日進月歩で伸びているスタートアップ企業にとって、通信インフラは悩みのタネだ。

日乃出工業株式会社代表取締役西田啓氏は「通信インフラは相手に合わせて互いに成長していくものでなければならない。だから時には『売らない』ということもある」と言う。

その考えの本質を伺った。

 

 

「どこも一緒」の工務店から通信インフラに特化するまで

日乃出工業株式会社は、主にスタートアップ企業を対象に電話・ネットワークなど通信環境のオフィスインフラを提供している会社だ。

 

「日乃出工業株式会社、なんてしかめつらしい名前をつけていますが、実はまだ一昨年創業したばかりの新しい会社なんです。

私は今32歳ですが、私くらいの年齢の経営者だと、なかなか信頼してもらえない。だからこういう名前にしたんです(笑)」

 

同世代の社長さんにこのことを話すと同意してもらえますし、笑ってもらえます、と話すのは日乃出工業株式会社代表取締役西田啓氏。

同社は当初、よくある建設業の工務店としてスタートしたが、現在ではその売上の90%以上が内装リフォーム、特に通信インフラ構築とその運用で占められているという。

日乃出工業株式会社 代表取締役
西田啓氏

 

なぜ、従来の工務店から通信インフラ専門とも言える業態に転換したのだろうか?

 

「私自身、10年ほど建築業界で仕事をしているのですが、そこで気づいたのは工務店なんてどこも一緒、やっていることも同じだということです」

 

どこにある工務店も、建築もやるし電気・水道などのライフラインの設置もやる。照明もつけるしエアコンもつけてくれる。

 

唯一違うことといえば営業力。

社長の顔がどれだけ広くて人脈があって仕事をとってこれるか。そういうやり方で今までずっとやってきていた。

 

「じゃあ、今から参入する私は、どういう点を前面に出してアピールしていくべきか、を考えた時に、通信インフラが頭に浮かんだ。

10年間建築業界に身を置いてきましたが、周囲を見回しても通信専門の工務店というのは見当たらなかった」

 

それに高校時代、電気科に在籍していて、そちらの面には詳しい。こちらで勝負していけないか、と西田社長は考えた。

「様々なベンチャー企業の経営者と会って話を聞いていく中で、一番困っているのが通信インフラ、ネット環境の弱みだ、ということにも気づいたんです」

 

起業家が一人で会社を立ち上げていく上で、ネットなどの通信設備は必要不可欠だ。

そしてこれは会社が拡大していくに従い、法人携帯・複合機・ネットセキュリティなどの様々な問題が生まれてくるジャンルでもある。

これらに一般の工務店が対応するのは難しかった。

 

「そこをサポートできるのが弊社の強みです。

スタートアップ企業は成長に合わせて求める通信インフラが変化する。

それにアドバイスできるのは、壁を建てて色を塗っているようなどこにでもある工務店ではなく、通信インフラ専門の人間だ、と」

 

以前は日乃出工業株式会社でも建築の仕事をしていたという西田社長だが、現在そちらは開店休業状態だという。

「今は『工業』というのは名ばかりになっていますが、もっと建築の仕事もやっていきたいので、いずれ『日乃出工業』と『日乃出通信』の2つの柱でやっていきたいですね」と笑う。

 

 

売るだけ・売りたいだけでは寄り添っていけない

小さい頃は大工になるのが夢だったという西田社長。

起業までの経緯を伺った。

 

「出身は埼玉県です。父がロボット関係の仕事をしていたので、電子技術やモノづくりの精神が身近にある環境で育ちました。

高校は工業高校の電気科に進み、その後は早く仕事がしたかったので大学には行かずに専門学校へ。

そこで建築を学んで、卒業後に建築事務所に就職しました」

 

建築事務所での勤務を経て独立、その後も建築業界で働くことになるのだが、この頃から様々なベンチャー企業の経営者との交流を持っていた。

 

「ベンチャーは一足飛びに経営を伸ばします。徐々にオフィスや人員の規模を拡大して、というものではなく、時には業務拡大のため一気に事務所面積が4倍のオフィスに引っ越したりする。

