健康づくりに不可欠!?一定量の放射能緊急取材!人類は原子力とどう向き合うべきか

 

今こそ真摯に、科学的に議論

酷い話だ。広島・長崎の平和祈念式典の挨拶で、脱原発を叫ぶことに何の意味があるというのだろう。原爆と原発は明らかに別次元の、しかもそれぞれ真摯に議論すべき人類の重要課題である。犠牲者とその遺族の悲痛を政治利用しているとしか、国民の目には映っていまい。とまれ不毛な神学論争にはそろそろピリオドを打ち、原子力とどう向き合うかを、科学的検証をもって決する時期に我々は達している。そこで長く原子力の民生利用研究に携わってきた斯界のオーソリティー、須郷高信工学博士に話を聞いた。これは間違いなく、目からウロコだ。(本誌特別取材班)

 

株式会社環境浄化研究所 代表取締役社長/工学博士 須郷高信氏

 

単に悲観しても、楽観してもダメ。〝正しく怖がる〟ことが肝要。

すべての物は毒である。その毒性は量で決まる──。

近代医化学の粗とされるルネサンス期の医学者、パラケルサスの有名な言葉である。

 

「たとえば塩です。1日に7グラム程度でしたら一生摂り続けても何の害もありませんし、むしろ体に有用ですね。しかし1度に200グラムも食べると人はまず死にます」(須郷博士、以下同)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

亜鉛やマグネシウムといった、このところサプリメントで人気のミネラル(微量金属)やアミノ酸、ビタミン類も同様で、過ぎたるは及ばざるが以上に、実は怖い物なのだ。つまりは両刃の剣、その怖さを正しく知り、正しく摂取することが肝要だという。

 

しかしそれと原子力とがどうリンクするのか。確かに原子力も両刃の剣だろうが、今回の福島原発のように刃が逆を向いたときの脅威は塩の比ではない。そもそも放射能は百害あって一利なし。体の安全面でいうと、ゼロでなければならないはずだ。

 

「いえ。量が過ぎるともちろん危険極まりない物質ですが、人間が生きていくには一定量の自然放射能が、実は不可欠なのです」

 

(!)。簡単にいうとこうだ。

 

今ある人間の姿形や性質、その所以は、地球の誕生(約46億年前)に由来する放射性物質、カリウム―40やルビジウム87、宇宙線に起源する炭素14などと密接に関係している。それらをなくして人類や生物の成立はありえなかった、という説さえあるのだ。

 

「現に今も、健康体の人は自ら毎秒5000~7000ベクレルの放射能を保有し、放出しています。これが体内にできたフリーラジカル(活性酸素)を無害化し、自然治癒力を保ったり成長を助けるなど、健康づくりに役立っているんですよ」

 

ちなみにベクレルとは放射能の濃度を表す単位で、生体への影響を示す線量当量の単位としてはシーベルトが使われている。安全圏と危険水域の〝しきい値〟とされる量が1シーベルト/年で、10人に1人程度が心臓疾患や癌のリスクを高めるなど、何らかの健康被害が懸念されるとし、10シーベルト/年では死に至るとしている。

 

「近隣の土壌や野菜から検出されている何々マイクロシーベルトという量は、その100万分の1の話ですから、万人にセーフとは必ずしも言えないかも知れませんが、何が何でも忌避すべきレベルの数値でもありません。それによる風評被害やストレスのほうがよほど深刻だと思いますよ。その意味では先ほどの塩の話と同じです。単に悲観しても楽観してもダメ。科学的に検証して正しく怖がること。これが肝要です」

 

恐るべし!グラフト重合技術。僅か10分でセシウム濃度がほぼゼロ

 

 

話は変わるが、先ごろ日本経済新聞(8月3日付)が報じたことで、すでにご案内の向きも多いだろう。須郷博士率いる環境浄化研究所は、今度の原発事故を受けてただちに千葉大工学部の研究グループ(斎藤恭一教授)と共同研究を開始、海中の放射性セシウムをスピーディーかつ効率的に捕集し、果ては最終処理まで視野に入れた、快挙というべき高機能繊維を開発している。それも基礎から分子設計、合成条件、分析、製品化、量産態勢まで僅か4カ月余りという超早業だ。

 

「今度の事故でもそうですが、政治家や当局、当該事業者は、いつも、ある意味で仕方ないんでしょうけど〝想定外〟という逃げ口上をよく使います。しかし我々科学者はその想定外を想定して研究を重ね、いつ、何が起きても対応できるよう、常に準備をしているものなんです。それが功を奏したということですね」

 

詳しく説明をしよう。

 

基礎となったのは博士が開発し、同研究所が様々な産業分野で民生利用している、〝グラフト重合〟なる放射線の応用技術だ。簡単にいうと、糸や布、不織布、膜、粒子などどんな素材でも、その特性を殺さずして、目的に応じた新しい機能を付与するための化学反応を利用した技術である。

素材に加速電子線やコバルトγ線を照射し、分子を切り取ることで元素の〝空き〟を作り、そこに目標別の吸着機能や消臭機能などを持たせるという仕組みだ。

 

