9月のM&Aは前年同月比6件減の69件となり、2カ月連続で前年を下回った。前月比では3件減った。対前年比で2カ月続いてマイナスとなるのは2018年7月以来。ただ、1~9月の累計では602件と前年同期を50件強上回り、2009年以来10年ぶりの高水準にある。活況が続いてきたM&A市場に変調の兆しが出てきたのかどうか、その判断材料として第4四半期のスタートである10月の動向が注目される。

全上場企業に義務付けられた東証適時開示のうち、経営権の移転を伴うM&A(グループ内再編は除く)について、M&A仲介のストライク(M&A Online)が集計した。

 

3月、2月、8月に続く今年4番目の件数

9月のM&Aの総開示件数69件の内訳は買収54件、売却15件(買収側と売却側の双方が開示したケースは買収側でカウント)。このうち海外案件は買収12件、売却2件だった。総件数は2カ月連続で前年同月比マイナスとなったものの、月別では3月82件、2月77件、8月72件に次ぐ今年4番目で、水準そのものは低くない。

海外案件を国別にみると、米国5件(うち売却1件)、シンガポール3件(同1件)、ベトナム2件、韓国、豪州、イタリア、ドイツ各1件。

 

金額トップはヤフーのZOZO買収

金額トップは衣料通販サイト「ゾゾタウン」を運営するZOZOをTOB(株式公開買い付け)を実施して子会社化するヤフー(10月1日付でZホールディングスに社名変更)の案件で、最大4007億円に上る。9月12日に発表した。日本企業がかかわるM&Aとして今年3番目の大型案件で、今年のM&A市場で最大のサプライズとなった。50.1%の株式取得を目指し、同30日に買い付けがスタートしたばかり(~11月13日まで)。今秋開設予定のオンラインショッピングモール「PayPayモール」の目玉としてZOZO出店企業の参画を見込む。

 

東京センチュリーは、米国の航空機リース大手、アビエーション・キャピタル・グループ(ACG、カリフォルニア州)の買収を決めた。株式75.5%追加取得し、完全子会社化する。取得金額は約30億ドル(約3213億円)。東京センチュリーとして過去最大のM&Aで、今年12月の買収完了を目指している。

航空機リースは新興国や途上国の旅客輸送需要の増加で、安定的な市場拡大が見込まれている。AGCは中型機に強みを持ち、6月末時点の保有管理・発注済み機体数は約500。東京センチュリーは2017年にAGCの株式20%(19年3月に24.5%)を取得し、持分法適用関連会社としていた。

住友化学は豪州の農薬大手ニューファーム傘下でブラジル、アルゼンチンなど南米4カ国にある現地子会社を約700億円で買収することを決めた。北米や中国を上回る世界最大の農薬市場である南米で強固な事業基盤を確保する。2020年上期中に買収を終える予定。

 

クリエイト・レストランツは国内外で150億円を投資

飲食店経営大手のクリエイト・レストランツ・ホールディングスは国内外の大型M&Aを相次いで発表した。総額は約150億円。北関東を中心に和食レストラン40店舗を展開するいっちょう(群馬県太田市)を70億1000万円、北米でイタリアンレストラン20店舗を持つ米イルフォルナイオ (カリフォルニア州)を約80億円5000万円で買収を決めた。

同じく外食系では、JBイレブンがマウンテンコーヒー傘下で喫茶店・レストラン経営のハットリフーズ(名古屋市)の子会社化を発表した。JBブレインは東海地区を地盤に、ラーメン店「一刻魁堂」や中華料理「ロンフーダイニング」を展開しているが、新たな業態を取り込む。

食品関連M&Aは2件。伊藤ハム米久ホールディングスはハム・ソーセージ・ベーコン類を製造販売する明治ケンコーハム(東京都江東区)を、日鉄物産はソーセージや鴨肉、焼豚など畜肉加工食品を開発・輸入するコスモフーズ(大阪市)を子会社化することにした。

 

ゆとりの空間はモブキャストの傘下に

著名料理家の栗原はるみさんが経営にかかわる、ゆとりの空間(東京都目黒区)はモブキャストホールディングスの傘下に入ることになった。モブキャストは第三者割当増資を通じて60.2%の株式を3億円で取得する。ゆとりの空間は1995年に設立。栗原はるみさんが暮らしのアイデアやライフスタイルを提案する生活雑貨ショップの経営のほか、オリジナルの食器やキッチン雑貨、調味料、インテリア小物など展開する。

 

9月M&A:取引金額上位