オビ コラム

フィンテックで細分化する「保険」

◆文:一村明博 (株式会社ZUU)

 

ZUU_201703世界有数の保険大国・日本。生命保険の加入率は9割近いといいます。

 

この分野のフィンテックをけん引するネット保険は2000年代後半に入って誕生、業務の多くをネットで完結させることでコストを抑え、保険料を割安にして注目されました。

 

特にライフネット生命は上場も果たすなど、若い世代からの支持率は高いようですが、期待されたほどの伸びは見せていません。

 

一方で、「保険の窓口」のような保険の乗り合い代理店が伸びています。

ここには、保険という金融商品が、選ぶのが難しいものであることが関係しています。

 

ネット生保の場合、加入したい消費者は自ら判断し保険を選ばなければいけません。

そこで特定の保険会社に偏らずに、中立的な立場から相談にのってくれる代理店が支持されたのでしょう。

 

保険分野のフィンテックは、「Insurance」と「Technology」をかけて「InsTech」といった呼び方もされます。

一番進んでいるのは損保、特に自動車保険です。事故を起こす可能性の低い人の保険料を安くするというものです。

 

米国のProgressive(プログレッシブ)は加入者にデバイスを送り、これを付けてしばらく運転することで、運転の特徴をデータ化します。

安全運転の傾向が分かれば、保険料が安くなります。

 

日本でも、損害保険ジャパン日本興亜が日産の電気自動車リーフ向けにドラログというサービスを提供。

またスマートドライブ社は、スマホから運転の傾向や燃費を確認できるデバイスを提供しています。

 

生保で注目されるのがOscar(オスカー)です。

オンラインで医療サービスを提供、契約者は医師への相談が可能になるなど、契約者の健康維持に積極的に関与しているのが特徴です。

 

中国でも、アリババ・グループがTencentと共同でZhong An(ゾン アン)を設立。同国初のオンライン保険として成長しています。

 

身の回りの小さなリスクを移転する保険ビジネスとして注目なのが、Trōv(トローヴ)。

守りたいものに、守りたい期間、保険をかけられます。 例えば「ギター奏者が、演奏旅行期間中だけギターに保険をかける」ということも可能です。

 

最近は、Apple Watchやフィットネスギアを使っている人が増えています。

体に関する各種データが蓄積されているわけですから、このデータを保険料に反映させるサービスがあってもおかしくありません。

 

ビッグデータやAIの活用で、リスクの種類や度合い、想定される被害額、加入者のリスク許容度などが精緻に分かれば、保険料と保険金の適正額が分かります。

すると加入者が少なくても、保険は組成できます。

 

今後、保険は消費者それぞれの生活やニーズにあったものが、続々と提案されるのではないでしょうか。

 

オビ コラムZUU 一村氏

筆者プロフィール/一村 明博

東京都出身。成蹊大学法学部卒業。1993年、大和証券入社。富裕層や中小企業オーナーを主な顧客とする個人営業に従事し、常に全国トップクラスの営業成績を残す。入社3年目には全国NO.1を獲得。その後、2001年に松井証券入社。2004年、最年少(当時)で同社営業推進部長、そして2006年には同社取締役に就任。

高度かつ専門的な知識が必要とされる金融業界において20年以上にわたり500人以上の部下を育てた人材育成のプロフェッショナル。

〈お問い合わせ先〉 info@zuuonline.com

 

株式会社ZUU

http://zuu.co.jp/

東京都目黒区青葉台3-6-28 住友不動産青葉台タワー9F

 

 

 

◆2017年3月号の記事より◆

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