生成AIは企業の業務を効率化しつつある

少子・高齢化やそれに伴う人手不足が深刻さを増す日本では、生産性の向上や業務の効率化が重要な課題となっている。企業向けクラウドシステムなどを手掛けるFIXERが実施した日本企業の経営者や管理職を対象としたアンケート調査によると、生成AIを利用して「業務効率が向上した」との回答が8割超にのぼった。生成AIに質問した回答が「適切な結果だった」との答えも6割近くに達した。生成AIを業務に利用していると答えた人は約2割にとどまる一方、実際に使った人の多くが効果を実感していることが明らかになった。今後は生成AIを効果的に利用する企業と、そうでない企業の生産性向上の差が広がっていく可能性がある。

 

生成AIで「大幅に業務効率が向上した」は2割、「ある程度向上」6割

FIXERは企業向けクラウドシステムのほか、安全性を高め、使いやすくした生成AI「GaiXer(ガイザー)」を提供している。調査はFIXERが全国の従業員300人以上の企業を対象に10月17~20日に実施し、800件の回答を得た。情報・通信のほか、金融・保険、不動産、流通・小売りなどの企業が対象となった。生成AIは人間の指示に基づき文章や画像を自動で生成する。企業は生産性向上に向けて導入を進めており、2024年以降に利用がさらに拡大するとみられる。

 

アンケートで「生成AIを利用しているか」と聞いたところ、「業務で利用している」は21.9%だった。利用している人に対して「生成AIを使って実際に業務の効率は向上したか」と質問したところ、「大幅に効率が向上した」と答えた人は18.3%だった。「ある程度効率が向上した」は62.9%に達し、「効率が向上した」との回答は合計で81.2%にのぼった。利用に踏み出した人のほとんどが業務効率の向上に成功していることがわかった。一方で「変わらない」との回答は15.4%、「効率が下がった」は3.4%に過ぎなかった。

 

生成AIが「不適切な結果」との回答は非常に少なく

生成AIを巡っては、事実と異なる回答をもっともらしく生成してしまうハルシネーション(幻覚)と呼ばれる現象が起きるという課題が指摘されている。今回のアンケートで「生成AIが生成した結果(回答)はどの程度適切だったか」と質問したところ、「ほぼ全て適切な結果だった」と答えた人は10.3%だった。「概ね適切な結果だった」との回答も47.4%に達し、57.7%にのぼった。生成AI各社は能力の高い新モデルを相次いで発表しており、徐々に回答の正確性が向上しているとみられる。

 

「適切な時と適切でない時と同程度」との回答も35.4%に達した。適切な回答を得るには詳細なプロンプト(指示文)を入力することが必要だ。生成AIの能力の問題だけでなく、こうした理由で適切でない回答が出てくる人も少なくない。もっとも、「概ね不適切な結果だった」との答えは6.3%、「ほぼ全て不適切な結果だった」との回答は0.6%に過ぎなかった。今回のアンケートでは「不適切な回答が多かった」との回答は非常に少なく、生成AIの能力が向上していることが浮き彫りになった。