今度の高機能繊維は、千葉大の実験によると、10ppmの濃度でセシウムを含む海水20ミリリットルに0・2グラム浸したところ、僅か10分でセシウム濃度がほぼゼロになったばかりか、その後、長時間浸していても繊維から再び漏れ出すことはなかったという。

 

恐るべし!
と言うほかない。

 

ちなみにグラフトとは〝接ぎ木〟のことで、よりよい花や実をつけるための園芸技術である。もともとは鉱山や採石場で発生する人体に有害なカドミウムを除去したり、都市鉱山と呼ばれる廃棄家電からレアメタルを捕集するために開発した技術で、昨年の春にはヨウ素を捕集する繊維を開発している。

今回の繊維と組み合わせて、福島原発から流出した放射能汚染水の処理に、早ければ今月からでも充てる予定だという。

 

最終処分法から逆算して設計。用途に応じてどのような形にも加工

水中や大気中から特定の物質だけを選択的に吸着し、捕集する技術はこれまでにも複数用いられている。人工的に合成されたゼオライト(沸石)や、俗に言う活性炭がそれだ。これらと博士が開発した機能性繊維との違いはどこにあるのか。

 

「1つはオールマイティーで威力を発揮する点ですね。たとえばヨウ素は元素状であったり、ガス状であったり、様々な形で海中や大気中を彷徨っています。それらを一元的に選択して、同時に取れるのは今のところこの繊維しかないと思います。もう1つは最終処分に困らないことです。ご存知の通り、ヨウ素は別としてもほとんどの放射性物質は半減期が数十年から何万年にもなります。その間、捕集した放射性物質はまとめてコンクリートで厳重に固めるなどをし、地中深く封じ込めておくしかありません。その点でも、この繊維は固体化して再び放出することがないよう最終処分法から逆算して設計しておりますから、300℃以下で溶融固化体(減容)にし、通常の保管容器に入れておけば安心、というわけです」

 

ちなみに繊維は用途に応じてどのような形にも加工できるそうで、福島原発用としては1本約100メートルのモール状にし、これを堤防内側の海域に並べ、スダレのように下ろし、3層のフィルターをつくって捕集する計画だという。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

環境・医療分野でも積極的な取り組み。ウイルスの感染力を1万分の1に低減

最後になったが、同研究所の概要とその様々な研究開発成果(製品群)についても、少し触れておきたい。

 

1999年、日本原子力研究所(独立行政法人、略称・原研、現・日本原子力研究開発機構)に在職中の須郷博士が、当時のベンチャー支援制度第1号認定を受けて設立した〝民間〟の研究所である。博士は少壮の頃から放射線グラフト重合技術を応用した高機能材料の研究開発に力を注いでおり、この稿で取り上げた海水中の特定物質(当時はウランやバナジウムなどの有用希少金属)を選択的に吸着、捕集する高機能繊維も、その原研時代に開発しているのだ。他にも高純度イエローケーキ(ウラン精鉱)の精製技術や、アルカリボタン電池用隔膜の技術を開発するなど、多くの注目すべき研究成果を上げている。

 

近年は〝暮らしに役立つ放射線研究〟を標榜、医療や環境の分野でも積極的な取り組みをしており、放射線技術を応用した高機能消臭剤や同マスクなど、これまでに発表した製品数は優に100を超える。

 

「マスクは埃や花粉はもちろん、ウイルスや雑菌、放射能の浸透まで遮蔽する高機能仕様です。被災地のガレキ処理にも大いに役立っていますよ」

 

とりわけこのところ注目を集めているのが業界初という高機能空気清浄機「ナノクレア」だそうで、化学消臭フィルターにくわえ、あのイソジンで知られるポビドンヨードを化学結合させた特殊な抗菌膜を搭載している。前者は花やアロマの香りはそのままにアンモニアや硫化水素系の悪臭を除去し、後者は接触したウイルス、細菌、結核菌などの細胞膜を破壊、感染力を1万分の1にまで低減するという。インフルエンザや院内感染対策に開発したが、こちらもやはり、被災地からの引き合いが急増しているそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

くどいようだが、いずれも放射線技術を応用した画期的な研究成果である。というわけで読者諸兄、少しは目からウロコが落ちましたかな?

 

 

須郷高信(すごう たかのぶ)

工学博士。株式会社環境浄化研究所代表取締役社長。1965年日本原子力研究所入所。放射線化学の研究に従事。1976年長寿命時計用ボタン電池の実用化に成功。科学技術庁長官賞受賞する。1989年超LSI製造用ケミカルフィルタ、1996年には自己再生型超純水製造装置の実用化に成功、1時間に10トンの製造技術を達成する。向坊賞受賞。1999年原研のベンチャー支援企業として⑭環境浄化研究所設立。テレビのコメンテーターや大学の講師として教壇に立つ傍ら、全国各地での講演会の講師として活躍中。

 

株式会社環境浄化研究所

〒370-0833 群馬県高崎市新田町5-2

TEL 027-322-1911

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