに翌週に行われるベトナムの展示会は、有志の若手社員が主導となりプロジェクトを進めています。

「義理人情を忘れず」「良い仕事で人を育てる」。親子3代受け継がれた大和合金の魂を胸に、今後も意欲ある若手社員に一つでも多くのチャンスを提供し、世界を舞台に活動を広げてほしいと願っています。

 

 

オビ 特集


◉プロフィール

萩野茂雄(はぎの・しげお)氏

1932年生まれ。東京都出身。創業者である父の意志を継ぎ、大和合金・三芳合金株式会社の2代目社長に就任。最新技術を積極的に採り入れ、数多くの新銅合金を開発。特殊銅合金業界No.1の地位を確固たるものとした。現在は大和合金株式会社の社長業を息子の源次郎氏に譲り、相談役を務めている。

 

萩野源次郎(はぎの・げんじろう)氏

1970年生まれ。東京都出身。上智大学大学院卒業後、花王株式会社ハウスホールド研究所を経て大和合金株式会社に入社。2013年大和合金株式会社の3代目社長に就任。事業フィールドを海外に広げ、更なる飛躍を目指す。

 

 

◉大和合金株式会社

〒174-0063 東京都板橋区前野町2-46-2

TEL 03-3960-8431

http://www.yamatogokin.co.jp/

 

◉三芳合金工業株式会社

〒354-0045 埼玉県入間郡三芳町上富508

TEL 049-258-3381

 

 

 

 

◆2016年10月号の記事より◆

WEBでは公開されていない記事や情報満載の雑誌版は毎号500円!

雑誌版の購入はこちらから