成長が著しい分野なんです」

 

2000年代のITバブル以降に一世を風靡したベンチャー企業は、リーマンショックから10年を経て近年飛躍的に拡大している。

2016年の資金調達額は2000億円超で、この数字は2006年以降で最高額だ。年間5万社が新たに起業しており、今もなお、成長している(ジャパン・ベンチャー・リサーチ調べ)。

 

「こういう企業の経営者たちは常に前を向いていますし、日々刻々と成長曲線が変化している。それに対応できる建設会社は今までは無かった」

 

例えば、と西田社長は言う。

 

起業した会社が電話、コピー機、パソコンが欲しいという。それを提供するだけならどこの会社でもできる。

しかし、日乃出工業株式会社は、必要がなければ提供しない。

経営者と相談し、その目標に合わせてインフラを変化させていく。その中で、本当に必要なもの、今後大事になっていくもののみを提供していく。オフィスを引っ越すたびに話を聞き、アジャストできるようにしていく。

 

「自分自身が経営者だからなのか、相手の経営者に目線を添えて話をしています。よくいるサラリーマンの営業は、売るだけ・売りたいという考えだけでしか話をしていない。

それでは日々長足の進歩をしていくスタートアップ企業には追いついていけません。

売りたいから売るのではなく、相手の夢・目標に応じたものを売る。私はヒノデニアンスピリット、と呼んでいます(笑)」

 

ですから、コンペになった時に多少金額が高くても弊社を選んでいただけることが多い、と西田社長はその方針に自信を持つ。

 

 

これからの人材不足時代に備え情報インフラの保守・運用も提案

「成長が激しい業界だからこそ、ベンチャーは常に人が足りていません。今後はそういった問題へのサービスも提供していきたい」と西田社長は今後について話してくれた。

 

ITエンジニア不足は深刻だ。

国内のITエンジニアは2015年の段階で既に約17万人が不足、それが来年2019年には退職者が入職者を上回る逆転現象が置き、2030年までには59万人が不足するという予想もなされている(経済産業省調べ)

 

もはや慢性的になっている人材不足はどこの企業でも悩みの種だが、それを解決する方法はないのだろうか。

 

「どの企業も、会計やパソコンのセットアップ・管理、セキュリティの保護などは総務の仕事です。大企業なら情報システム部を置いているところも多いと思いますが、スタートアップ企業だとなかなかそこまで手が回らない。

会社の規模が50人から100人に拡大しても『不便だなあ』と思いながら、使えない通信システムで日常の業務にあたっている、というところばかりです」

 

ですからインフラだけでなく、そういった日々の業務までこちらでフォローすることはできないか、と西田社長はその構想について話す。

 

「〝社外情報システム部〟と考えてもらいたい。

情報システムのような部署は売上を生み出すところではないので各社とも圧縮したいと考えている。そこで弊社で通信インフラを任せてもらう際に、その後の運用・保守までセットで提案していき、経費の削減に繋げてもらいたい。

企業が前進していくバックアップを、弊社で全て任せてもらえるようになればいい、と考えています」

 

建築から通信インフラへ。この業態の転換には怖さがあった、と言う西田社長。

 

「しかし、多くの人が困っているのを目の当たりにしていましたから。必要不可欠であるはずの通信インフラの面に、なかなか目が向けられていない。それも自分ならばそれがお手伝いできるのじゃないか、と。

今後はインフラサポートは元より、ウェブサービスの領域などでも幅広くお手伝いしていけるようにしたいですね」

 

 

今後も増え続けるであろうスタートアップ企業。

その戦う起業家たちの足元を支えるインフラを担いたい。西田社長の思いは、これから船出する起業家たちの力強い味方になるだろう。 

 

 

西田啓 

1985年、埼玉県生まれ。

工業高校電気科卒業後、建築の専門学校を経て検知器事務所に就職。

独立後、2016年6月に日乃出工業株式会社設立、以後現職。

 

 

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